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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『ザ・セッションズ』(The Sessions) 助演女優賞ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    助演女優賞   ヘレン・ハント
    

    2012年10月9日『たまむすび』より

     今月は、もう10月に入ったんで、10、11月12月に公開される映画はアカデミー賞狙いなんですよ。早くもそのレースに入るだろうと言われている映画で『ザ・セッションズ』(The Sessions)というタイトルの映画を紹介します。セッションていうのは、これ日本語にしにくいんで難しいですけど、カウンセラーの人に会ったりするのはSessionですね。JAZZとかのセッションでも言いますけれども、精神分析医の人に会ったりするのをこの場合、Sessionと呼んでいるんです。

     この映画は実話です。僕がこれにちょっと注目したのは、これ、うちの近所の話なんですよ。僕が住んでるバークレーが舞台で、ロケもバークレーでやってて、映画見てると近所ばっかり映ってて変な気持ちになる映画だったんですけども。そこに、バークレーに住んでいた、エッセイとかコラムとか詩を書いたりする、マーク・オブライエンさんという人がいたんですね。その人の自伝の映画化です。

     このマークオブライエンさんて人は、いわゆる日本で小児麻痺と言われていたポリオにかかっちゃった人なんです。ポリオっていうのは、筋肉が筋ジストロフィーみたいな感じで萎縮して動かなくなっちゃうんです、麻痺して。足だけだったりする人とか、いろんなところ、やられる場所がみんな違うんですけど、これは感染症で子供の頃に感染してかかっちゃう病気なんですね。

     ワクチンが出来ていっぺんに減ったんですけれども、この人自身は1999年に49歳だった人で、このオブライエンさんが子供だった頃には大流行したんです。そのぐらいの年齢の人は日本でもすごくかかった人は多いんですけども、この人は首から下がほとんど動かなくなっちゃったんですね。特に厳しいのは肺だったんです。肺を膨らませたり縮めたりして息を吸う筋肉の部分が萎縮して麻痺しちゃったんで自分で呼吸できないんですよ。

     それで鉄の肺というのに入らなければならなかったんです。鉄の肺というのはドラム缶を横にしたみたいな形のもので、そこに首だけ出して入るんですよ。その鉄の肺の中の空気を抜いて圧を抜くと、中に入っている人の肺が膨らむと。それで強制的に呼吸をさせる機械なんですね。この人は6歳の時にポリオにかかってから、それに入ったまま40歳になろうとするんです。その状況で口に棒を咥えて、パソコンを使って、詩を書いたりコラムを書いたりして生活するようになるんですよ。

     この人、オブライエンさんがスゴイのは、鉄の肺に入った人達っていうのは動けないですから、やっぱり病院とか施設の中で暮らしていく形になるんですけれども、この人は絶対にそれが嫌だったんで、親からも離れて、病院からも施設からも出て一人でアパートで暮らしているんです。これはすごいなあと思って・・物凄くインディペンデントな、自立心のある人なんですね。福祉にも完全に頼りたくないってことで、そうやって物書きとして生活しようとするんですよ。でも、どうしても解決できない問題ってのが出てくるんです。それはやっぱり恋愛なんですよ。

     身体とかは洗ってもらってるんですね、ソーシャルワーカーの人とかに頼んで。身の回りの世話をしてくれる人を頼んで雇って、その人に身体を洗ってもらったりしてたんですけども、そのやってくれてる女の人を好きになっちゃうんですね。で、結婚して欲しいみたいな話をすると、「いや、私、ちゃんと彼氏がいるから・・」って断られて、知り合おうとしてもなかなか知り合えないんですよ。これは1990年代半ばなんでまだそんなにパソコン通信が流行ってないんです。インターネットとかまだまだなんですよ。今だったらもっと可能になってるんですけど、そこまでいってない時代なんですね。

     誰とも接触できない、という感じになってくるんです。どうしても寂しくて寂しくてしょうがないってことで、カウンセラーの人に相談してるうちに、セックスサロゲートというものが存在するっていうことがわかってくるんですよ。サロゲートっていうのは、代理っていう意味で、例えば、誰かの代わりに妊娠して子供を産んだりする人をサロゲートマザーって言うんです。このセックスサロゲートって言うのは恋人の代わりをする仕事の人なんです。

     これは、日本にもあります。アメリカでまず始まって、カリフォルニアでは、ちゃんとした職業として認可制度になってるんですよ。ちゃんとした心理学のテストを受けてライセンスを取ってやるんです。で、そういう人が必要な人達っていうのは、身体障害者の人ですね。ずっと恋人がいなかった人、スキンシップを求めている人、セックスの体験を求めている人とか、あと、身体障害がなくても、物凄く内気で、人と接触することがどうしてもできなくて、女性とか異性とね。40ぐらいまで童貞のままだった人とかもいるんです。そういう人もセックスサロゲートにお願いするんですね。心の壁みたいなのを作っちゃった人がいるんで、それを打ち破るために。

     何年か前に『40歳の童貞男』(The 40 Year Old Virgin)って映画が公開されたんですけど、これは全米で大ヒットして日本でも結構ヒットしたんですが、それがセックスサロゲートに来る患者さん達にリサーチして作られた映画だったんです。すごく人当たりも良くて顔も悪くなくて、男同士の友達とかすごくいっぱいいてスポーツもできたりするんだけれども、女性だけはなんとなく遠ざけていくうちに40になっちゃった人ってのは結構いるんです。そういう人が童貞を失うまでの映画っていうのをサロゲートの人達の調査を利用して作ったりしてるんですけれども、今回は完全な実話なんですよ。オブライエンさんはセックスサロゲートの人に会うんですけれども、少しずつ、(笑)童貞喪失に向かって行くという物語なんです。

     これ、いきなりはできないんですね。このオブライエンさんは身体を洗ってもらったり服を着替えさせてもらえる以外に、人に触ったり触られたりした経験が無いんですよ。まずそこから始めなきゃならないんです。あとやっぱり、普通にデートをしたこともないんで、そういったことから少しずつ教えて手ほどきをしていくんですよ。

     この映画、出てくる人が実在の人物で全部実名なんですけど、セックスサロゲートの人っていうのは、シェリル・コーエングリーンさんていう人で、映画ではヘレン・ハントさんていう女優さんがが演じてます。このヘレン・ハントさんはアカデミー主演女優賞をとっている人なんです。そのひとがこのシェリルさんを演じて、既に40ぐらいで旦那もいて子供も2人いる人なんですけども、職業としていろんな人達の童貞を世話してるんですね。日本ではこういう人達はセックスボランティアっていう言葉とかで言われてます。あと、日本にはちゃんと、そういった身体障害者の人達のためのデリヘルもあるんです。だから、治療行為としてやってるんですね。

     このシェリルさんに会って、ただ、一つ条件があるんです。カリフォルニアの認可制度において、6回だけしかセッションはできないんですよ。だから「セッションズ」っていうタイトルなんです。その6回のセッションの話なんですよ。

    赤江珠緒:それはなんで6回とかって決められてるんですか?

     これは、ダラダラやっていったら売春と違いが無くなっちゃうから、というのともう一つは、それ以上やっちゃうと心と心の関係になっていくから危険だということもあるんです。まず身体の接触において相手をリラックスさせないと、相手は触られたこととか全然無い人ですからね。で、優しい会話とかそういったことから始まっていくから、これは当然、身体だけじゃなくて心と心の関係になっていくんですよ。これって立ち入っちゃうと危険なことに入っちゃいますよね?だってこれはお医者さんなんだもん、相手の女の人は。でも、触られてる方は好きですってなっちゃったら大変なことでしょ?でも、もう一つの問題は好きじゃないとできないんですよ。だって、こいつ大嫌いって思う人に触りたくないじゃん、触られたくないじゃん(笑)。お医者さんも、この人はいい人だって思わないと治療できないですよね。で、相手もそうだからこれはもうすごい綱渡りですよね。これは物凄く難しいんですよ。

     もう一つ難しいことがあって、この人、オブライアンさんは手も動かないから、オナニーもしたことがないんです。なんにもしたことがないんですよ、できないから。で、エッチしたこと無いから、触られただけで・・・暴発しちゃうわけですよ、今まで経験無いから。でも元気だからすぐに、まぁ、かい、回復するんですけど(笑)って、ナニを言ってんだか俺は!(笑)・・ただそれも限界があるじゃないですか(笑)

    赤江珠緒:え?町山さん、それも一回とカウントされるんですか?

     いや、会うのが一回なんですけど。一回会ったって、そりゃ何発もできないじゃん!て、何の話だいったい!(笑)そんなねえ、精力絶倫の男じゃない限り(笑)。だから、だんだん回数が無くなっちゃうんです。で、なかなかゴールできないわけですよ。だからいろいろ考えるわけです、2人で。どうしよう、どうしたらゴールできるだろう?と。じゃあ前戯をちゃんとすると興奮してイッちゃうからなるべく前戯なしでやりましょうとか、いろんなことを言うんですけど(笑)・・何の話だっていう・・・これ、実話なんですけどセッションのところは完全にコメディーです。「うわっ、ダメだ!」とか、「あ、また!」とかそういう(笑)。

    山里亮太:そうか、重い話じゃないんだ!

     そうなんですよ、重い話じゃないんです。爆笑ですよ。映画館とかも大、爆笑でしたね。あと、手に汗握るんです。もうちょっとだ、ガンバレ!!みたいな感じで、ロッキーじゃないですけど。やっとできると、『ゴ~~~~~~~ル!!!』(笑)みたいな感じですね。なんだかよくわからないものになってますよ、途中から(笑)。スポーツ映画のような。

     でも、やっぱりいろいろと深いことを考えさせるんですよ。人間は身体を接触させているだけで、やっぱりそれは愛につながっていくんですよね。愛が先になくても、互いの身体をいたわり合ったり触り合う事によって愛が育っていくと。この触り合うってことがいかに大事なのかっていうことであるとか、あとはやっぱりだんだん本気になっていっちゃうんですけども、お互いにどんどん苦しくなっていく。で、主人公のオブライエンさんは「こんなだったらやらなければ良かった」って思ったりするわけです。だって、知らなかったんだもん、恋の苦しみを。知ってしまったらもっと辛くなるわけですね。

     その辺がせつない話とかになっていて、しかもこのオブライエンさんは首だけしか動かないんですが、それを演じているジョン・ホークスさんていう人は、全く知られていない俳優ですけれども、首から上だけの演技でこのいろんな今言った切なさとかおかしさとか、それを演じきっているんで、まあアカデミー主演男優賞ノミネートは確実だろうと言われてます。とにかく演技が首から上だけですから。すごい演技力ですよ。それでしかも笑わせてるし。

     映画としては何年か前にアカデミー賞をとった『英国王のスピーチ』(King's speech)にちょっと似ています。あれも実話で、イギリスの王様が、吃音ていう障害を抱えててそれを克服するまでの物語をロッキー風に描いてましたけども、しかもそれは脚本を書いた人が自分自身が吃音だったんで、その障害を克服した話を調べてるうちに書いた脚本なんですよ。で、この『ザ・セッションズ』って映画も監督は自分自身ポリオだった人なんですね。現在も両足が不自由で松葉杖なしでは歩けないってことでもって、自分の気持を込めて作った映画がこの『ザ・セッションズ』なんです。

     オチは言いませんが、非常に感動的で、どんな人でも元気になるし、いろいろ身体に不自由がなくても女性とか面倒臭いとか思ってる人でも是非見たほうがいいですね。こんなに障害を抱えててもチャレンジした人が、男がいるんだってことですね。僕の友達の枡野浩一君とかもう女性とか懲り懲りだとか、もう生理的に全くダメだとか言ってますけども、何を言ってんだバカ野郎!と思いました。人生一回だから、人間チャレンジしなきゃダメだよという(笑)、笑えて泣ける、童貞映画『ザ・セッションズ』、はい、日本公開を期待しています。

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