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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『恋はデジャ・ブ』(Groundhog Day) 町山さんイチオシの傑作「ループもの」にはニーチェもビックリ【2009年2月12日アメリカ映画特電】

     管理人のaCuriousuManです。先日、『LOOPER/ルーパー』(Looper)を観てきました。町山さんが2012年ベスト1に挙げただけあって、単なるタイムトラベルもののSFアクション映画かと思いきや、非常に深いテーマを扱った、ななかなか味わいのある、素晴らしい映画でした!

     ルーパーについてはたまむすびで解説されていたコラムを既に「まちおこし」してありますので、今回は、タイムトラベル「ループ」物つながりで、たまむすび中でも解説されていた『恋はデジャ・ブ』について、映画特電の音声からテキスト起こし~「まちおこし」~いたします。元音声のポッドキャストは『EnterJam』http://enterjam.com/のサイト上で配信中ですので、以下ににリンクを張っておきます。では・・・・

    町山智浩のアメリカ特電 バックナンバー第68回~第80回 
    第73回 2009/02/12 up 啓蟄と『恋はデジャブ』とニーチェ

    ~Setup~
    アメリカの節分「グラウンドホッグデイ(Groundhog Day)」

     このポッドキャストは、日本一男気のあるホラー小説家、平山夢明さんと、アメリカやヨーロッパ製のDVDやブルーレイが誰でも簡単に買えるサイト「DVDファンタシウム」http://www.fantasium.com/の提供でお送りします。

     はい、こんにちは、町山智浩です。今日もアメリカカリフォルニア州バークレーの自宅からお送りしてます。2週間のご無沙汰でした。ちょっと、忙しくてスイマセンでした。ハイ。 アメリカではこの間、2月2日節分だったんですが、これ、「グラウンドホッグデイ/Groundhog Day」って言うんです。で、同じ原題の映画があるんですね。日本語タイトルは『恋はデジャ・ブ』っていうんですけども、このぬるいタイトルにもかかわらず、非常に優れた哲学的な映画なので、今日はその『恋はデジャ・ブ』(Groundhog Day)についてお話します。

     ハイ、スイマセンでした。もう、ものすごく忙しかったのと、病気して1週間ぐらい寝てたんで締切とかズルズルになって、全然、先週は更新出来ませんでした。スイマセンでした。ハイ。 実はですね、今日お話する話は先週話すべきだったことなんですけれども、寝てたんでダメでした、ハイ。先週2月2日に、アメリカでは「グラウンドホッグデイ」っていう日があったんです。これはまあ、日本で言う節分ですね。季節の変わり目、つまり冬が終わって春が来る、という時季なんですね。

     「グラウンドホッグ」っていうのは、なんて言うか、モグラみたいな感じの地鼠なんですね。こう・・・なんて言うか、太ったネズミ(笑)なんですよ。プレーリードッグみたいな感じのヤツですけども、それがですね、まあ、冬眠してるわけです、冬ね。で、暖かくなってくると冬眠から目覚めて出てくる、その日を「グラウンドホッグデイ」って言うんです。だから、中国や日本で言う、いわゆる「啓蟄(けいちつ」にあたるんですね。啓蟄は虫が出てくる日ですけども、ま、同じですよね。

     ただ、この「グラウンドホッグデイ」がちょっと面白いのは、グラウンドホッグが地面からモコモコって、冬眠から目覚めて出てきた時に、空が晴れてると自分の影が地面に映るわけですねえ。それを見てビックリすると、また、穴に引っ込んじゃって出てこない、という話があるわけです。そうすると、冬が終わる、春が来るのが6週間ぐらい遅れると言われてるんですね。まあ、何の根拠も無いわけですが(笑)、ハイ。だから逆に、曇ってて影が見えないと、この・・・ウッドチャックはですね、グラウンドホッグは、ビックリしないでそのまま冬眠に戻らない、と。曇ってた方が、春が早く来るという話なんですね。ま、占いみたいなもんなんですけども。

     これが非常にアメリカで有名になったのは、1980年代にペンシルベニアのパンクサトーニっていうちっちゃい田舎町があって、そこでグラウンドホッグを使って春が来るかどうか占いをするという、まあ、町祭りみたいなのがありまして、テレビを通してそれが有名になって、それから「グラウンドホッグデイ」ってのはメディアがが騒ぐようになったらしいんですね。

     ただまあ、これ、この占い、インチキでしてですね、飼ってるグラウンドホッグがいるんだけども、それが実際に影を見てビックリしたりとかしないわけですから(笑)、最初っから紙を2枚持ってて、冬が早く終る、というのと冬がなかなか終わらない、という2枚のおみくじみたいのを持ってて、その町の人がそのグラウンドホッグに
    「ふんふん、どうした?春来るのか?」
    って聞いて、
    「うん、そうですか」
    つって、
    「どうもグラウンドホッグの話によると、春は来ないそうです!」
    とか、その紙の1つの方を持って読み上げる、という、まあ、どうしようもない(笑)・・・ちゃちなお祭りなわけですけれども、ハイ。

    ~Conflict~
    『ゴーストバスターズ』ハロルド・ライミス監督の傑作『Groundhog Day』(邦題 恋はデジャ・ブ)

     まあ、カワイイお祭りでね。その「Groundhog Day」というタイトルを持った映画があるんですね。これは1993年にハロルド・ライミスが作った映画なんです。ハロルド・ライミスっていうと『ゴーストバスターズ』(Ghostbusters)シリーズで有名な人ですけれども、ま、『ゴーストバスターズ』シリーズってのはみんなが非常に評価してるようには、僕は全然評価してなくて、ホントにヌルい映画だな、と思ってるんですねえ。というのは、プロットがどうもダメでですね、ま、マシュマロマンが出てくるわけですけど、マシュマロマンをやっつける時に、ヘンなビーム砲を3本合わせるとやっつけられる、っていう、何のヒネリも無いんですねえ。一応伏線で、ビーム砲を3本、光線を3本合わせちゃいけないんだ、っていうのが最初のほうでセリフで使われるんですけども、別にマシュマロマンを倒すためにもうちょっと、マシュマロマン独自の、なんか・・・ツイストが、欲しかったですね。つまり、光線でやっつけました、っていう・・そのままじゃん!ていうね。光線ではやっつけられないよ、っていう話にするとか・・・するべきで、ちょっとなんか弱い映画だな、と僕は『ゴーストバスターズ』に関しては思っているわけですけれども。

     このハロルド・ライミスの本当の傑作はこの『Groundhog Day』なんですね。日本語タイトルは『恋はデジャ・ブ』っていうんですけども、そうするとなんか、すごくラブコメのような感じがしますけれども、全然、映画観るとそうじゃなくて、正直言うと悪夢のような、ホント観てる間、物凄い気持ちが悪くなってくるような映画なんですね。ハイ。

     で、主人公は『ゴーストバスターズ』の主人公だったビル・マーレイですね。この人は今、すごく素晴らしい俳優になってしまったんですけど・・(笑)なってしまった、ってことはないんですけども。元々、『ゴーストバスターズ』の時にはちょっと嫌味なキャラクターだったんですね。みんなが一生懸命やってるのにふざけてる、っていうか、なんかいっつもヤル気が無い、っていうキャラクターでそれが味だったんですけれども。その前に元々、サタデーナイトライブのコメディアンの人では、チェビー・チェイスって人がいて、この人もヤル気無い人、だったんですけども(笑)、このビル・マーレイはそれに輪をかけてヤル気が無いというですね。 僕が初めてビル・マーレイを見た時は、(こんなにヤル気が無い人が主人公でいいのか?)、(アメリカ映画、どうなっちゃうんだ?)、と思ったんですけども、だんだん、だんだん、良い味が出てきてですね、だんだん、良い人になってったんですね。

     そのきっかけっていうのは、多分『3人のゴースト』(Scrooged)って映画なんですね。これはあの『クリスマス・キャロル』(Christmas Carol)を元にしてるんですけども、まあ、非常に強欲で、自分勝手でイヤ~なヤツをビル・マーレイが演じてるわけです。経営者なんですけども、従業員のことなんか何も考えて無い、金儲けのことしか考えて無い。それで、友だちも誰もいないんだけど、別に気にしない、って男がビル・マーレイで、ま、スクルージですけれども、『クリスマス・キャロル』の。それがまあ、3人のゴーストに出会って、人々の悲しさとか、いろんな生活を見て反省して、クリスマスにみんなに施しをする。・・っていうか、これ、最後、ホントに泣けるんですね、『3人のゴースト』っていう映画は。観客に向かって声をかけるんですよ。
    「1年に1回だけでも、誰かに優しくしたっていいじゃないか!」
    って言うんですね。別に、クリスマスだからって、キリストがどうしたとか、そんなのどうでもいいじゃないか、と。
    「1年に1回でいいから、自分以外の人のことを考えようよ!」
    っていうメッセージを、観客に向かって言って(笑)ですね、ビル・マーレイが。それで終わるという、非常にもう、涙ポロポロ出てきた映画なんですけども。この映画が良かったのは、ビル・マーレイがホントにイヤ~なヤツにしか(笑)、見えないんですね。『ゴーストバスターズ』の頃から(ホントになんてヤな奴だろう)と、なんてこう・・・なんていうか不謹慎で、一生懸命みんなが頑張ってるのに頑張らなくて、(ヤな野郎だな、このヤロウ)と思ってたわけですね。顔がまた、そういう顔なわけですよ。もうホントに人を小馬鹿にしたようなですね、
    「一生懸命やる奴はゴクロウサン」
    みたいなね。ホントに、ぶん殴ってやろうか!みたいな感じの奴なんで、それが改心するっていうんで、非常に感動的だったんですけれども。

     その路線の映画なんですね、この『Groundhog Day』、『恋はデジャ・ブ』っていうのは。

     主人公は、ピッツバーグのテレビの、ま、ローカルテレビ局のお天気キャスターなんですよ。で、ローカルテレビ局のお天気キャスターのくせにえばり散らしてるんですね、このビル・マーレイが。まあ、エバッててですねえ、もう・・ヤな野郎なわけですよ、ホントに。でもって、スタッフの人、カメラマンとか、そういった人達を、完全にバカにしてるんですね。
    「オレは才能あるし」
    って、
    「オレはこういうことをやっててインテリだし、お前らただの・・・労働者じゃん!」
    みたいなことを平気で言うヤツなんですね。(ナニ、このヤロウ?)という感じで、ま、嫌われてるわけですよ、現場のスタッフからも。

     で、この「グラウンドホッグデイ」の取材に行くんですね。さっき言った、ペンシルバニアの田舎町に取材に行くんですけども、もうそれが嫌でたまらないわけです。(なんでオレは・・一応、お天気キャスターだけれども、世間に名は知られてる男なのに、あんなワケのわかんない、ネズミかモグラかなんかワケのわかんない奴の天気予報)、もう要するに、天気予報なわけですね、春が来る、冬が行かない、とか、そういうのを占うネズミなんで。
    「あんなネズミ野郎なんかに取材しなきゃいけねえなんて、バカにしてんじゃねーよ!」
    とかいう感じで、完全にもう、イライラしてまわりに当たり散らしてるヤな野郎なわけですよ。で、ま、車に乗ってカメラマンとプロデューサーの女の人と、3人で小さい町に取材に行くわけですけれども、もう、ヤル気全然無いんですね。

     で、結構いいダウンタウンにホテルがあるんですけども、そこのホテルに「今日は一晩、泊まりましょう」ってプロデューサーの女の人が言うんですね。リタさんていう人で、この人はアンディーマクダウェルです。この人は『グレイストーク』(グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説 原題:Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apes)で、ま、非常に美しいジェーンを演じてデビューした人なんですけども、まあ、あれを初めて観た時はですね、(なんてキレイな人だろう)と思ったんですねえ。この人は本当に、モデル出身でキレイなんですけども、その時は演技が全然出来なくてですね、南部なまりが酷くて、とてもイギリスの貴族に見えない、ということで、セリフを全部グレン・クローズに吹き替えられてしまった、という、ちょっと可哀想なデビューをした人ですけども、その後どんどん演技派として、成功していった人ですけれども。この人が珍しく化粧っ気の無いプロデューサー、ま、ジャンパーにジーパンで、テレビ局でガツガツ頑張ってる、いわゆるキャリアウーマンを演じてるんですね。

     で、「グラウンドホッグデイ」の取材に来たらホテルがあって、このホテルに泊まるのか、って話になると、このビル・マーレイが
    「なんだ、チンケなホテルだな。オメーよお、オレはタレントだよ?スターだよ?」
    って、
    「こんなホテルに泊まらせんのか、フザケンじゃねーよ!」
    みたいなヤなことを言うわけですね。そうすると、アンディーマクダウェル扮するプロデューサーが
    「あ、あなたはちゃんとスターだから、素敵なB&B、ベッドアンドブレックファーストを予約しておいたわよ」
    って言うんですね。
    「みなさんで、ちょっとお茶かお食事でもどう?」
    とか言うんですけども、
    「・・・んなの、バカバカしくてやってらんね~よ、オレは帰って寝るぜ!」
    とか言って行っちゃうんですね、このビル・マーレイは。もう、カチンと来るんですね。カメラマンとか
    「なんだあの野郎、何様のつもりだよ!」
    とかいう感じなんですね。

     で、まあ、当日になりまして、朝6時の目覚ましが鳴って、起きてですね、その取材先に向かうビル・マーレイなんですけども。ま、ヤな奴だなと思うのは、もうホントに寒い、ま、2月2日ですから、もう寒い中にですね、ホームレスのおじさんが立ってるんですね、ブルブル震えながら。おじいさんですねえ。で、
    「お金ください」
    って言ってんですけど、それ見ても
    「へっ!」
    って感じで、無視して通り過ぎるわけですよ。その後、眼鏡をかけたサラリーマン風の男が近づいてくるんです。
    「おー!覚えてるか?オレ。高校の時の、ホラ、高校の時のネッドだよ!」
    とか言うんですけども、全然覚えてないんですね。というのはもう、自分のことしか関心の無い男なんで、ビル・マーレイは。
    「そんな、昔の同級生とか、知ったこっちゃねーや!」
    って感じなんですね。
    「お前のことなんか覚えてねーよ、知らねーよ!」
    みたいな感じなんですね。そのネッドって男は、生命保険のセールスマンをやってるんですけど、
    「いや~、覚えてないのかよ・・・」
    とか言って、ちょっと哀しそうな感じなんですけど
    「知ったこっちゃねー、オマエ」
    とか言って
    「オレは忙しいんだ!」
    って感じでビル・マーレイは一歩踏み出して、振り払って行くわけですけど、そうすると、雪解け水が溜まった水溜りがあって、そこに足を突っ込んじゃうんですね。ドボ~ンと。で、
    「ついてね~や」
    みたいな感じで、
    「ヘンな奴に絡まれるしなあ!」
    とかいう感じで、その「グラウンドホッグデイ」の占いに行くわけですけども。

     

     でまあ、いい大人達が、みんなその地ネズミの天気占いに群がってるわけですね。それを見て、コメントを言わなきゃいけないわけですけども、マイクロフォンに向かって、テレビカメラに向かって、
    「いい大人達がこんなワケのわかんないネズミなんかにギャーギャー騒いで、ホント、バカじゃないんですかね!」
    みたいなコメントを言うんですね。撮ってる方も
    「そんなこと言うことねーじゃねーかよ・・・」
    みたいな感じで撮ってるわけですけども。で、撮影が終わって車に乗って、ピッツバーグに帰る、となると、猛吹雪が来て帰れなくなってしまう、と。本当にあっちの方は、しょっちゅう寒波が来て道路が走れない状態にしょっちゅうなるようなとこなんですけども、帰れなくなっちゃった、と。しょうがないからこの田舎町にもう一晩泊まるしかないや、ということになるわけですね。で、
    「やってらんね~な~」
    とか言いながら、
    「何にもね~町だしつまんねーな~」
    とか言って、で、まあ仕方なく、泊まるわけですね。
    「今日は何にも良い日じゃ無かった」
    「ロクな日じゃなかったな」
    と。

     で、翌日、起きるんですけども、6時の目覚ましが鳴って起きるとですね、昨日と同じ目覚ましのラジオを仕掛けてたんですね。昨日と同じ曲がかかるんですね。これは「ソニーとシェール」(Sonny & Cher)って、ソニーって、この間死んだソニー・ボノって・・・議員ですけども、彼はトンデモナイ議員で、ディズニーのミッキーマウスの著作権を伸ばす、っていう法案を通した男なんですね。彼は昔歌手でシェールっていうかみさんと一緒に夫婦デュエット漫才コンビをやってたんですね、「ソニーとシェール」つって。で、それのヒット曲の、「I Got You Babe」が聴こえるんですね。「アイガッチューベイブ♪・・」っていうのが聴こえて、
    「それ昨日じゃん、聴いたじゃん!」
    「またおんなじのやってんのかよ」
    って言うと、聴いてると、朝のラジオショーも、内容が殆どおんなじなんですね。
    「なんだよ~、昨日のテープそのまんま流してんのかよ・・壊れちゃったのかよ」
    とか言いながらそのホテルから出ると、全く昨日とおんなじ、あのネッド。高校の同級生だ、っていう男が近寄ってきて全くおんなじことを言うんですね。
    「おい。覚えてねーかよ、俺、ネッドだよ、高校の時の!」
    って言うんですね。
    「あれ?・・・お前それ、昨日も言っただろ?・・・ちょっと待てよ?」
    と。
    「今日一体、何日だよ?」
    「2月2日だよ」
    と。
    「昨日2月2日だっただろ!今日は2月3日だろう!」
    「いや、2月2日だよ」
    って言われるんですね。

     で、(おかしいな・・・)と思って町の広場に行くと、また「グラウンドホッグデイ」をやってるんですね。

    「ちょっと待ってくれ、みんな何しにきたんだ?」
    と。
    「グラウンドホッグを見に来たんだよ」
    「それ、昨日だろ!」
    「いや、今日ですよ」
    ・・・あれ?・・・ってことになってくるんですね。どうも同じ日を2回やってるんですね。これは何かの悪夢に違いないと思って、また寝るわけですが、同じ事がまた繰り返されるわけですね。道が通れなくて、またその退屈な町にもう一晩泊まらなきゃならない、と。・・で翌日起きると、またおんなじ「I Got You Babe」が聴こえるんですよ。全くおんなじラジオをやってて、
    「今何日?」
    って聞くと
    「2月2日です」
    って言われるんですよ。これはどういうことだ、と。
    「俺はあの2月2日を、何回も何回もやり直してるのか?」
    と。

     人生の中にはいろんな楽しい日があった。俺は昔彼女がいて、・・・この、ビル・マーレイは、結構女ったらしっていう設定なんですね。それで、自分勝手で、女を、まあ、ヤっては捨ててるような男(笑)という設定なんですけども。・・・で、いい女と一緒にリゾートに行って、最高の日を過ごしたことがある、と。
    「あの日が繰り返されるんだったらいいけど、こんな何にも無い田舎町で、氷と雪に閉じ込められて、退屈で死にそうな1日をどうしてもう1回繰り返されなきゃいけないんだよ!」
    って言うんですね。でも繰り返すんですね。何度も何度も繰り返すんですよ。これは一体どういうことなんだ?。

     で、これだけ繰り返されるんだったら、段々学んでくるんですね。ネッドって男が近づいてくると先に、
    「あ、ネッドだろ。お前は高校の時の同級生だよな。それで今、生命保険会社で働いてんだよな。全部知ってるよ!」
    って逆に、言われる前に全部言っちゃうんですね。水溜りにドボンて落ちたっていうのも、何度も落ちたんで学んだんで、
    「ここは水溜りだから踏まないよ」
    つって、ピョンて飛び越えるんですね。ただもう、全然ヤル気が無くなっちゃって、何度も何度もグラウンドホッグの中継をやってるんで、もう何にもコメントすることが無くなってきて、ホントにどうでもいいや、って完全な投げやりな中継にどんどんなっていくわけですけども。本人は飽き飽きしてるんですが、まわりは初めてだから、
    「何だろう、コレ?」
    って感じなんですね。

     ・・・まあ、こういうことになった時にで男が考えることは、まず、ただ1つですね。セックスですね!・・・(笑)
    「とりあえずセックスするか!」
    って話になるんですね(笑)。これもオカシイ、リアルなんですけども。まあ、そんな田舎町でもちょっとキレイな女の子はいるわけですね。その女の子のとこに行って、ナンパするわけですよ。最初は失敗するわけですよ。
    「何?あなた?」
    みたいなことになってくんですね。ただ、最初にナンパした時にいろいろ聞き出すんです。
    「好きな物は何?」
    とか
    「どこの学校に行ってた?」
    とか。いろんな、その女の子に関することをいろいろ聞き出して、で、最初はフラれるんですけども、2回目は成功するわけですよ。つまり、
    「君ってこれが好きだよね」
    って先取りしちゃうわけですね。その女の子の好きな物をどんどん先に当てちゃって、その女の子の方はまるで魔法にかかったみたいにして、
    「あなたはなんでも、私の好きな物を次から次に出すのね」
    っていう・・・ピンクレディーの「UFO」の、あの歌詞のようなですね(笑)、状況になっていくわけですね。
    「次から次に差し出すあ~なた♪」
    みたいな感じになっていくわけですね。
    「信じられないことばっかりあるの・・・」
    っていう、ピンクレディーの歌詞そのものの状況になってるわけです。実は何回も何回もその日を生き直してるんで、その女の子をナンパして、失敗して失敗して、失敗して失敗した、結果・・・口説くことに成功するわけですよ。

     で・・・ま、セックスするわけですけども、なんていうかこの男、ま、やり慣れてるっていうのもあるんですが、ちょっと、つまんない感じになっちゃうんですね。
    「なんだよ、こんなの・・・こうやって、何度も口説いて、知り尽くしたら、簡単にコロッと参っちまうのかよ。つまんねーな、女って」
    って感じで、バカにした感じでですね、ヤル気の無いセックスをするんですけども(笑)、このまたヤル気の無い感じ、っていうはまたビル・マーレイ独特の、超ヤル気無い演技なんですが。ハイ。で、セックスしながら思わず相手の女の名前、ナンシーっていうんですけども、何度もリタって呼んじゃうんですね。
    「え?私、リタじゃ無いわよ」
    って言うと
    「あ、ゴメンゴメン、ナンシーだよね」
    って言いながら、ヤリながら
    「・・リタ・・」
    って呼んじゃうんですね。リタっていうのはプロデューサーの名前なんです。このビル・マーレイは実は、あのリタに酷いことばっかり言ってるんですけども、実は好きだったんですね。自分でいろんな女をナンパしていくうちに、リタが好きだったってことに自分で初めて気付くんですね。

     その後もいろんなことを何度も繰り返してるうちに、その町のことをなんでも知っちゃうんですね。で、なんでも好きな事をやってやろう、みたいな感じになるんです。例えば、現金輸送車がお金を銀行のキャッシュマシンに入れるじゃないですか。それをまず見とくわけですよ。隙がある状態っていうのを学んどいて、次回そこに行った時に、そこで現金の沢山入ってる金の袋を取っちゃうんですね、ぱっと。泥棒ですけど。どうせ明日にはならないわけですね。永遠に明日は来ないんですね。また昨日に、昨日っていうか今日に戻っちゃうんで、だったらどんな悪いことをしたって平気だよ、って感じで、ビル・マーレイは、どんどんどんどん悪いことをし始めるんです。なんでも許されるんだ、と。どうせ、また、朝に戻っちゃうんだから・・・と、いうことで、もう、ベロベロに酔っ払って車を暴走させて、警官とカーチェイスをして警察に捕まってしまう、と。刑務所に入っても、翌朝、はっと起きるとまたあの、B&Bのホテルのベッドで「I Got You Babe」がラジオから聴こえてる、と。何をしても戻っちゃうんですよ。だからもう、ホントに、破壊活動とか、泥棒とか、え~・・・それこそエッチとかですね、もう何もかも好きな事をガンガンやるわけです。ま、好きな事をやる、つってもちっちゃい田舎町なんで限界があるってとこがまた面白いんですけどね(笑)。ハイ。

     でまあ、散々やって、だんだん飽きてくるんですね。で、もうこんなことをしてもしょうがない、という感じて、じゃあ、俺は・・リタが好きだから、リタをなんとか、口説き落とそうよ、ってことになるんです。さっきと同じように何度もリタに話を聞くわけですね。その度にフラれるわけですけども、フラれてもフラれても、それを学習していくわけですね。例えば、
    「好きな物は何?」
    「フランスの詩人なの」
    って言ったら、
    「へ?おフランスかよ!」
    って思わず言っちゃうんですね。それでまあ、嫌われちゃうんですけども、ビル・マーレイってそういう奴なんでそういうことを言っちゃうんで(あ、失敗した)と思うと、その次の、同じ日(笑)、毎日2月2日を繰り返してるんで、次の2月2日では、
    「君ってもしかして・・・フランスの詩が好きなんじゃない?」
    って言うような感じで
    「え?どうしてわかったの?」
    っていうねえ、おんなじパターンですけど(笑)。それで、その前に勉強しておいて、フランスの詩を突然朗読したり、フランス語でですね、すると
    「あ、この人私と同じ物が好きなんだわ」
    って感じでだんだんリタがだんだん、こう・・・この人は嫌いだ、と思ってたのがだんだん好きになってくるんですね。で・・・子供は大っ嫌いなんですね、このビル・マーレイってのは。子供がいるだけでムカつく、っていうようなヤツなわけですよ。自分勝手な男だから。でもリタが非常に子供が好きだ、ってことがわかって、
    「いや~、僕も子供、好きなんだよね~」
    とかねえ、心にも無いことを言うわけですね(笑)。

     で、なんかもう、ホントにリタのことを何度も何度も試行錯誤して、彼女の好きな物を勉強し尽くして、最後とうとう、自分の部屋のホテルに連れてって、もう、さあ、ヤルぞ、っていう状態になって、もうここまでやったんだ、と。30回以上繰り返してるわけですけども、
    「さあ、もう、ヤラせろよ」
    みたいな感じで迫ると、パシーンて顔を叩かれるんですね。で、
    「アンタ、ちょっとなんかオカシイわ・・・演技してるでしょ」
    「私をマニピュレートしてるでしょ」
    「操ってるでしょ」
    と。
    「どうも可怪しい」
    と、これは。
    「あなた本気じゃ無いでしょ・・・なんかトリックを使ってるだけでしょ」
    と見抜かれちゃうんですね。
    「どんなトリックを使って私の心を読んだりしても、ダメよ」
    「だって私はあなたが嫌いだから」
    と。なんで嫌いかっていうと、
    「あなたは本当は自分のことしか愛してないから」
    「自分のことしか考えてないからそんな人を好きになることは出来ないわ」
    って言われるんですね。これは困った、と。何度時間を戻ってきて、テクニックとかはどんどん向上していっても、
    「アナタという人間が嫌いなんだ」
    って言われちゃったから、これはもう(笑)・・・どうしようか、っていう話になっていくわけですね。

     で、がっくり落ち込んで、自殺するんですね。ホントに自殺するわけですよ。車で暴走して、崖から落っこちてでべシャッと逆さになって潰れるんですね。それを見た、さっきのカメラマンのクルーが、
    「あ、大丈夫だ。多分、生きてるよ」
    って言うんですね。それを見た時にやっぱり、これコメディ映画だから、『ゴーストバスターズ』の監督とキャストだし、あ、大丈夫だろう、と思うと、車がドッカーン!て大爆発するんですね。するとそれを見たカメラマンが
    「う~ん・・・やっぱダメかもね」
    って言うんですけども(笑)。で、どうなんのかな?と思うと、やっぱり朝6時になると目が覚めちゃうんですね。参ったなー、と。で、もうあとはもう、あらゆる方法で自殺をして見せるんですね。車に撥ねられたり、高い塔のてっぺんから飛び降りたり。で、画面には出てこないんですけども、ピストルで自分を撃ったり、ガソリン被って火をつけたり、もう、ありとあらゆる手段で自殺を試みるんですね。もう、何度も何度も、100回も200回も2月2日を繰り返してて、しかも、もう、やりつくすことはやり尽くした、金も持って遊んだし、悪いこともしたし、悪いことをどの位したかは描かれてないんですけれども、ま、殺人とかはしてないらしいんですね。というのは、ハロルド・ライミス監督がDVDのコメンタリーで言ってるんですけども、
    「最初は、なんでも許されるから、殺人をさせるってことも考えた」
    と。
    「ただ、殺人をしてしまったら、そこでもう、一生消えない心の傷を彼は負ってしまって、同じ人間ではいられなくなってしまうから、殺人だけはさせなかった」
    つってるんですけれども、まあ、殺人以外の悪いことは全部やったと、(笑)逆に言えばですね、やった、と。でも、何度やっても元に戻っちゃうから意味無いんですね。どんなに金持ちになってもどんなに悪い奴になっても、また、元の木阿弥、振り出しに戻っちゃうんで、もう・・・だんだん虚しくなってきてなんにもやる気無くなっちゃってるんですよ。で、好きな女には、どんなに頑張っても
    「あなたは好きにならないわよ」
    って言われちゃったし。もう、死ぬしかねーや、と、いうことで自殺を繰り返すんですが(笑)、死ねないんですね。何度も何度も、何度も何度も、ありとあらゆる方法で、試すんですが、死ねないんですよ。朝6時になるとまた目が覚めて全くおんなじ日が繰り返されるんですよ。最初はいろんなことをやったのに、もうなんにもやる気がしない、と。で、だんだん・・・狂ってくるんですね。

     もう・・・疲弊してですね。観てる方も、悪夢に・・・ホントに悪夢ですよね、これねえ・・・もう、観てるような気持ちで、全然楽しくなくて、非常に、心に重苦しい物が乗っかかってくるんですね、この映画は。(あ~もうこれ、悪夢じゃないの・・・)と。でも、終わらない悪夢なんですね。死ぬことも出来ない悪夢なんですよ。これ拷問ですね、究極の拷問。発狂することも出来ないんですね。発狂したとしても、また翌朝、元へ戻っちゃうからですね。死ぬことも発狂することも出来ない(笑)・・・永遠の拷問ですよ、これは。で・・・もう、助けてくれ、と。いうことになってくるんですね。で、どうやったら脱出出来ると思いますか?・・・ねえ。で、もう、自分のことを考えることにも疲れたんですね。どうでも良くなったんですね。ビル・マーレイは。

     あんだけ自分を愛して、自分のことしか考えなかった男がですね、とうとうここまで来たから、自分のこともどうでも良くなったんですね。初めて、あんなに自分が大事で、自分の欲望ばっかり考えてた男が、初めてそれを、乗り越える状態に達したわけですね、この時に。その時に、いつも無視してた乞食のおじさん、ホームレスのおじいさんにお金をあげるんです。今までずっと、この人のことを無視してたけどお金をあげるんですね。で、いつも自分のとこに来て
    「ほら、高校の時の友達のネッドだよ!」
    つってて、
    「うるせーな、バカヤロー」
    って感じで突き放してたんですけれども、彼が大事に思えてくるんですね。
    「あーネッドか。また会えたな!」
    思わず抱きしめちゃうんですね。で、またあの、ホームレスのおじいさんに会ったら、ちょっとすごい年でですね、死にかけてるんですね。で、病院に連れてったら、死にましたって言われるんですね。あのおじいさんは。
    「なんとかなんなかったのか?」
    って言うと、
    「いや~、もう、老衰だったんですよ。」
    って看護婦に言われるんですね。
    「あ、あのおじいさんは、この2月2日に死ぬ運命だったんだ!」
    と。どうしても、死んでしまうんだ、彼は、と。でもなんとかしてあげたい、って思うんですね。彼が死ぬことを知ってるのは自分だけだから。で、次の2月2日になったら、お金をあげるだけじゃなくて、彼にご飯を食べさせてあげるんですね。でもやっぱり死んじゃうんですね、彼は。で、次の2月2日には彼のお話を聞いてあげるんです。抱きしめてあげるんですね。でも死んじゃうんですね。何をしても、その2月2日には、そのおじいさんは死ぬ運命だったんですよ。

     それからだんだん、今まで庶民ていうものをバカにしてたんですね、この人は。
    「俺はテレビに出てるんだ」「
    お前ら、名も無い庶民じゃねーか」
    みたいな感じのことを平気で言うような野郎だったんですけれども、すべての人達が、実はもう、ホントにかけがえのない人生を、毎日、その日々、その瞬間に送ってるんだってことが段々わかってきたんですね。で・・・このハロルド・ライミス監督がコメンタリーで言ってるんですけども、
    「ま、段々わかってくるのも当たり前だよ」
    って言ってるんですね。
    「だって僕達の脚本の設定では、このビル・マーレイは、その2月2日を三千回ぐらい繰り返してる、ってことになってるからね」
    って言うんですね(笑)。つまり10年間ぐらい2月2日を繰り返して、10年分、彼は成長してるんですよ。だから、
    「そのぐらいのことは、段々わかってきて当然だろう」
    と、いうようなことをハロルド・ライミスは言ってますけれども。

     で・・10年間2月2日に閉じ込められてた男が初めて、そのなんでもない町の、ちっちゃい町のなんでもない日のなんでもない人達、それぞれに人生があって、それぞれかけがえが無いんだ、と。いうことがやっとわかったんですね。それから町中歩いて困った人達を助けるんですね。その日に、木登してて木の上から落っこちた少年がいるってことを、ま、3千回もその日を経験してるからもう知っちゃうわけですね。で、その男の子が落ちてくる所に最初からいて、助けてあげるんですよ。それ以外にも、食べ物を喉につまらせて、あるレストランで人が死ぬってことも知ってるんで、そのレストランに先回りしてその男の人が喉に詰まった時に後ろからボン!て叩いて、詰まった食べ物を出してあげるんです。そうやって町中の人を助けていくんですね。3千回もやってるから何が町で起こってるか全部知ってるんで、全部先回りして助けるんですよ。ただそれを、1回じゃなくて、ある2月2日でもみんな助けて、その次の2月2日でも助けるんですね。何度も何度も助けるんですよ。その男の子を助けた時も、男の子がありがとう、って言わないんで、
    「お前は、100回助けてもありがとう、って言わないね」
    っていうようなことを言うんですけども、その男の子にしてみれば初めてだから(何言ってんだろう?)と思うんですけども、100回以上繰り返して助けてるんですね。その男の子を。

     それ以外にも、何度も何度も人生繰り返してきたけれども、何も学んでなかったことに気がついて、本を読み始めるんですね。実際、一生に1度も読まないと思ってたような難しい本を読み始めるんですよ。それだけじゃなくて、ピアノを練習し始めるんです。
    「俺はピアノを弾きたかったけども、弾かないまま40ぐらいまできちゃった」
    と。
    「でも、もうこの2月2日を永遠に繰り返すんだったらピアノを弾けるようになりたいな」
    って言って、町のピアノ教室に行くんですよ。で、そこでまた、ちょっと非常に傲慢なビル・マーレイがが出てきて、
    「ここで10万円あげるから俺にいきなりピアノを教えて」
    って言うんですね。ピアノの先生に。そうすると、ピアノの先生が、予定が入ってた女の子の生徒を外へ出して、
    「帰っていいよアンタ」
    つって、10万円でビル・マーレイにピアノを教える、ってシーンがあってですね、ビル・マーレイ、相変わらずだな、ってとこがちょっとあるんですけども。で、ピアノを触ったことがないから最初は物凄いヘタクソなんですね。ところがその次の2月2日だとちょっと上手くなってるんですよ。で、また、その次の2月2日はもっと上手いんですね。段々段々うまくなってって、ラフマニノフのパガニーニかなんか弾けるようになっちゃうんですね。これスゴイのはビル・マーレイ、本当ににこの映画のために、練習して弾けるようになったらしいんですね。それもやっぱり、スゴイな、と思うんですけども。

     で、勉強もして、さっきまでは付け焼刃だったんですけども、フランスの詩人とか、そういうのもちゃんと克服して本当に勉強をして、しかも日々、町中の人を助けられるかぎり助けて、それが無駄だってわかっても、死んじゃうおじいさんもいるんですけど、それでも助けて。で、ピアノを練習して、どんどん上手くなってって、段々、違う人になっていくんですね。で、アンディーマクダウェル、あのリタっていう女の人が、初めて、
    「あなた、変わったわね」
    って言ってくれるんですね。つまり彼は、どんなにテクニックを尽くしても、彼女を振り向かせることは出来なかったんだけど、自分が変わることによって初めて、彼女に認められるんですね。

     これは、40を過ぎた傲慢な男の成長物語なんですね。自分のことしか考えてなかった男が、本当に、子供とか全然好きじゃなかったんですけども、何度も何度もいろんな人達の生き様を、何度もって、3千回も!見たんで、ホントに普通の人達、本当に何気ない日常、全てをですね、愛するようになったんですね。なんでもない日々を、本当に大事に、もう、それが何千回繰り返しても、それを徹底的に生きよう、と。要するに、好きな事をやってるんだけど、結局無意味だったんですね。好きな事をやってメチャクチャやって、殺人以外のことを、全部欲望を実現させたんだけども、虚しかったんですね。ところが、思いっきり、そのたった1日を、思いっきり自分のやれる限りのいいことをして、やれる限りのことをやったら、楽しかったんですね。1秒も無駄にしない、この1日を大事に生きるんだ、と、精一杯生きたら楽しかったんですね。

    ~Resolution~
    『Groundhog Day』がニーチェの「永遠回帰」を紐解く

     ・・・っていう話なんですが、コレは一体何か?っていうと、これはハロルド・ライミスとこのシナリオライターの人が言ってるんですが、ヒントはニーチェなんです。ニーチェが書いた『悦ばしき知識』っていう本があって、その中で「永遠回帰」もしくは「永劫回帰」っていう言葉をニーチェが出してきてるんですね。それは、
    「人生がもう一度完全に同じように繰り返されるとしたら、それはどうだろう?」
    と。
    「おんなじ、全く同じ、何の変わり映えもない日が何度も繰り返されたとしたらどうだろう?」
    「それは拷問かも知れない」
    と。でも、それを、歓びを持って、生きることが出来るならば、それは本当に立派な人間のはずだ、ってなことを言うんですね。この「永遠回帰」っていうのは、いったいなんでこんなことをニーチェが言ったのか、ってことは非常に謎に包まれてて、読んでもよく判り難いんですね。どういう意味なんだろう?と。なんでおんなじことを、おんなじ日を、毎日を何度も繰り返さなきゃいけないのか?と。で、どうしてそこに歓びを見出さなきゃいけないのか、って判り難いんですが、これは実は、彼がずーっと反発してたキリスト教的な概念への、アンチテーゼとして出してるんですね。それがわからないと、何を言ってるかわからないわけですけども。

     実はキリスト教ってのは、ま、ユダヤ教、イスラム教、全部同じなんですけれども、一神教、全部おんなじ神様なんですけれども、昔立派な社会があった、立派な世界があった、神の国があった、この世界は神が作った、と。でも段々ダメになってしまった、と。人間が堕落してね。でも、いつか未来にはまた、神の国が実現されるんだ、という考え方なんですね。基本的に。いつか神の・・・天国が実現されるんだ、と。ないしは、死んで、天国に行けるんだ、っていうような、未来にいいことがある、っていう考え方なんですよ。で、その、現在っていうのは、未来のための修練の場だ、という考え方なんですね、これは。キリスト教的考え方なんですね。ま、ユダヤ教的考え方、イスラム教的考え方、共通してるわけですけども。

     ところが、それっていうのはマルクス主義にも影響を与えてて、マルクスとか、マルクスの原点にあったヘーゲルっていう哲学者もそうだし、ま、実存主義も全てそうなんですけども、世の中ってのはどんどん良くなっていくものだろう、と。人間というのはどんどん成長していくもので、社会ってのはどんどん、先に進んでいくんだ。未来に向かって、どんどん進化していくものなんだ、っていう考え方なんですね。これは要するに、神を否定した、マルクスもその考え方、キリスト教的な考え方、ユダヤ教的な考え方、に、囚われていたわけですけれども、ニーチェはそれを否定するんですよ。未来にいいことがある、そのために現在があるんだ、って考え方は、それはダメだ、と。それはあまりにも現在ってものをないがしろにしてて、その・・・ま、アーミッシュなんかそうですけども、要するに、禁欲、禁欲、禁欲で生きるんですね。欲望を押さえつける、と。そうすると将来天国に行ける、神の国に行ける、と。将来、あの・・・要するにキリスト教原理主義なんかも、将来、最後の審判が下った時、我々だけは神の国に入れる、と。で、神を信じないで悪いことをしてた人達は、みんな地獄に行くんだ、っていう考え方なんですね。

     つまりこの考え方は、現在っていうものをないがしろにした考え方なんですね。現在やりたいことをやらないで、我慢することによって、死んだ時、もしくは未来、天国に行ける、という考え方で、これは駄目だろう、とニーチェは言うわけですね。そうじゃなくて、現在一生懸命生きるべきなんだ、と。現在を楽しむべきなんだ、と。何故ならば、現在しかないからだ、と。本当は未来なんてものは無いんだよ、と。そういう嘘をついて、騙すなよ、ってことですね。現在、認識できるのは、我々にとって認識できるのは、やっぱり現在しかないんだ、と。現在を、力いっぱい楽しんで、力いっぱい生きようじゃないか、と、いうことを言いたかったんですね。つまり、まあ、キリスト教に対する反発なわけですけれども、それで永遠にこの1日が繰り返されるとしても、それを楽しむ、と。それを思いっきり生きるんだよ、という考えをニーチェは出してきて、それが「永遠回帰」なんですよ。

     で、この『グラウンドホッグデイ』っていうのは、それを、言ってるんですねえ。これは・・・スゴイ映画なんですね。だから、アメリカではもうそれが認識されているわけなんですが。

     まあ、あと、『シーシュポスの神話』っていうですね、カミュが書いてる、哲学の短いエッセイがあるんですけども、これもまあ、似たような話で、そのシーシュポスっていう男が、ま、ギリシャ神話なんですけれども、永遠の刑罰を受けるんですね。それは、巨大な石の塊をどんどん坂の上に押していくという仕事をやれ、と言われるんです、一生。永遠に。で、どんどん石を、山の天辺に持って行くと、山の天辺で石はまた、下に転がってって、それをまた、下まで取りに行って押し上げなきゃならない、と。それが永遠に続く、と。何にも結果は出ない、と。もう、ただおんなじことが永遠に続くだけだ、と。これは拷問なんだ、ということなんですねえ。これは全くおんなじですね。その『グラウンドホッグデイ』の拷問とおんなじなんですけども、この時カミュがおんなじことを言ってるんですね。
    「でも、その、無駄な、石を持ち上げるっていう、何の見返りも無い行為に、歓びを見出すのが人間なんだ」
    「そこに積極的に歓びを見出していくのが、人間ていうものなんだよ」
    と。未来なんか無くても、将来、天国に行けるっていう見返りが無くても、その、日々の、生きるってことだけを、実は楽しむことが出来るはずなんじゃないか、というふうに言ってるんですね。そしたらもう、いつ死んでもいいじゃないか、ってことですね。今、精一杯生きてるから、と。

     だから、もしそこで、目の前に困ってる人がいた時に、10ドルあげるってことが出来ない人は、10ドルあげるっていうかお金をあげることが出来ない人は、この人にお金をあげるよりは、それをとっといて後で使ったほうがいいや、っていう貯金行為ですよね、それってのは。さっき言った、実は、今我慢して天国に行こう、ってのとおんなじことなんですね。
    「なんでそんなことをするの?」
    「目の前で困ってる人がいたら、もうその場で出来る限りのことをやれよ!」
    ってことですね。なんでとっとくんだよ、と。何故、保留して先のことに貯金しちゃうんだよ、ってことですね。今その場で、全力を尽くせ、ってことなんですね。そこであった人は、うっとうしいなと思うかもしれないし、まあ、後で会うかも知れないし後で一生会わないかも知れない、だからもう、関係無いよ、と思うんじゃなくて、会った人、会った人一人一人を大事に思って、一期一会で愛せ、ってことなんですね。で、最後、ビル・マーレイは、それが出来る人になるんですよ。

     ・・・という、映画なんですね。もちろん、そんなことが出来る人がそんなにいるわけない、っていうか、まあ、人間は基本的に、出来ないわけですけれども、3千回2月2日を生きたために出来るようになったわけですね(笑)。まあ・・・そういうことはめったにないのでね、え~・・・「グラウンドホッグ」ってのは、春が来たと思って出てくると、自分の影にビックリして、また戻ってしまって、っていう、何度も行ったり来たりする、っていうようなものをですね、このビル・マーレイに象徴させてるわけですけれども、結局、彼は自分の心の中に閉じ込もって、心を開いてなかったわけですね。それを「グラウンドホッグ」に例えてるわけなんですね。で、本当に、完全にオープンになって、世界ってものに対して自分を開かれた時に、「グラウンドホッグ」じゃ無くなった、ということなんですねえ。

     という映画が『恋はデジャ・ブ』なんですけど、全然『恋はデジャ・ブ』っていうタイトルと、全然違う映画なんですねえ。「永遠回帰」っていう、その、ニーチェの概念てのは、非常に判り難い概念で、何度読んでもよく判らなかったりするんですけれども、この映画を観ると一発でわかるという、ね。ニーチェもビックリ、という、ことが時たまありますね。これは、ホントはハリウッド製のコメディ・・ラブコメディですよ。それが、時にですね、哲学者達がこねくり回しても答えが出なかった、ニーチェの「永遠回帰」、ニーチェ自身も実は「永遠回帰」ってのは、アイデアとしては出てきてるんですけども、整理できてなかったんですね。どういったことを言いたいのか。・・が、この、わずか2時間ぐらいの映画で、見事に、語られちゃってるんですねえ。これはスゴイ、ことですねえ。そういうことが時々起こるんですね、映画では。

     ということで、『グラウンドホッグデイ』でした。ハイ。ということで、えっと・・・次週は頑張ります、ハイ。(笑)・・・みなさんも、メールをお寄せ下さい、ハイ。・・・だから、オレもね、結局、疲れてるとか、忙しい、ってことでもって、この更新をサボったりしますけれども、そういうことをしてるうちは、ダメ!なんですねえ。全力を尽くしてですねえ、今日やる!って決めたことはやらなきゃいけないわけですよ。明日は無いかも知れないんですよ。明日は来ないかも知れないんですよ。・・・ね。で、その人にお金をあげなかったら、もしかしたらその人は、実はその日に死ぬ人かも知れないわけですよ。目の前の人は。ねえ。・・・そういうことをいつも考えて生きようと思うんですけども(笑)、なかなか出来ない・・自分ですね、ハイ、スイマセン。

     ていうことで、あの・・・メールをお寄せ下さい。こんな映画の話、知ってますか?とか、こんな映画、タイトルがわかりません、とかですね、この映画のあそこはどうなってるんですか?とかそういう質問があったら、メールをどしどしお寄せ下さい!はい。えー・・・頑張って、えーと、その日は二度と来ないんだ、明日は二度と来ないかも知れない、と思いながら、え~、更新をサボらないようにします。はい!

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    こんにちは。たしか「たまむすび」か何かで『ザ・レイド』の紹介があったと思うんですけど、もし可能でしたらアップしていただけないでしょうか。最近DVDで鑑賞して面白かったので、是非町山さんの解説を読みたいと思いまして。出来ればでいいので、よろしくお願いします。
    訪問ありがとうございます。
    > こんにちは。たしか「たまむすび」か何かで『ザ・レイド』の紹介があったと思うんですけど、もし可能でしたらアップしていただけないでしょうか。最近DVDで鑑賞して面白かったので、是非町山さんの解説を読みたいと思いまして。出来ればでいいので、よろしくお願いします。

    リクエストありがとうございます。そうですね。『ザ・レイド』たまむすび2012年4月17日放送分で解説されてますね。早速、本日中にアップしておきますので、しばらくお待ちください。

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