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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『フライト』(Flight) 主演男優賞 脚本賞ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    主演男優賞   デンゼル・ワシントン
    脚本賞     ジョン・ゲイティンズ
    

    2012年10月30日『たまむすび』より

     今週は、デンゼル・ワシントン主演の『フライト』(Flight)という映画を紹介します。『フライト』というのは、飛行機ですけれども、これ、デンゼル・ワシントンという俳優が旅客機の機長を演じる映画です。2009年に飛行機のエンジンに鳥が入っちゃって、エンジンが爆発して、ニューヨークのハドソン川に不時着して、乗客が助かったっていう事件がありましたよね?ま、すごい機長だってことで、あれ、サレン・バーガーって機長がアメリカの国民的英雄になったんですけれども、この『フライト』って映画はそれをすごく彷彿とさせる話なんですね。

     で、マイアミだかな?・・フロリダかなんかからジョージアに向けて飛ぶ飛行機の機長がデンゼル・ワシントンで、55過ぎで超ベテランのパイロットと。このデンゼル・ワシントンて人は、黒人の俳優さんですけれども、すごく頼りになる男ばっかりを演じてきてる人なんです。この人自身、牧師さんの息子さんで、本人も非常にインテリで真面目な人なんです。ハリウッド俳優には珍しく、離婚とかしてない人なんですけど(笑)・・悪い噂が全く無い人ですね。暴力事件とかいろいろ起こしてない珍しい人なんですよ!はい(笑)

     役柄も「立派な軍人」とか「弁護士」とか、そういう、堅い真面目な男の役ですね。正義に燃える男とかそういう役が非常に多い人です、デンゼル・ワシントンは。だから、この「機長」っていうと、まあピッタリなんですけども、その人が飛行機に乗って飛び立ったら、突然飛行機が、急降下を始めちゃうんですよ!。尾翼のところの安定版がコントロールできなくなって、いきなり急降下な状態になっちゃうんですね。

     乗客は満員なんですけども、真っ逆さまに、ものすごい高高度から、地面に向かって突然落ち始めるんです。これ、物凄く怖いんですけど、それをデンゼル・ワシントン機長は、もう「あっ!」と驚く方法で切り抜けるんです。どういうふうに切り抜けるかって、詳しくは説明しないんですが、これは予告編でも出てくるように、上下ひっくり返ります!飛行機が。上下反転した状態で、地面との激突を切り抜けるんですよ。

     これは、実際にあった事件なんです。2000年1月に、アラスカ航空の飛行機が突然、やっぱり墜落を始めて、地面に激突寸前で機長が立て直して、その後飛行機が上下反転した状態で飛び続けたって事件があったんですよ。これはもう、乗ってる人達は地獄だったと思いますけど(笑)。ただ、そのアラスカ航空の方は、そのあともコントロールができなくなって、結局機長が一生懸命立て直してるのにもかかわらず、墜落しちゃったんですけれども・・・こっちの方は、そのまま上手く不時着するんです。

     乗客は殆ど死なないで救ったんで、デンゼル・ワシントン機長がもう、英雄になっちゃうんですね。「これはすごい!天才だ!」ってことで。しかも、航空会社とかがいろんなパイロットの人に全く同じシュミレーションをさせるんですけども、誰も助けられないんですよ。だからこれは、デンゼル・ワシントンだけが奇跡的にって言うか、天才的に、乗客を救う能力があったってことなんですね。「これはすごい!」ってことでマスコミがば~って殺到するんですけれども。

     航空会社の弁護士が、機長のとこに行くわけです。で、表彰されたり、褒めてもらうのかな~?って思いますが・・そうじゃないんです。その弁護士が、デンゼル・ワシントン扮する機長に、「え~、機長、素晴らしい操縦でした。・・ただ、アナタの血液の中には大量のアルコールがありました。」って言うんですよ。「あなたは完全に泥酔した状態でしたね。」と。「それだけじゃない。・・大量のコカインも発見されました。」って言うんですよ。泥酔した状態でコカインを大量に吸って、「ハイになった状態で操縦してましたね!」って言われるんです。

     大変なことになるんですよ。「もしこれが、これから運輸安全委員会の方で調査があるけれども、この事実が発覚したらあなたは多分、無期懲役です。」、「何故ならば、反転した状態で飛んでいる時に、何人かの人、乗務員が死んでいるので、あなたは無期懲役です。」って言われるんです。え~?!って感じでしょ?このあと実は、デンゼル・ワシントンは大変追われるわけです。

     デンゼル・ワシントンはアル中、いわゆる「アルコール依存症」だったんです。で、飛行機に乗る直前まで酒飲んでて、しかもエロいスッチーとやってて(笑)・・・しかも、泥酔した状態で飛行機に乗ってるから、「気合い入れなきゃ!」っつって、コカインを「ガー!」っと吸ったとこだったんですよ。しかも、やっぱりもっと飲みたいな、ってことでもって、飛行機を操縦している最中に、いわゆるウォッカのミニボトルを、3本も空けてるんですよ、この人!とんでもない奴なんですよ。

     デンゼル・ワシントンてのはすごく真面目で、「頼りになる男」、実直で「正義の味方」っていう役が表側であるんですけど、デンゼル・ワシントンには「裏デンゼル」がいるんです。「裏デンゼル」ってのは、もんのすげ~悪くて強いヤツなんですよ。

     デンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞を取った映画ってのは『トレーニング デイ』(Training Day)って映画なんです。これは、デンゼル・ワシントンがロサンゼルス警察の刑事、麻薬捜査課の刑事を演じるんですけれども、もんっのすごい悪い刑事なんです。そこに、イーサン・ホークっていう白人の俳優が演じる、若手の新米警官が弟子入りするんです、デンゼルのとこに。すると、「我々は麻薬捜査官だ。」、「麻薬を知らなきゃダメだ。」と。いきなり、「マリファナを吸え!」って言われるんですよ。

     「よくわかんないんだけど、言われたからそういうモノなのかな~?」と思って吸うと、クラクラっとくるんですよ。「これ、ただのマリファナじゃないですよね?!」って言うと、「そこにはPCPっていう幻覚剤が入ってるよ、キクだろ~?!」って言うんです。もうめちゃくちゃなんですよ。しかもデンゼル・ワシントンは、麻薬を取引しているディーラーの所に襲撃をかけるんですけども、その犯人をいきなり殺しちゃって、麻薬で儲けたその金を、全部パクっちゃうんです。ドロボウしちゃうんですよ。

     それで、イーサン・ホーク扮する新米警官が、「それ、犯罪ですよ!」って言うんです。「僕は許せません!」「これ、告発します!」って言うと、「お前さっきPCP吸ったじゃん。」つって、「それ、バラしちゃうよ」って言うんですよ。モンのスゴイ悪いんですけど、ただあまりにもワルすぎて、なんかスゴイ人間に見えてきて、そのイーサン・ホークが尊敬せざるを得ないって感じになってきて、どんどんどんどん取り込まれていくっていう、宗教みたいな感じですね。それが『トレーニング デイ』っていう恐ろしい映画だったんですけども、なんていうか、一種のカリスマを持つワル、刑事を演じてデンゼル・ワシントンはアカデミー賞を取ってるんですね。

     だから普通の悪役じゃなくて、この人が悪役をやると物凄いカリスマ性があるんで、スゴイ怖いんですよ、チンケな悪役じゃ無いんで。悪の魅力に周りが引きずり込まれるみたいな感じの役をやるんです。この『フライト』のデンゼルは、まあ物凄く悪いんですけども(笑)、どう悪いかって言うと、とにかく酒を飲みまくるんです(笑)。この映画、アメリカでは子供が見れない指定になってるんですけども、普通子供が見れない指定の映画っていうのは、暴力シーンが酷いとか、エッチなシーンがあるとか、言葉が汚いっていう理由なんですけども、この映画は、とにかく酒を飲みまくるから子供にみせられないっていう・・・(笑)

     自動車を運転する時に、アメリカには取っ手付きのものすごいでっかいペットボトルがあるんですね、2リットル入りのウォッカってのがあるんですよ。それをいきなりラッパ飲みするんです。「グビグビグビグビグビ!」って・・・(笑)それで、車を運転してんですよ。それは無いだろという・・・(笑)。

     で、航空会社の方が「もしアンタが泥酔状態だったことがバレたら、我々も処分されてしまう・・」、「大変な事件になる・・」と。だから、せめて、運輸委員会の公聴会があるから「それまでに酒を抜いてくれないか」と。この事件を「我々は、もみ消すから・・」と。血液に入ったアルコールの診断書とかも、裏から手を回して全部破棄するから、酒を抜いて、酒をのんでたってことを「全部隠してくれないか。」って言われるんですね。航空会社から。でも、抜けないんですよ。追い詰められてるからますます飲んじゃうんです。

     それだけじゃなくて、隣に座っていた子パイロット、副操縦士ってのがいるんですが、横にいて明らかにこの人が酔っ払ってることに気付いてたんですよ。だってこの人、ただ飲んでるだけじゃなくて「イエ~イ」みたいなことを言ってたんです。「なんとかちゃん、イケてるぅ~?」とか言ってたんですよ!「ノリノリ~」とか(笑)。で、真っ青な顔をしてたんですけど、その人は飛行機が墜落した時に昏睡状態になってるから、証言できないんです。「ラッキー!」と思ってたら、どうも昏睡から目覚めそうなんです(笑)。しかもその、バラバラになった飛行機の周りを調査委員会が探してたら、乗務員しかタッチできない場所から、ウォッカの空瓶が発見されていくんです。どんどん、どんどんどんどん追い詰められて行くんですね、デンゼル・ワシントンが。

     ・・っていう、「どうすんの?これ・・」「これ、映画としてちゃんと終われるの??」みたいな映画なんです。「どうしようもないんじゃないか?これ?」って思うんですけど、もう、あまりにも酷いから、見ててめちゃくちゃ可笑しいんですよ。だって、飛行機に乗っていきなりウォッカ飲んじゃうんですけど・・・・飛行機の操縦をしている最中ですよ?!これって、乗ってる人にとっては最悪の悪夢ですよ!

     こんなに嫌なことは無いですけど・・、アメリカでこの何年間で次々と酒酔いパイロットが発覚してるんですよね。すごい、みつかってるんです。乗る直前とかに見つかって・・・逮捕されたりしてるんですよ。まだ乗ってないから良かったんですけど、ロシアではこの間、泥酔した操縦士が乗ってた飛行機が墜落して、死体をチェックしたら、大量のアルコールが発見されたのかな?ヨーロッパでは2機ぐらいパイロットの泥酔で、酒酔い運転で墜ちてるんですよ。だからこれ、冗談じゃなくてホントに起こってることなんで・・・・・も~のスゴイ怖いんですよ(笑)怖すぎて笑っちゃうっていう、不思議な映画ですね。あんまり怖いと人って笑うじゃないですか。そういう笑いなんです。ゾ~っとする笑いなんですよ。

     監督がロバート・ゼメキスっていう監督で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(Back to the Future)とか『フォレスト・ガンプ/一期一会』(Forrest Gump)を作ってた人なんですけども、最近は10年ぐらいアニメーションをやってて、ちょっと失敗して会社潰しちゃって、僕の知り合いが勤めてた会社なんですけども(笑)、ちょっとスランプ気味だったんですけれどもこれで見事に復活して、すごくなんていうか、困った映画を作っちゃったなっていう感じなんですね。

     デンゼル・ワシントンはもう、凄まじいアル中演技で多分、これはアカデミー主演男優賞ノミネート確実だろうって言われてます。お尻まで出して頑張ってますけど。

     で、こういう内容で、どうオチるのかと思ったら、最後は感動で終わるんですよ!最後、非常に感動的に終わります!この映画。涙なくしては見れない形で終わります。これ、アクロバットですよ!まさか、ここでこういうふうに着地するとは思わなかったです。まさにこの機長とおんなじ、奇跡の着地を成し遂げた映画がこの『フライト』ですね!もう、見事だなと。シナリオライターも上手いなあと思いましたね~。笑わせてゾッとさせて、最後は泣かせるという・・・・はい。

    赤江珠緒:デンゼル・ワシントンさんも幅広い役ができるんですねえ・・・・

     幅広いですよ~(笑)。この人、イイ体してる人なんですけど、今回は酒飲みまくりの役なんでデロデロに太った体で出てきますね。そういうなかなかスゴイ映画で3月公開ですけども、飛行機が怖い人は見ないほうがいいと思います。もう、大変ですよ、これ(笑)ノイローゼになりますよ・・
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