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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『ザ・ファイター』(The Fighter)O・ラッセル監督が描く、実在のボクサー、ミッキー・ウォードの「拳」【2010年12月17日キラ☆キラ】

  1. スタジオ  小島慶子(フリーアナウンサー、タレント) 水道橋博士(お笑い芸人、浅草キッド)
  2. 電話出演 町山智浩(映画評論家、コラムニスト)
  3. ~Setup~
    「不屈のインファイトボクサー」、ミッキー・ウォード

    小島 サウンドパティスリー、金曜日は「映画とエロスの伝導師」町山智浩さん御登場です。御自宅のあるバークレーからお電話で御出演ですが、寒いんですって?町山さん?
    町山 はい。凄い寒いです。朝、もう氷でバリバリでした。車が凍っちゃってて。ドアが開かない感じで。
    小島 え~?なんか、寒波が来たんですか?
    町山 す~ごい、来てますね。ま、全米的に来てますね。
    博士 へ~。
    町山 はい。寒いっすよ・・・。
    小島 バークレーって普段暖かいんですよね?
    町山 え~、もう、雪なんか降ることは絶体無いようなとこですけどね。
    博士 あ、そうですか。
    町山 ま、1年中殆ど気温変わんないですけど。
    小島 じゃ、氷バリバリなんて大変ですね、じゃあ。
    町山 そう、突然、急に寒くなってちょっと風邪引いてます。スイマセン。
    小島 そっかそっか、そんな中すいません。夜分お電話でごめんなさい(笑)。
    町山 いえいえ、いつものことで、ハイ。
    小島 今日はね、なんか、アカデミー賞の候補になるんじゃないか、ってまた、凄い映画なんですって?この『ザ・ファイター』(The Fighter)・・・。
    町山 はい。この間ですね、14日ですか。アカデミー賞の前にですね、アメリカの、外国人の映画ジャーナリストが投票して決める「ゴールデングローブ賞」ってのがあるんですね。
    博士 はい。
    町山 それで、6部門にノミネートされた映画の、
    小島 あ、凄い・・・。
    町山 『ザ・ファイター』って映画を紹介します。
    Title.png
    小島 はい。

    博士 はいはい、はい。結構、単純なタイトルですが。
    町山 はい。あの、『ザ・ファイター』っていうのはね、一応、ボクシングの映画なんですけど、
    博士 うん。
    町山 この「ファイター」ってのは、いわゆるなんていうか、「戦う人」っていう意味の「ファイター」じゃないんですよ。
    小島 え?違うんだ。
    町山 これは、ボクシング用語の「インファイター」っていう言葉があって、
    博士 はいはい。
    町山 あの・・・ボクサーには2つのタイプがあって、「インファイター」と「アウトボクサー」っていうタイプがあるんですね。
    小島 ふ~ん。
    町山 で、「アウトボクサー」ってのは、いわゆる「ヒット・アンド・アウェイ」で、1発やって、それでまた引いて、っていう戦い方なんですけど。
    博士 はい。
    町山 「インファイター」っていうのは相手の懐に入ってボコボコ打ち合うタイプなんですよ。
    小島 あ~。
    町山 で、この主人公は実在のボクサーなんですけど、ミッキー・ウォードって人で、
    博士 うん。
    町山 この人は「インファイター」の典型的な例なんですね。
    博士 はいはい、はい。
    GatiPoster.png
    町山 でね、この人が有名なのはね、2002年から2003年ぐらいに、ライバルのアルツロ・ガッティっていうイタリア系カナダ人の選手と、ものすごい激しい試合を3回連続でやったんですよ。
    博士 はいはい、はい。これ、タイトルマッチじゃないのに、凄い、年間最高試合とかになりましたもんねえ。
    小島 ふ~ん。
    町山 そうそう、そうそう。全然、両方共チャンピオンでも何でも無いのに、3回戦ってですね、ミッキー・ウォードの方は負けるんですけども。
    小島 はい。
    町山 10ラウンドまで全部行ってですね、しかも最初から最後までず~っと激しい打ち合いだけ、っていう凄い試合をやったんですよ。
    博士 はいはい、はい。名勝負数え唄ですよ。
    小島 へ~。ボコボコになっちゃうでしょうね。
    町山 (笑)、あのね、これね、ビデオで今、ユーチューブとかで見れますけど、殆どフットワークを使わないんですね。このミッキー・ウォードっていう選手はね。
    小島 はあ。
    町山 いわゆる「ベタ足」でもって、殆ど防御しないでボッコボコに打ち合うんですよ。
    小島 うわ・・・凄い。
    町山 普通・・・あの(笑)、気絶しちゃうわけですよね、普通、ノックアウトとか。
    博士 うん。
    町山 全然しないんで、
    小島 へ~。
    gati2.png
    町山 最近ねえ、この人が亡くなったら、どっかの大学の医学部が「何故ノックアウトしないのか?」ってのを研究するために解剖する、ってことになりましたよ。
    博士 え~!そんなに凄いんすか?
    町山 (笑)・・・ホントかよ?と思いましたけど。
    博士 ええ。
    町山 それぐらい、なんか、ちょっと特殊なんじゃないか、って言われるぐらい打たれ強いボクサーでしたね。
    小島 へ~。
    博士 いや、むしろこの、ゲッティの方が有名かな、と思ってたんですが。
    町山 あ、このアルツロ・ガッティ、ゲッティはねえ、有名っていうかね、去年、謎の死を遂げたんですよ。
    博士 ほう。あ、亡くなったんすか?
    町山 去年ブラジルで、もう全然わからない謎の死、ですね。自殺か殺人かもわからない、と。
    博士 ふ~ん。
    町山 これがまた、話題になってますけどもね。ま、全然わかんないです、犯人とかね。
    博士 はい。
    町山 自殺説もあって。
    博士 うん。
    町山 で、このガッティとミッキー・ウォードは、3回も激しい戦いをしたわけですけど、
    小島 はい。
    町山 だからロッキーとアポロみたいな関係ですよね。
    博士 はいはい、はい。
    RokkyApolo.png
    町山 ロッキーとアポロも、ま、デキちゃうわけですけど、
    博士 うん。
    小島 ちょ・・(笑)。
    町山 あの、精神的にですけどね(笑)。
    博士 はい。
    町山 あの・・アポロってのはライバルのね、黒人のボクサーで、
    博士 アポロ・クリード、うん。
    町山 あれ、戦ってるうちに2人は親友になっちゃんですよ、『ロッキー』(Rocky)って。
    小島 はい、そうですねえ。
    町山 このミッキー・ウォードも、アルツロ・ガッティと3回も戦う内に親友になって、
    小島 そうなんだ。
    町山 そうなんですよ。
    小島 へ~。
    町山 凄い、仲良くなっちゃったんですけど、
    小島 うんうん。
    町山 あの・・男同士が殴り合うとホントに親友になるわけですよね(笑)。
    博士 うん、まあ、ありますねえ。
    小島 そうなのね。
    町山 昔の番長漫画じゃ無いんですけど。
    小島 (笑)。
    町山 ハイ。でね、ところがこの映画はね、その凄く有名な、視聴率も稼いだアルツロ・ガッティとの試合が全然出て来ないんですよ。
    小島 へ~。
    博士 ふ~ん。1番有名なのに。
    町山 (笑)・・・1番有名なのに。
    博士 ええ。
    町山 これね、このミッキー・ウォードって人はね、有名だった1つの理由っていうのは、
    博士 うん。
    町山 この人、拳・・・手の骨が壊れちゃってたんですね。
    小島 はい。
    町山 壊れちゃってたのに戦い続けて。手術をしてですね、自分の骨盤の骨かなんかを移植して、
    小島 へ~。
    町山 骨に癒着させて強くしてまでして戦ってたんですよ。
    小島・博士 へ~。
    町山 凄い根性で。倒れない、ってこともそうだったんですけど、まあ、「不屈のボクサー」と言われてた人なんですね。
    小島 そうなんだ・・・。
    町山 で、この映画は、何故その手を怪我したのか?ってことを描いているんですよ(笑)。
    小島 え?ボクシングで怪我したんじゃないの?
    町山 違うんですよ。
    小島 違うんだ?!
    博士 へ~。

    ~Conflict~
    マーク・ウォールバーグが自らを投影したミッキー・ウォードの生い立ち

    町山 違うんですよ。初め、ボクサーとして出てくる、ま、上がり初めのあたりが描かれるんですけれども、
    博士 うん。
    町山 これがですね、まああの、主演がマーク・ウォールバーグという俳優さんで。
    博士 うん。
    depa.png
    町山 マーク・ウォールバーグって人はね、あの・・・ご存知かと思うんですが、『ディパーテッド』(The Departed)って映画で、物凄く言葉の汚いアイルランド人の警官をやってた人ですね。
    博士 ほうほう、ほう。観ましたけど・・・はい。
    町山 あのねえ、アメリカ人が見ても何言ってるかわかんないんですって、彼の言ってることは。
    博士 (笑)。
    小島 あ、汚くて?言葉が・・・。
    町山 モンの凄い汚いんですよ、言葉が。
    小島 ええ。
    町山 で、彼自身がそういう、ボストンの下町のギャングなんですよ。
    小島 あ~、そうなんだ・・・。
    博士 へ~。
    小島 え?それで俳優さんになった人なんですか?
    町山 そうですよ。13歳ぐらいでもって、クラックっていう、ま、コカインに重曹を混ぜた麻薬の密売をやってて。
    小島 うわ。
    町山 で、車を運転できないから、車を買う金はあるけど運転できないから、運転手を雇ってやってたんだもん。
    小島 う~わ、13歳で?麻薬の売人として?
    町山 そう。それで、お母さんがベッドの脇の引き出しを開けたら札束が入ってるから、怖くなって警察に電話して、1回捕まってますからね。
    小島 え~・・・。
    町山 しかも物凄いワルイ、なんていうか、アイルランド系なんですけども、
    小島 うん。
    町山 人種差別暴力を凄く振るってて、
    小島 はい、酷いな。
    町山 アジア系のオジサンを後ろから棒で殴って失明させてるんですよ。
    小島 え・・それ、ちょっと酷い・・ですねえ。
    町山 16歳の時に。で、少年院に入ってますね。
    小島 うん・・・。
    町山 で、まあ、更生したんですけれども、ま、そういう人なんですよ。元々、ただのチンピラなんです、マーク・ウォールバーグっていうのは。
    小島 ええ。
    町山 今、俳優としては一流になったんですけれども。
    博士 うん。
    町山 で、このミッキー・ウォードって人もそういう人なんですよ。
    博士 ふ~ん。
    町山 ボストンの近くにある、ローウェルって街があるんですけども、
    博士 はい。
    町山 昔はねえ、昔って(笑)スゴイ昔、繊維工業で栄えたんですけど。
    小島 ええ。
    町山 繊維工業って、戦後、日本に取られちゃうんですね、アメリカはね。
    博士 はいはい、はい。
    町山 インドとかにね。
    博士 うん。
    町山 そっからもう、1回も景気が良くなんないまんま、ボロボロになって街中廃墟で、
    小島 うん。
    町山 もう・・・殆どアイルランド系なんですけれども、住んでる人は。
    博士 はい。
    町山 もう犯罪だらけの街になってて、そこからミッキー・ウォードって人は出てきたんですよ。
    小島 あ~、それでボクサーになったんですね。
    町山 それでボクサーになったんですけど。だから、マーク・ウォールバーグとしては、彼は自分と非常に近いヒーローだと思って、
    博士 うん。
    町山 このミッキー・ウォードの物語の映画化権を獲ってですね、
    博士 はい。
    町山 もう・・・8年ぐらいですね、映画化しようとして、ずっとプロデューサーとして動いてたんですよ。
    小島 あ~、そうなんだ、へ~。
    博士 あ、自らね、プロデューサーなんだ。
    町山 そうですね、自分が主演したい、ってことで。
    博士 はい。
    町山 で、やっとねえ、映画化されたんですけども。
    博士 うん。
    町山 あの・・・ま、このミッキー・ウォードのですね、生活っていうかねえ、地元でどうやって生活してるか、っていうのが描かれるんですね、この映画の中で。
    小島 はい。
    町山 それがまあ、ヒドイんですよ(笑)。
    博士 うん。
    小島 生活が荒んでるの?
    町山 もうホントに貧乏な、廃墟だらけの、歩いてる人がみんな浮浪者に見えるようなとこで生活してて。
    博士 うん。
    町山 お兄さんは元ボクサーなんですね。
    小島 はい。
    町山 お兄さんはディッキーっていうんですね。
    博士 うん。
    町山 ミッキー&ディッキーなんですけど。このお兄さんていうのは、昔ねえ、元ボクサーだった時に、あのシュガー・レイ・レナードって、
    Srenado.png
    博士 はいはい。もう英雄ですよ、アメリカの。
    町山 あの黒人のスーパースターと戦ってですね、
    博士 はい。
    町山 10ラウンドまでですね、戦い抜いた、ってことが誇りなんですよ。このお兄さん、ディッキーは。
    小島 う~ん。
    博士 へ~。そりゃあまあ、そうでしょうねえ。
    町山 そうなんですが、現在はですねえ、クラック中毒で、殆ど廃人同様になってるんですね。
    小島 あ~。
    町山 現在っていうか、この話の始まった段階では。
    小島 うん。
    町山 それなのに、自分はボクサーだったっていう、スーパースターだった、みたいな勘違いでですね、
    小島 うん。
    町山 街中の人気者であるんですよ。
    小島 うん。
    町山 で、どこに行っても、「オレのことを知ってるな?ディッキーだよ!」とか言って、
    小島 うんうん。
    町山 「オレはシュガー・レイ・レナードと10ラウンドまで行ったし、アイツからダウンを獲ったんだ!」とか言うんですよ。
    小島 う~ん。もう、過去の栄光だけがね。
    博士 ちょっと、レオンスピンクスみたいな感じですね、モハメド・アリと戦ったって栄光だけでねえ。
    町山 そうそう、そう。
    博士 うん。落ちぶれていった・・。
    町山 ただ、地元の人はいい話が全然無いから、そのローウェルって街は貧乏で。
    博士 うん。
    町山 何にもいいことが無いから、その、ちょっとしたディッキーの過去の栄光でも、みんなもう、嬉しいからその話ばっかりしてるんですよ、街中の人が。
    小島 そうなのねえ。だから余計、その話を忘れられないわけですね、お兄さんは。
    町山 そう、何にもいいことが無い街なんですよね。
    博士 うんうん。
    町山 で、その中で、その弟のミッキー・ウォードに、「オマエこそはチャンピオンになるんだ!」って言って、そのディッキーがですね、まとわりつくわけですよ。
    小島 うん。弟に。
    町山 弟に。それで、トレーナーとしてまとわりつくんですけど、自分は麻薬中毒なんですよ(笑)。
    小島 ええ。
    町山 ね。で、美人局(つつもたせ)とかやってんですよ。
    小島 もう、困った兄ちゃんじゃないですか。
    町山 困ったもんなんですけども(笑)、強盗とかもやってて何回も何回も警察に捕まってて、警察官からもの凄く嫌われてるんですけど。
    博士 うん。
    町山 そのお兄ちゃんはね。
    博士 うん。
    町山 で、このお母さんていうのがまた凄くて、お母さんがマネージャーをやってるんですね、ミッキー・ウォードの。
    小島 はい。
    町山 このお母さんとですね、あと、ミッキー・ウォードってのはアイルランド系なんで避妊しないんでですね、えー・・・9人兄弟・・いるのか?
    小島 おお。
    町山 9人兄弟いて7人はお姉さんなのかな?
    小島 ああ、男の子2人だけだ。
    博士 大家族だ。
    町山 大家族なんですけど、このお姉さん達がみんな出戻りでですね、家にいるんですよ。
    博士 うわ・・・。
    町山 またねえ、スゴイまあ、下品でですねえ、タバコ吸って酒飲んでですねえ、
    小島 ええ。
    町山 「アタシャねえ・・・」みたいなことを言ってんのが、いつも試合やっても練習やってても、まとわりついてくるんですよ、この・・お母さんとお姉さん達が。
    小島 お兄ちゃんとかお姉ちゃんとかお母さんとか・・・みんなね。
    町山 そう。で、彼は昔、結婚してたんですけど、ミッキー・ウォードは。
    小島 ええ。
    町山 こんなのがくっついてくるから、結局奥さんとも別れちゃったんですね。
    小島 う~ん・・・。
    町山 娘がいるんですけど、娘には会わせてくれないんですよ、奥さんの方がね。
    博士 うん。
    町山 「アンタ何やってんのかよくわかんないし・・・」つって。
    博士 うん。
    町山 実は殆ど生活出来なくて、道路工事しながら働いてるんですよね。
    小島 うん。じゃ、ボクシングしてない時は道路工事をやって、
    町山 そうなんですよ。
    小島 で、また、家族はまとわりついてくるし、
    町山 そう、家族はまとわりついてくるしね(笑)。
    小島 大変ですね(笑)。
    町山 お父さんはね、屋根の修理をやってんですけど、詐欺で逮捕されちゃうしね(笑)、大変なんですけど。
    小島 大変な・・・家庭だったんですねえ。
    町山 そう。マーク・ウォールバーグ自身、ミッキー・ウォード自身は、非常に真面目なんで、他の人達がギャーギャー、ギャーギャー叫んでる中でもず~っと黙ってねえ・・・なんていうか、皆を背負ってる感じの人なんですよね。
    小島 あ~、そうか・・・。
    町山 で、この兄貴のディッキー役がですね、クリスチャン・ベールって俳優なんですね。
    小島 はい。
    博士 はいはい、はい。バットマンじゃん。
    町山 この人の演技が、スゴイんですよ、もう。
    小島・博士 へ~!
    町山 もう、躁病状態で。まあ、ハッキリ言って麻薬やってますから(笑)。
    博士 はいはい、はい。
    bale.png
    町山 「ヤアヤアヤアヤア、オレ、リッキー、リッキー!リッキーだよ、オボエテル?!」みたいな感じで(笑)。
    小島 ダメ兄ちゃんでしょ?
    町山 そう。どうしようもないヤツなんですけど。
    小島 うん。
    町山 ま、メチャクチャ面白いんですよ。憎めないヤツなんですね。
    小島 あ~。
    町山 ダメ~なヤツなんだけど、全然憎めないんですよ。
    博士 へ~。
    町山 で、またねえ、このお母さんが凄くてですねえ、メリッサ・レオっていう女優さんが演じてるんですが、
    小島 ええ。
    町山 この人はですねえ、『フローズン・リバー』(Frozen River)っていう映画があったんですね。
    博士 はいはい、ありました。
    町山 去年かな?一昨年かの映画で。
    博士 ええ。
    Frozn.png
    町山 ニューヨークとカナダの国境で、河が凍ってる所をですね、密入国者の人達を、道路が無いんで、そこの河の上を自動車で渡して密入国させてる、っていう、白人の非常に貧乏なお母さんの役を演じてた女優さんなんですが。
    博士 はいはい、ありました。
    町山 そのメリッサ・レオがですね、このガミガミお母さんを演じてるんですね。
    小島 ええ。
    町山 息子はもう、30になるのに、「ベイビー、ベイビー」って言ってるんですよ。
    小島 (笑)、で、まとわりついてくる・・・。
    町山 そう。息子もねえ、お母さんのことを「マー」って呼ぶんですけど、「マー」っていうのはアメリカでは1番下品なお母さんの呼び方なんですよ。
    小島 (笑)。
    博士 へ~。
    町山 そう、「かっちゃん!!」みたいな感じなんですよ。
    小島 1番下品なお母さんの呼び方(笑)・・・。
    博士 へ~、そうなんだ。
    町山 「おかん!」みたいな感じなんですけど。30過ぎてそういことを言ってる人はヤバイですからね、母親のことを。
    小島 (笑)。
    博士 へ~。
    町山 でまあ、そこへ、どうしようもなく家族のしがらみの中でやってるミッキーの所にですね、やっと、好きな女の子が1人、できるんですね。
    小島 おー。
    町山 この子がですね、エイミー・アダムスって女優さんが演じてるんですが、
    博士 うん。
    ohimesama.png
    町山 エイミー・アダムスってのは、『魔法にかけられて』(Enchanted)って映画で、ディズニーのお姫様を演じてた人なんですけども、
    博士 うん。
    abaazure.png
    町山 ここではいわゆる、典型的なホワイト・トラッシュというですね、貧乏白人女性を演じてるんですよ。
    博士 うん。
    町山 一言で言うと、自分のことを「アタイ」って呼ぶ女の人ですね。
    小島 (笑)。
    博士 (笑)・・・わかりやすいねえ!
    町山 「アタイはさあ!」みたいな感じなんですよ。
    博士 「おかん!」「アタイ!」って言ってんですね。
    町山 そうそう、「アタイ!」つって、それでまた、そのお姉さんとお母さん達が「このアバズレ!」とか言ってんですけど。
    小島 (笑)、ヒドイ!
    町山 で、今度その、自分の息子が、その彼女の方に行っちゃたもんだから、つって、
    小島 ええ。
    町山 「ナンだい!アタシ達の大事な弟を獲りやがって!」つって、
    小島 うん。
    町山 自分の弟がセックスしてるところへ、乗り込んでくるんですよ(笑)、その兄妹が。
    小島 もう、最悪じゃないですか!それ・・。
    町山 フザケンナと思いますけど(笑)。
    博士 ええ。
    町山 「ナンだい!アタシの大事な息子と、ナニしてんだよ!!」とか言って。
    小島 え~。
    FamilyGyo.png
    町山 スゴイんですよ。それで、エイミー・アダムスの方もねえ、「あんたら、30過ぎてる息子をいつまでも・・・しばっちゃって!」「彼にも彼の人生があるんだから!!」とか言って、延々とやってるんですけども。
    小島 は~。
    町山 ただねえ、ボクシングもこの人達がマネージャーをやってるんで、メチャクチャになっちゃうんですよ。
    小島 う~ん。
    博士 そりゃそうだよねえ。
    町山 で、このお母さんがブッキングしちゃうから、階級が遥かに上のボクサーと、エキシビションみたいな試合をさせられちゃうんですね、ミッキーが。
    小島 うわ・・・、それはだって、ね、酷いことになっちゃうでしょ?そうしたら・・。
    町山 もう、ボコボコにされてですね。失明寸前にまで・・・壊されちゃうんですよ。
    小島 あ~・・、可哀想に。
    博士 へ~・・・酷い話、うん。
    町山 これ、酷いな、ということで、彼女はね、そのエイミー・アダムスが「アンタ、あのお母さんと、あのヤク中のお兄さんといると、もう、ダメになっっちゃうよ!」つって、「やめなよ!」「手、切りなよ!」みたいなことを言うわけですよ。
    小島 うん。
    町山 「アンタ、才能あるんだから・・」みたいな。
    小島 うんうん。
    町山 でもそれでも、「やっぱり、オレは兄貴大事だから・・・」とか言って、ミッキーがなかなか兄貴を切れないんですよね。
    小島 あ~・・・。
    町山 この辺がねえ、なんていうか、今までの『ロッキー』とかそういうのと、全然違う世界なんですよね(笑)。
    小島 うんうん。
    町山 家族に振り回されるボクサーで、
    小島 うん。
    町山 彼自身の敵は、リングの上にいるんじゃなくて、家庭にいるわけですよ。
    博士 はいはい、はい。
    小島 そうねえ。
    町山 そういうボクサー、日本にもいましたけどね。
    博士 はいはい。
    町山 身内が一番困る、っていうのは・・・ま、よくあるパターンですけども、ハイ。
    博士 はいはい、ま、TBSですね、ハイ。
    町山 ハイ(笑)・・・そうですね。
    小島 (笑)・・・ハイ。
    町山 ・・そういうとこでね、まあその、自分の彼女と、ヤク中の兄貴と、母親とで、三つ巴の戦いになっていくわけですけども、
    博士 うんうん。

    ~Resolution~
    「拳」の理由、彼は誰のために立ち上がったのか?

    町山 その中でねえ、お兄ちゃんがまたねえ、美人局やって。カンボジア系の人がいっぱい住んでるとこなんですけどね、その街は。
    小島 ええ。
    町山 あの、過疎が進んでる街ってのは、アメリカってねえ、難民を引き受けるんですよ。
    小島 ふ~ん、あ、そう。
    町山 そうすると、政府から助成金が出るんですね。
    博士 あ~。
    町山 そういう人達の住居とかを世話すると。だから市がそういうのをやってて。あの・・・僕が前に住んでたニューヨークのシラキュースってとこではユーゴスラビアの難民の人がいっぱいいましたけど。
    博士 うんうん。
    町山 ここの街にはねえ、カンボジア系の難民の人がいっぱい住んでるんですね。ポルポトから逃げてきた。
    小島 ふんふん。
    町山 で、その女の子達を使ってですね、美人局(つつもたせ)を始めるんですよ、このディッキー兄ちゃんが。
    小島 またろくでもないことを・・・兄ちゃん・・・。
    町山 (笑)・・ねえ。で、ヘンなオッサンがその子に声をかけると、「オラオラ!何してんだ!」つってやってて、お金を獲ってたら、
    小島 うん。
    町山 それで警察に目をつけられて、とうとう捕まりそうになってですね、
    小島 ええ。
    町山 ボコボコにされそうになるんですね、警官達に。
    博士 うんうん。
    町山 で、そこへミッキーが割って入ったんですよ。
    小島 うん。
    町山 「ちょっと待ってくれ!」「兄貴を殴らないでくれ!」つって、入って行ったら、
    小島 うん。
    町山 そうしたら、まわりの人達がですね、「みんな!」つって、「お巡りさん達!・・それはミッキー・ウォードっていう、この街の英雄だよ!」って言っちゃうんですね、誰かが。
    小島 うん。
    町山 そうしたら、逆にそれが警官に火をつけちゃって、
    小島 うん。
    町山 「なんだ、お前ら、どうしようもねえクズ兄弟かよ!」つって、「コイツにボクシング出来ねえようにさせてやれ!」つって警官達がですね、
    小島 うん。
    keibo1.png
    町山 ミッキーに手錠をかけて押さえつけた上に、手をですね、警棒代わりにしてる金属の懐中電灯でですね、
    小島 へ~、ヒドイ!
    町山 殴り砕いちゃうんですよ。
    小島 あ~、ヒドイヒドイ、ヒドイ。それは酷いじゃないですか!ちょっと警察もねえ。
    博士 それがあれですか、拳を壊す理由ですか。
    町山 そうなんですよ。それで拳壊れちゃったんですよ。
    小島 ボクシングじゃ全然無かったんですね、拳が壊れたのは。
    町山 そうなんですよ。で、まあ、警官もヤクザみたいなとこなんですけどね、そういうとこっていうのはね(笑)。
    小島 いや、酷い警官ですよ。それもねえ。
    町山 でねえ、、彼が諦めてですねえ、ボクシング、もう出来ないんじゃないか、出来ないや、ってことで諦めてですね、ビール飲んでビール腹になっちゃうんですけども。
    小島 うん・・・。
    町山 それで諦めて、お兄ちゃんは刑務所に入っちゃうし、
    小島 うん・・・。
    町山 自分はもう、しょうがないから道路工事して働くようになるんですけど、
    小島 ええ。
    町山 で、その時にテレビが放送されるんですよ。
    小島 うん。
    町山 もう、ドン底のところで。
    博士 うん。
    町山 それがドキュメンタリーの番組でですね、そのディッキーっていうお兄ちゃんを取材したドキュメンタリーなんですね。
    小島 え、そのダメ兄ちゃんを?
    町山 そうなんです。ずっとテレビ局が来ててですね、昔栄光で、シュガー・レイ・レナードをダウンさせたと言っているボクサーが、今ヤク中で、もうドン底にいる、っていうのを描いたものだったんですけど、
    博士 うん。
    町山 それがまた残酷で。シュガー・レイ・レナードがダウンした、ってお兄ちゃんは信じてるんですけど、みんなもう、そう言ってあげてるんだけど、本当はスリップしただけなんですよ!
    博士 え~!
    小島 あ、ダウンしてないんだ。
    町山 でも彼が「オレがアイツをダウンさせた。」って言ったら「スリップだよ。」って言ったら傷つけちゃうから。
    小島 みんな「そうだね。」って言ってたのね。
    町山 そう。彼の人生にはそれしか無いから。
    小島 うんうん。
    町山 「うん、ダウンしたよね。」って言ってあげてるのに、そのテレビは「単なるスリップです。」って言っちゃうんですよ。
    小島 う~ん。
    町山 で、彼はそれをもう、一生誇りに持って、その中に、その幻想の中に閉じ込もって「ヤクに溺れているんです!」みたいな、スゴイ強烈な番組だったんですね。
    小島 うわ・・・。
    町山 で、それを刑務所で見て、そのお兄ちゃんはもう、ガーン!と落っこっちゃうし、
    小島 うん・・。
    町山 そのお兄ちゃんの子供とか、そのミッキーの子供もそれを見てホントに落ち込んで。
    小島 うん・・・。
    町山 で、街中の人が、そのドキュメンタリーの中で、もうホントにどうしようもない街として描かれてるんで、その街がね、ローウェルって街が。
    小島 あ~、それはみんな傷つきますね。
    町山 もう、みんな傷ついて、全員がもう、「オレたちはクズだったんだ!」ってことに気がつかされるんですよ。
    小島 うん。
    町山 今までチャラチャラして、みんな元気よくやってたのに、「あ~、オレたちはクズだったんだ!!」ってことに気づいた時に、
    小島 うん。
    町山 初めてミッキーが、自分の意思で立ち上がるんですよ。
    小島 お~!
    町山 今までお兄さんの言いなりで、奥さんの言いなりで、お母さんの言いなりだったミッキーがそこで初めて、
    小島 うん。
    町山 「オレが、クズじゃないことを証明してやる!」って、
    小島 あ~、今ちょっと、ゾクゾクしましたよ。
    町山 初めて自分の意思で戦うことを選ぶ、っていう話で、そっから戦いがやっと始まるんですけど(笑)・・・。
    小島 へ~!
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    町山 それがねえ・・・泣かせましたけどねえ、ハイ。
    小島 それはスゴイなあ・・。
    町山 そいうのが『ザ・ファイター』って映画でしたね。
    博士 ほう・・。
    町山 もう、殆どボクシングの話が出て来ない、っていうのがスゴイんですけどね(笑)。
    小島 どっちかっていうと、その、酷い家庭と荒んだ街の話がず~っと、ってことですね。
    町山 そうなんですよ。
    博士 なんか・・・アロノフスキーが監督する、とかっていうのを聞いてましたけどねえ。
    町山 これ、アロノフスキーが途中までやってて、デヴィッド・O・ラッセルっていう別の監督になったんですけれども、
    博士 うん。
    町山 ま、その方が良かったですね。O・ラッセル監督もアイルランド系なんで、
    博士 あ~。
    町山 ホントにアイルランドの誇り、って感じでやってますけど、
    博士 はいはい、はい。
    町山 ただ、この映画が凄いのは、ゴールデングローブ賞に主演男優賞マーク・ウォールバーグ、助演男優賞クリスチャン・ベイル、助演女優賞がお母さんとエイミー・アダムスの、
    小島 全員だね、すごいな。
    町山 合計4人もですね、ノミネートされてるんですね。
    GGlove.jpg
    博士 全員、ダメ家族が全員表彰されてるんですね。
    町山 (笑)、徹底的なダメ人間演技でですね、泣かせてですね、みんなノミネートされてるんで。演技合戦を是非観て頂きたい、という映画ですね。
    小島 はい。なんかねえ、日本公開がまだ未定らしいんですけどね、
    町山 はい。
    小島 こういう話を聞いちゃうと観たいですよね~。
    町山 はい。
    小島 ま、賞を獲ったら公開されるかな?
    町山 いや、もう、絶体、これだけメンバー揃えばやりますから。
    小島 あ、そうですか。
    博士 ねえ。アカデミー賞獲ったら・・・ねえ。
    小島 ねえ、『ザ・ファイター』、今日はありがとうございました・・・ご紹介頂きました。
    町山 『ザ・ファイター』でした。ハイ。
    小島 まあ、ま、これから年末にかけて、いろいろアカデミー賞候補をね、紹介してくださるということですので。また来週もよろしくお願い致します。
    町山 はい。よろしくお願いします。
    小島 ありがとうございました。町山智浩さんでした。

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