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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『メリダとおそろしの森』(Brave) 長編アニメ賞ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    長編アニメ賞

    2012年6月26日『たまむすび』より

     今回、女の子向けのアニメなんです。ピクサーって映画会社は、ずっとアニメーションを作ってきて、もう12作目ってなるんですけれども、今回初めて、女の子が主人公のアニメです。ピクサーって、『トイ・ストーリー』(Toy Story)で始まるんですけれども、その後、『モンスターズ・インク』(Monsters Inc.)とか『カールじいさんの空飛ぶ家』(Up)とか、順番めちゃくちゃですけども(笑)・・・『Mr.インクレディブル』(The Incredibles)とか『WALL・E/ウォーリー』(WALL-E)とか『カーズ』(Cars)とかですねえ、ずっと作ってきたんですが、全部、男が主人公なんです。

     これは、理由がハッキリあって、ピクサーって会社がディズニーと徹底的に違ったのは、作り手の人達自身の持っているテーマを映画に盛り込む、っていうことをやってきたんです、積極的に。だから、子供のために話をでっち上げるってことをしなかったんですよ。作ってる人達は、30、40の、コンピュータグラフィックスをするアニメーターの人達ですけれども、その人達自身が個人的に抱えている問題を子供向けの話にしていく、っていう作業をするんです。

     僕はこれ、直接インタビューを何度も・・・って、ピクサーって会社は実は、家の近所にあるんです。僕は、引越す前はエミリービルっていうとこに住んでたんですが、家はピクサーの本社の真裏にあったんですよ。それでまあ、取材に行ったりしたんですけども、例えば、彼らの作り方ってのは『トイ・ストーリー』って話はおもちゃが主人公なんですね。おもちゃが喋ったりして、おもちゃの労働組合みたいな話なんですけども、おもちゃって子供を楽しませるのが仕事でしょ?。だからおもちゃの労働組合ですよ。それは、彼ら自身が、アニメーターとして、子供を楽しませるのが仕事だ、ってことを反映してるんです。子供を喜ばせること、子供を育てること、っていうのを仕事としてるから、アニメーターの仕事とおもちゃの仕事は同じだ、って考え方から、彼らの中に入って行くんですね、キャラクターの中に。

     で、もう一つは、親ですから、子供を抱えてる世代なんで、子供が生まれたばっかりで、まだ親になることに慣れてない。しかも自分達はコンピュータオタクでアニメオタクだから、そもそも大人になれてるんだろうか?ってとこが作り手側にあるわけです。『トイ・ストーリー』には、手探りで親になることを学んでいく、というテーマもあるんですよ。『トイ・ストーリー3』っていうのは、もう、そうやってたら子供が大きくなって、家を出て行ってしまう。おもちゃとしての仕事が終わる、と。で、今度は、親が子離れはどうやったら出来るだろうか?っていうテーマだったんですね。

     毎回それでやるんで、2つ良い点があって、作り手が子供のためにでっち上げた嘘の話じゃ無いんですね。ピクサーの人達、作ってる人達自身の個人的なテーマを描いてる、本当の話になる、ってことと、もう一つは、アニメーションてのは、子供向けの映画ってのはみんなそうですけど、親が連れて行くじゃないですか。親にも、心に迫るように作るんです。そうすると、「いや、良い映画だったね」となるから、またピクサーの映画に行く、っていうシステムですね。これは子供向け映画ではホントに大事なことで、子供向けでナメて作ると絶体失敗する、ってのはこういうことなんです。

     例えば『ミスター・インクレディブル』っていう映画があって、ピクサーが作った映画で、スーパーヒーローもののお父さんの話なんですけども、お父さんがスーパーヒーローだったのにスーパーヒーローを辞めて真面目にサラリーマンで働け、って言われて、どんどん精力が減退していく、って話なんですよ。

    山里亮太:え?そんな話だった?

     そうなんです。サラリーマンになって、どんどん男としての男性性が失われていくんです。それまではスーパーヒーローだったのに、奥さんの言う通りに真面目に働いてるんだけども、男としてのアイデンティティみたいなものが崩壊していく、って物語だったんですね。そういうことをちゃんと描いてるんです。だから酒飲んだりするシーンも出てきたりして、子供向けとしてはギリギリのとこまでやってましたね、『ミスター・インクレディブル』は。途中からまたスーパーヒーローにこっそりと戻るんですけども、一番先に変化が出るのは、主人公の男は奥さんに対してセクシーに戻っていくんです。男性性を取り戻すから。具体的に奥さんの尻を、撫でるシーンがあるんですよ。(笑)・・・それは、要するに、「今日、一発どうだ?」ってことですからねえ。

     そいういうこともあれば、『カールじいさんの空飛ぶ家』って話は、子供向けアニメにもかかわらず、年を取って奥さんを失ってしまった老人が、奥さんを失った後どうやって生きていくのか?って話をテーマにしてるんです。物凄い、大人のテーマですよね。

     そいうことをやってたピクサーが、じゃあ何故女性向けの物を作れ無かったのか?っていうと、これはハッキリ言って、女性がクリエータースタッフに、ほとんど居なかったから、シンプルにそういうことだったんですよ(笑)。個人的なテーマを描くから、・・・だから、女性がいないから女性向けの物は作れないわけです。まあ、何人かはいるんですけどね。今回は結局、女性監督を連れてくるって形をとりました。で、『カーズ』から参加して元ディズニーからずっと、『リトル・マーメイド』(The Little Mermaid)の頃からずっとやってきてる、ベテランのアニメ映画作家のブレンダ・チャップマンて人を連れてきて、その人に監督をさせてます、今回。

     ストーリーを話しますと、この『メリダとおそろしの森』っていうのは原題が『ブレイブ(Brave)』っていうタイトルなんです。『ブレイブ』ってのは「勇気」って意味ですけど、昔、メル・ギブソンが監督・主演した映画で『ブレイブハート』(Braveheart)って映画があったんですが、それは、イングランドに侵略されたりしてた、スコットランドって国を独立させようとした実際の男を主人公にした、映画だったんです。スコットランドっていうのは、イギリスの島の、上半分ですけども、元々イングランドとは別の国だったんです。

     でも侵略されたり統一されたりいろんなことがあって、それで最終的に、『ブレイブハート』って映画が公開された後に独立運動が凄く激しく起こって、ま、それまでもずっと続いてたんですけれども、今はスコットランドってのは、自治権を獲得して、まあ、独立した、みたいな感じに・・・昔は無かったんですが、今はスコットランドって国があるんです。グレートブリテンから自治権を獲得したんですけども、スコットランドって国はそういった国なんです。そのスコットランドが舞台の、10世紀のスコットランドを描いてるんですが、10世紀ってのはまだイギリスに侵略されてない時代の話です。

     それが舞台で、主人公はお姫様なんです。スコットランド王国のお姫様なんですけども、これはね、お姫様路線てのは、ずっとディズニーから続いてるんですが、昔、ディズニーっていう会社は一度ホントに潰れそうになった時期があるんです。1970年代の初めぐらいは、作品が全く当たらなくて、ディズニーは殆ど崩壊寸前だったんですよ。で、そこに入ってきたカッツェンバーグっていうプロデューサーの人がディズニーを蘇らせた作品ていうのがあって、それが2つの人魚姫物語なんです。

     1本は実写で作った『スプラッシュ』(Splash)って映画をで、それが当たったんですね。ニューヨークに人魚姫が来るって話です。もう1本は『リトル・マーメイド』(The Little Mermaid)、人魚のお姫様の話ですね。この2つでディズニーは蘇るんです。その後もずっと、プリンセス物でディズニーってのは蘇ってきたんですね。『美女と野獣』(Beauty and the Beast)であるとか、『ポカホンタス』(Pocahontas)であるとか、『ムーラン』(Mulan)であるとか、ずっとプリンセス路線、お姫様路線てのがあるんですよ。これでずっと当たってきたんですが、最近作られてなかったんですね。この間、『プリンセスと魔法のキス』(The Princess and the Frog)って映画が作られて、それは、実際のプリンセスじゃなくて、殆ど最近のアメリカの(笑)、ニューオーリンズを舞台にした話でしたけども。

     ピクサーはそれを、プリンセス路線ていう非常に儲かる、ドル箱の路線をやってなかったんです。どうしてプリンセス路線が儲かるかというと、おもちゃが売れるんです。日本でもそうですけど、魔法少女モノっておもちゃが売れるから続いてるんですよ。あれ、変身グッズとかあるでしょ。ディズニーの方は、お姫様のものが描いている、食器であるとか、まあ、そういったものをちっちゃい子、女の子がが買うんで、あれでメチャクチャ儲かるからお姫様路線てのはやんなきゃいけないんですけど、最近ずっとやってなかったんですよ、当たんなくて。

     久々にやることになったんですが、スコットランドの王国ってのは、実在する王国がモデルになってるんですけど、これ、アルバ王国ってのがあったんです。スコットランドってのは、いくつかの、クランて言われてる氏族が、すごい闘争を続けてて、なかなか統一されなかったんです。スコットランドの人達ってのは、1番パッと思いつくのって、スカート履いてるオッサン達ですが、あのスカート・・・バーバリーの柄みたいになってる、キルトってチェックの柄は全部その氏族ごとに模様が違うんです。それで、それ同士で激しく抗争をしてるんですね。非常に、『ブレイブ』っていう言葉通り乱暴な人達で、激しく、斧とかで戦ってるんですけども、それを少しづつ統一していって、スコットランド王国ってのは出来たんですね。

     で、統一する際にどういうことが行われたかっていうと、やっぱり政略結婚なんですよ。お姫様と王子様を結婚させていく、っていう、日本の戦国時代と同じです。どんどん結婚させてなきゃいけない、と。それでこの、主人公のメリダ姫も、結婚しろ、って言われるわけです。

    国を1つにするために。ところが、このお姫様はそれがイヤなんです。メリダ姫はそういったものに興味が全然無いんですね、男の子とかに。この子が大好きなのはで、馬に乗って弓矢を撃ちまくることなんですよ(笑)。流鏑馬(ヤブサメ)みたいなことが好きな主人公。流鏑馬好き少女、「ヤブサメ少女」ですね(笑)。

     とにかくそれにしか興味が無いんですけど、、そのお母さん、お母さんだからクイーンですが、女王はで「そんなことやってる場合じゃないの!」、「アナタには責任があるの」と。「お姫様なんだから、国のために結婚しなさい」って言うんですけど、それでだんだんお母さんと仲が悪くなってくるんです。で、婿取りの儀式になって、いろんな種族の婿さんが婿候補として来るわけです。力比べをするんですけど、これ、本当にスコットランドの人達って昔から力比べをするんです。大きな丸太ん棒を持って、投げたりするんですね。どの位飛ぶか、とか。これは今でもやってますから。コレもう(笑)・・・今でも、何千年もやってて、今テレビで放送したりしてます、コレ。丸太投げとか、大きい石をどの位持ってて歩けるか、とか(笑)・・・そんなことずっとやってんですけど(笑)。これ、テレビで放送してるのを、よく、見れますけど。毎年1回ぐらいやってますが。

     で、それをやって婿を選ぶ、みたいなことになるんですね。その時に、競技で弓矢をやろう、ということになるんですが、このメリダってお姫様は、弓矢の競技の中に自分が出て行っちゃうんです。自分で「パンパンパンパーン!」と連続打ちでもって全部真ん中を射抜いて、その婿さん候補達に大恥をかかせるんですよ。カッコイイんだけど、これ政治的にとんでもない行為なんですね(笑)。だって、いろんな種族の和平を結ぼうとしてる時にこういうことをやってるわけですから。

     でもう、お母さんからメチャクチャ怒られて、「アンタ最低だ!」とそれで家出しちゃうんですね、怒られて。そうしたら、森の奥に魔女がいるんです。これ、スコットランドの話で、結構日本の人で良く解るのは、『マクベス』(Macbeth)っていうシェイクスピアの話がありますが、あれはスコットランドの王様の話なんです。あれは魔女がいっぱい出てくるじゃないですか。でっかい鍋でグツグツグツグツ、なんかヘンな薬とか煮てたりするじゃないですか。あれってのは、スコットランドってのは、キリスト教が入ってくるのがすごく遅れて、元々の土着宗教を信じてたんですね。それは、呪いとかまじないとかも入ってて、当時の魔女ってのは、いわゆる民間の療法みたいなのをやってる、お医者さんだったんです。漢方薬みたいな物を作ってたんです。そこにメリダが行って、「お母さんに困ってるの」って魔女に言うわけですね。「お母さんを、なんとか変えて欲しいの」って言ったら魔女が・・・「ある物」を渡して、お母さんが「ある物」に変わってしまう、と。それで大変な事態になっていく、っていう映画なんです。魔女は怖いですけどね、この映画に出てくる魔女は結構可笑しいんですが。

     この映画が面白いなと思ったのは、もうホントにお姫様物ってのは昔からどんど変わっていったな、と思うんですね。『リトルマーメイド』で始まったディズニーのお姫様路線て言いましたけど、その前にも『白雪姫』(Snow White and the Seven Dwarfs)とか『シンデレラ』(Cinderella)であるとか、『眠れる森の美女』(Sleeping Beauty)とかあったわけですけども、どのお姫様も、寝てて王子様にキスされるだけなんですよ。寝てるだけ、寝てるんですから、受け身、超受け身ですよ!『シンデレラ』とかも選んでもらうわけでしょ?自分は何もしないわけですよ。もう、それがどんどん変わってってるんです。『リトルマーメイド』の頃も結局、王子様が活躍するんですけど、『ポカホンタス』も、結構受け身で、でも、戦争をやめさせたりして、このへんからどんどん変わってくるんです。『ムーラン』だと、中国が舞台ですけど、女の子なんですが、武装して鎧を着て、男として戦場に出るんです。『プリンセスと魔法のキス』だと、王子様は出てくるんですけども、ただの女ったらしの役立たずなんですよ。プリンセスの方が一生懸命働くんです。だから、どんどんどんどん、ディズニー系列のお姫様像が変わってきてるんです。これは現代っていう時代に合わせて変わってきてるんですけど、今回は完全に、男よりも強いお姫様、っていう話になってるんです。

     実際、待ってるだけの女の子が出てきて、それを親が「この人みたいになりなさい」って言うのはおかしいですからね。最近日本では公開されてる『スノーホワイト』(Snow White & the Huntsman)なんて白雪姫の話なんですけども、あれ、白雪姫が鎧を着て戦場に出ますからね。

     時代はどんどん変わっていって、このメリダはホントのテーマは母と娘の葛藤なんですよ。是非これは、娘さんを持つお母さんは、一緒に観に行くとその後の会話とかも、非常に深いものが出来るんじゃないかと思います。これはもう、母、娘、で是非観ていただきたいですね。この娘がホントに生意気で、反抗的で、どうしようもないんですねえ。「ごめんなさい」を言えない女なんですよ。「アイム・ソーリー」が言えなく大変な事態になっていく、という点で、ウチの娘もその辺は観てらんなくて、目を半分隠しながら観てましたよ。「観てらんない、これ!」・・・自分にいろいろ跳ね返ってくるものがあったんだと思いますが。前の日に「宿題しない!」、って怒られてたし、それとか思い出し「あー!観てらんない!アタシだ、これ。」とか思いながら観てたと思います。

    赤江珠緒:親近感はものすごく近いお姫様かも知れないですね。

     いやもう、どこにでもいる(笑)、女の子の話だと思います。リアルになってきてますね。是非、娘さんがいる家庭は、是非観ていただきたい、と。これ、CGで作られた、赤毛の巻き毛の動きもスゴイですから、その辺も注目してください。これ全部CGとは信じられないですよ。スゴイ赤毛のくるくるがコンピューターで計算して全部動いてますから。

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