スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『シュガーマン 奇跡に愛された男』(Searching for Sugar Man) ドキュメンタリー長編賞ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    ドキュメンタリー長編賞

    2013年1月29日『たまむすび』より

     今回紹介するのは、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされてる映画で、『シュガーマン 奇跡に愛された男』(Searching for Sugar Man)というタイトルの映画です。

     これ、シュガーマンていうのは、歌のタイトルから来てるんです。で、ちょっとこの、シュガーマンの歌をちょっと聴いてもらえませんか。

    ~♪~Sugar Man/Sixto Rodriguez~♪~

     これが『Sugar Man』て歌なんですけども、カッコイイですよ!ブルージーで、フォークなんですけどもね。ブルースな感じとかサイケデリックな感じがあって、これ1970年の歌なんです。1970年だから今からもう、42年前に、ロドリゲスという、アメリカのミュージシャンが吹き込んだレコードなんです。

     これを巡る話が、この『シュガーマン 奇跡に愛された男』っていう映画なんですが、原題は『Searching for Sugar Man』(シュガーマンを探して)っていう話なんです。

     このロドリゲスって人は70年ごろに、このレコードともう1枚吹き込んで、消えちゃったんですよ。で、全く行方がわからなくなって、ずーっと何十年間も消えてて、その人を探す、という過程を追っかけた映画なんです。

     この歌は、1970年頃にデトロイトのレコードレーベルで録音された物で、その頃のデトロイトってのは自動車産業の街なんですけれども、労働者の人がいっぱい住んでるとこで、そこの下町で、ライブハウスとかに出てたのがロドリゲスっていう人なんです。

     これ、ロドリゲスって名前が、苗字なのか名前なのかも全然わかんないんですよ(笑)。なんかちょっとスペインな感じですけど。全然正体がわからなくて、それでいきなりこのレコード、『コールドファクト』(Cold Fact)ってアルバムを出して、翌年にもう1枚アルバムを出して、・・・・消えちゃったんですよ。

     ・・・まあ、早い話が売れなくて(笑)。人気は無くて、全く売れなくて。それで契約も解除されて、もう・・・ただ、消えちゃったんです。ハズレて。

     で、それが70年前半なんですけども、その後何故か偶然、南アフリカ共和国・・・アフリカの1番南の、尖ったとこにある、南アフリカ共和国の、海賊ラジオ局、正規のラジオ局じゃないとこが、偶然このレコードをかけたんです。この、ロドリゲスの曲を。

     そうしたらそれが大ヒットしちゃったんですよ。特に80年代に大々、大ヒットしていくんです。

    、これ、どうしてかって言うと、歌詞がちょっとヘンな歌詞なんですね。

     例えば今のシュガーマンて歌は、いったい何を歌ってるか、って言うと、シュガーマンていうと砂糖男ですけど、これ、「砂糖の様な物を売ってる人」って意味なんです。非常にその(笑)・・・なんていうか、あの、イケナイ物を売ってる人の話なんですよ。白い粉とかを売ってる人なんですね。

     歌詞の中で、「彼はメリージェーンを売ってくれる」っていうふうな歌詞が出てくるんです。「メリージェーン」ていうのは、あの・・・つのだ☆ひろさんの歌に「メリージェーン~♪」てありますけど、「メリージェーン」てのはマリファナのことなんですよ。

     ・・・つのだ☆ひろさんヤバイです!あれ?違うか(笑)、そういう問題じゃないですか(笑)・・。メリージェーンていう女の人もいます。ハイ。

     (笑)・・で、ま、シュガーマンてのはそういう、ヤクの売人について歌った歌なんです。

     南アフリカってその頃、すごい、厳しいキビシイ軍事独裁に近い政権だったんです。で、こういう歌は絶体にラジオじゃかけちゃいけない、ってことになってたんです。だから逆にそのせいで、
    「これはヤバイ歌らしい」
    ってことでもって、だんだん南アフリカの若者達の間で、口コミで売れてくるんですよ。。

     あともう1つ、今日も最後におかけしますが、『アイ ワンダー(I Wonder)』って歌があるんです。ロドリゲスの歌で、「I Wonder」ってのは「僕はよくわからない」「不思議だ」っていうような意味なんですけども、これ、何が不思議か、っていうと、
    「僕は知りたい、不思議だ。君はいったい今まで、何回セックスしたのかな?」
    って歌なんですよ(笑)。

    赤江珠緒:結構、あけすけな歌ですなあ(笑)・・

     そうなんです。
    「次の相手は誰かしら?」
    って歌なんですね(笑)。「アイ ワンダー」っていうのは。ラジオで初めて聴いた南アフリカ共和国の子供達は、よくわかってないから、それ聴いてキャッキャ、キャッキャ言って喜んでたらしいんですよ。

     最初は、南アフリカでは聴いたことの無い、セックスやドラッグを歌った歌、ってことだったんですが、その内に南アフリカでアルバムが発売されたんです。そしたら、歌詞がもっと、実は政治的に非常にアグレッシブな歌が歌ってることがわかって、そのロドリゲスの『コールドファクト』の中にある、『エスタブリッシュメントブルース』(This Is Not a Song, It's an Outburst: Or, The Establishment Blues)って歌があって、今、歌詞をざっと読みます。要約ですけども。

     「市長は、犯罪発生率を隠している。女性市会議員は、躊躇している。市民は、苛ついているけれども、投票日なんか忘れてる。天気予報士は、不平を言う。晴れると言ったのに、雨になったから。誰もがみんな、抗議運動をしている。ゴミは収集されず、放ったらかしで、女性の人権は守られない。政治家は民衆を利用して騙し、権力に溺れている。」

     凄い直線的なんですけど、当時のデトロイトっていう街で起こってた、市の腐敗について歌ってる歌なんです。

     「窓を開けて、今日のニュースを聞けば、聞こえてくるのは、エスタブリッシュメントの、ブルースだ」
     エスタブリッシュメントってのは、体制側ってことです。だから
    「体制側の憂鬱が聞こえてくるぜ!」
    っていう歌なんです。

     ロドリゲスって人は、そういう歌を、あくまでデトロイトっていう街のこととして歌ったんですけれども、これが何故か南アフリカ共和国の人達に、南アフリカの事のように聞こえたらしいんですよ。

     ていうのは、当時南アフリカでは、アパルトヘイトが酷かったんです。いわゆる、人種隔離政策ってやつで、南アフリカってのは元々アフリカの人(笑)、黒人の人が住んでたんですけど、そこにオランダの人達が勝手に来て、占領しちゃったんです。そこにイギリスの人も混じって、わずか少数の白人達が全ての富を独占して。

     南アフリカってのは金とかダイヤモンドが採れるんです。それを、地元の、現地人である、黒人の人達に掘らせて、それを売って、大儲けして、それで黒人の人達には人権を与えない、という酷いこと、アパルトヘイトををやってて、それに対して、80年代に白人の若い人達も、
    「これは酷すぎる」
    と。

     「オレは白人だけども、絶体にこんなモン、もう許せない」

    と。どう考えても(白人の若い人からもそういう意見が出るぐらい)あまりにも酷いですから(笑)。

     で、大反体制運動が起こってたんですけども、その中でこの、ロドリゲスさんの歌が、全然文脈が違うのに彼らのテーマソングになっていったらしいんです。

     南アフリカのバンドがカバーした歌まで大ヒットして・・・何枚売れたと思います?南アフリカで、通算で100万枚売れてるんですよ!100万枚売れたんだって(笑)!これ、ビックリ。100万枚って、印税だけざっと計算しても2億円、もっとです。デトロイトでは全く(笑)!売れなかったんですよ。

     しかも、南アフリカ共和国ってそんなに人口多くないですから、100万枚売れるとなると、凄くて、各家庭に1枚ぐらいの世界になるらしいんです。ビートルズと一緒にロドリゲスのアルバムがある、っていう異常な事態になったらしいんですけど。

     この映画、主人公は中古レコード屋さんのオッサンなんですけども、
    「結局、ロドリゲス、南アフリカでこんなに人気あるけど。いったい何者なんだ?」
    って思うんですね(笑)。考えるのが遅いんですけど。
    「結局、この人誰なの??」
    と。

     しかもアメリカの情報には、一切載ってないわけですよ。雑誌とか、テレビとか。何にもこないんです。で、こっちでこんなに人気あるのに、いったいなんだろう?ってことで探し始めるんですね。

     まず最初は、「デアボーン(dearborn)」て歌詞が出てくるんです。で、「dearborn」て何だかわからないんで、地図を見て、アメリカ中の索引見て調べるんです。そうしたら、それがデトロイトにある町の名前だ、ってわかるんです。ちなみにフォードの本社があるとこですけども。

     そこから、これ歌ってる場所がデトロイトだ、ってことがわかるんです。南アフリカの100万人の人はわかんないのに聴いてたんですね(笑)。(誰が歌ってるかも)わかんないで聴いてたんですけど(笑)。

     あ、ちなみにその中古レコード屋のオヤジっていうのは、偶然、セガマンていう名前で、アダ名がシュガーマンだったんですね。偶然なんですけど、
    「オレの名前と、アダ名の元になったからこの人を調べよう」
    ってことでロドリゲス探しを始めるんです。

     で、とうとう、そのレコード会社、デトロイトのレコードレーベルの社長も見つけるんですよ。それで、アメリカまで来るんですね。

     で、
    「ロドリゲス、今どこにいるの?」
    って聞いたら、
    「知らねー!」
    って言われるんですよ。そのレコード会社の社長がスッゲエ愛想が悪くて。

    「南アフリカでは凄い売れてるんですよ!」
    つって、
    「え、知らねえよ。何枚売れたの?」
    「100万枚」
    「その金、オレんとこに入ってねーよ!」
    とか言うんですね。
    「知らねえよ、どうなってんだよ!」
    って、それ、南アフリカで勝手にプレスしたレコードなんですね。

    で、
    「アメリカじゃ何枚売れたんですか?」
    って聞いたら、
    「わかんねえ。6枚ぐらいじゃねーの?」
    とか言われるんですよ(笑)。

     ・・・友人ぐらいですよね。6枚って・・友人も少ないですよね。(笑)・・・で、
    「ロドリゲスについて知りたいんですよ、会いたいんですよ!」
    って言って、
    「知らねえよ!」
    とか言われて、スッゴイ愛想無いんです。

     で、いろいろ噂を聞いてみると、・・・どうも死んだらしい、・・っていう噂を聞きつけるんですね。

     あんまり売れないからステージ上でガソリン被って焼身自殺した、とか、ステージ上で、歌いながら頭を撃ち抜いて死んだ、とか、刑務所で薬物中毒で死んだ、とかそういう噂しか出てこないんですよ。

    山里亮太:売れないとね、死亡説流れますからねえ(笑)・・。

     ねえ(笑)・・・必ず流れますね。

     90年代になったら、インターネットが出てくるんで、これはもうダメかあ、と思って、ダメ元でインターネットに貼り付けるんです。
    「このロドリゲスって人を知りませんか?」
    つって。

     で、南アフリカで貼り付けたら、アメリカから電話がかかってくるんですよ。
    「あの、友達に言われたんだけど、ネット見たらうちのお父さんが出てんだけど・・」
    っていう電話なんです。・・・ロドリゲスさんの娘さんから電話がかかってくるんですね。

     それでこのセガマンて人が
    「え、ロドリゲスさん、生きてるんですか?」
    って聞いたら、
    「生きてるわよ~!」
    とか言って(笑)・・え~!ってことになって(笑)、またデトロイトまで会いに行くんです。

     会いに行ったら、もう、娘3人育てて、この人1942年生まれで、今年70才のおじいさんで。1人で、まあ1人っていうか、奥さんと寂しく暮らしてる・・・寂しくないな、奥さんとだから(笑)・・・。奥さんと、貧しく暮らしてるおじいさんだったんです。

    「音楽、やってないんですか?」
    って聞いたら、
    「いやあ、もう、売れないから辞めて・・・・ビルの解体作業とかやって、ずっと暮らしてきた」
    とか言うんですよ。貧乏で大変だった、と。
    「え!あなた、南アフリカで大スターですよ!」
    「100万枚売れてますよ!!」
    つっても、
    「ウッソだ~・・」
    って言われるんです(笑)。

     あんまりにも「ウッソだ~」とか言ってっから、
    「じゃあ、来てくださいよ!」
    「嘘じゃないから!」
    つって、南アフリカに、そのロドリゲスを連れて行く、っていう映画なんです。それが『シュガーマン 奇跡に愛された男』っていう映画なんですよ。

    山里亮太:全然、地元で人気が無いのに・・・一気に、スター、な感じになるわけでしょ。

     (そこまでの時間が)凄いかかってるんで(笑)・・何十年も貧乏だったんで、そういうのを取り戻せるかどうか、って話ですけどねえ。

     でもそういう人って結構、日本でもいて、日本でも「少年ナイフ」ってバンドがあるんですよ。女の子だけでやってるバンドで。日本では凄くマイナーだけどアメリカでは超ビッグだったりするんですね。

     その逆でアメリカとかでは全然人気無いけど日本で凄いビッグなバンドとかもいるんで、こういうのは面白いですよね。音楽だから国境が無いんですよ。だから意外と、そういうことがある。

     ま、日本でほら、例えば、日本よりも中国で売れてる人とかって、芸能人でもいるじゃないですか、すごく、ねえ。のりピーとかねえ!いろいろありますが(笑)・・ハイ。

     最後にもう1曲聴いていただくんですけど、その前に、『シュガーマン 奇跡に愛された男』は、3月16日から日本でも角川シネマ有楽町他で全国ロードショーです。

     ・・・で、最後に「I Wonder」を聴いて頂きます、ハイ!

    ~♪~I Wonder/Sixto Rodriguez~♪~

    「君はセックス、何回したの?」
    っていうそういう歌(笑)・・なんですけど(笑)・・・英語だから大丈夫です。ハイ。

     って、オレが意味言っちゃってるから、意味無いんですけど(笑)。ハイ!ということで、『シュガーマン 奇跡に愛された男』でした!

    スポンサーサイト
    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    コメント

    No title
    とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。
    Re: No title
    ご来訪、ありがとうございます。
    これからもよろしくお願いしますね~。
    管理人のみ閲覧できます
    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    コメントの投稿

    非公開コメント



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。