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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『愛、アムール』(Amour) 作品賞 外国語映画賞 他計5部門ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    作品賞  外国語映画賞
    監督賞     ミヒャエル・ハネケ
    主演女優賞   エマニュエル・リヴァ
    脚本賞     ミヒャエル・ハネケ

    2013年1月15日『たまむすび』より

     「アムール」ってのはフランス語で「愛」ですけども(笑)、なんか繰り返してるだけ(『愛、愛』)なんですけど、今回その『愛、アムール』について紹介したいと思います。

     ミヒャエル・ハネケという監督の映画なんですね。で、このハネケっていう人は、ホントウに嫌な、映画ばっかり撮ってる人なんです!観た後もう、ムカムカする映画なんですよ。観てる最中も。最後まで観てられない、っていう・・・。例えば『ファニーゲーム』(Funny Games)って映画で、これが1番有名な映画なんですけども、これは、のんびり暮らしてる、結構金持ちの一家に、突然2人の男が入って来て旦那さんをボコって。・・・で、奥さんと子供とかをみんな監禁して、散々いたぶって殺す、っていうそれだけの話しなんです。それをしかも『ファニーゲーム』つって、ヘラヘラ笑いながら「楽しいでしょ?!」って言いながらやるんです。もう、観てられないんですよ、酷くて。

     それが『ファニーゲーム』で、これで世界をビックリさせたんですけども、他には、『隠された記憶』(Cache)って映画がありまして、これはフランスが舞台なんですけども、やっぱり結構金持ちの良い家の、フランス人の家庭がある、と。そこに突然、その家を隠し撮りしたビデオテープがが送られてくるんです。それで、どうもこの家に侵入してる奴がいるらしい、ってことで、それを探っていく内に、その家の旦那さんが、昔、自分の所で働いてたアルジェリア人の子供を、酷いことをして、酷い目にあわせた、ってことが段々暴かれていく、ていう話なんです。アルジェリアってのは第二次大戦後まで、フランスの領土、植民地だったんですけども、だからアルジェリア人てのは、結構フランスに住んでるんですね。日本と韓国の関係みたいなもんなんです。その人達に対する差別とか、そういったものがえぐられていく、という、で、最後、家庭がめちゃくちゃになっていくんですけども(笑)・・・それが『隠された記憶』。見たくないものを見せる監督なんですね、この人は。

     

    『白いリボン』(Das weise Band ? Eine deutsche Kindergeschichte)ていう映画はドイツが舞台で、すごく厳しく、厳しく、子ども達を教育してる村があって、あまりにも厳しく教育された子供達は、間違ったものが嫌いになって、真っ直ぐに正しいもの以外はダメだ、っていうふうに粛清を始めるんです、そうじゃない人達を。で、身体障害者とかを殺し始めるんです。頭が可怪しくなってきて、その子供達が・・・・。ナチみたいになっちゃうんですね。ミヒャエル・ハネケって人はドイツ人なんですけども、そういう感じで映画を撮って、ヨーロッパにある、嫌なこととか見たくない物をどんどんエグッていく監督なんですね。『ピアニスト』(La Pianiste)っていう映画では、ピアノの先生なんですけれども、「変態」、の女の人が出てきて(笑)・・・人のセックスを覗き見しながらオシッコを漏らしたりするんですけども(笑)・・・そういう映画ばっかり、撮ってる人なんですよ!

     もう、嫌いな人は物凄く嫌いな人なんですよ、このハネケっていう人は。「この人の映画は二度と見たくない!」とか。それぐらい言われてる人なんですけども、今回の『愛、アムール』は「ハネケにも心があったのか!」とか、「ハネケの映画を観て初めて感動した!」とか「泣いた!」とか言われてる感動的な映画で、アカデミー賞の、非常に有力な候補になってるんです。フランス映画にもかかわらず、作品賞の可能性も出てきてるんですね。

     どういう話かって言うと物凄くストレートで、80才過ぎの夫婦がいまして、元ピアノ教師なんですけれども、2人とも。旦那さんが奥さんとご飯を食べてると、奥さんが突然、何か話しかけても何にも言わなくなっちゃうんですよ。「怒ってるのかな?」と思って、いろいろ「どうしたの?どうしたの?・・・お前、どうしたの?」って言っても何にも答えないんですね。動かなくて。突然、奥さんが「え?どうしたの、あなた?・・・何かあったの?」とか言うんです。止まっちゃったんですね、奥さん。それから段々、麻痺が始まっていくんですよ。この映画は、その夫婦2人のいわゆる「老々介護」みたいな、旦那さんが奥さんを、介護していくんですけども、それをアパートの中から一歩も出ないで、ただ介護だけをず~っと見せていく映画なんです。しかも凄いリアルで、いわゆる「下の世話」であるとか、床ずれしてクリームを塗るとか、そういったところをただ緻密に見せていく映画なんですね。

     旦那さんを演じてる人は、ジャン=ルイ・トランティニャンていう俳優さんなんです。この人は日本では物凄く有名な俳優さんなんです。1966年にクロード・ルルーシュ監督の『男と女』(Un homme et une femmeっ)ていう映画の主役だったんですね。『男と女』ってのは日本ではモンの凄い大ヒットしたんですよ。主題歌が「ダバダバダ、ダバダバダ、・・・」っていう・・・有名ですねえ!ギャグにまでなってますけど、いろんな・・・コントとかに使われてる、「ダバダバダ」の、映画なんです、『男と女』は。で、レーサーの役を演じたのがトランティニャンで、この人自身がレーサーだったんですけど、この人がもう、現在82、3歳になってで映画に出てきて、奥さんの方の人も、凄く日本では有名な女優さんなんですね。 奥さんの女優さんは、エマニュエル・リヴァって人がだんだん麻痺していく奥さんを演じてますけども、この人はあの『ヒロシマ・モナムール』(Hiroshima, mon amour)っていう映画の、主演女優なんですよ。

     これ、1959年の映画なんですけども、フランス人女性が原爆を落とされた広島に来て、被曝の非常な惨状を見て心に傷をおって、しかもそこで、家族を失った日本人の男の人、この人は大映の俳優さんの岡田英次さんが演じてますけど、その人と恋に落ちるんだけれども、2人とも心に傷を背負っていてそれで愛し合えるのだろうか?っていうドラマが、『ヒロシマ・モナムール』。これ、「アムール」ってのは「愛」ですから、「広島、私の恋人」っていう意味なんですね、『ヒロシマ・モナムール』っていうのは。その映画に出たんで、凄く日本では有名なんです。凄く寡作であんまり映画に出てない人なんですよ。でもその、広島に行った時にその、広島で撮った写真とか、あの・・・最近、写真展を日本で開いたりしてる人なんですね。スゴイ、美人なんですけど、現在85歳ですけどやっぱり昔綺麗だった人っていうのはわかりますよね?年取っても。日本でも、お婆さんなんだけど「あっ、若いころ、綺麗なお嬢さんだったんだろうなあ・・・」って思う人っているじゃないですか。そういう感じなんですよ。

     それでも身体が動かなくなっていくんですねえ。それで、介護士の人とか来るんですけども、やっぱり恥ずかしいんですよ。自分はちゃんとした人だ、ちゃんとしてると思ってたら、上手く身体が言うことを聞かなくて、何にも出来ないわけじゃないですか、洗ってもらったり、オムツ替えたりとか。で、段々、悲しくなってくるんですよ。

     この女優さん、現在85歳なんですけども、身体を洗ってもらうとことか、オシメを替えてもらうとことか、全部自分で演じてるんです。全裸のシーンまであるんですよ。凄い演技なんで、この人今、アカデミー賞の主演女優賞候補になってるんですね、エマニュエル・リヴァさんは。この体当たり演技で、多分、獲るんじゃないかと思うんですよ。もし獲ると、アカデミー映画史上最年長になるんです(笑)。今回アカデミー主演女優賞は、「最年長」対「最年少」の闘いになってるんですねえ(笑)。その歳の差、10倍以上という(笑)・・・「8才」対「85歳」ですから(笑)。

     で、その奥さんが、もう言葉が喋れなくなってくるんです。右半身が動かなくなって。何度も「マー、マー」って言うんですよ。介護士の人に身体を洗ってもらっても「マー、マー、」って言うんです。これが「ママ」にも聞こえるし、フランス語で「マー」っていうのは「痛い」っていう意味なんですよ。身体を洗ってもらったりしてる時とかに「痛い、痛い、」って言ってるのか、それとも身体の麻痺とかが進んで身体が痛いのかわからないんですけど、とにかく、「お母さん」て言ってるのか、「痛い」って言ってるのか、そればっかりを繰り返すんです。するともう、見てらんなくなっちゃうんですよ、旦那さんはもう・・「どうしたの?どうしたの?」って言って。・・・で、これがずっと続く映画なんです。

     なんでこんな映画を、今まで酷いことばっかり描いてきたミヒャエル・ハネケ監督が、突然こんな、非常に真面目で真摯な愛の物語を作ったのか、って聞かれてて答えてましたけど、この人、おばさんがいて、おばさんに育てられたらしいんですけども、そのおばさんが92歳で、やっぱり身体が動かなくなって、ハネケに「もう、恥ずかしいし辛いから、殺してくれ」って言ったらしいんですよ。そうしたら、そのおばさん、結構お金持ちなんで、ハネケは相続人になってるんですね、遺産の。「だから殺せないよ」つったらしいんですよ(笑)。「オレ、逮捕されちゃうからよお、おばさん」つって(笑)「シャレになんねーんだよ!」つって断ったらしいんですけど、それでも、見てられなかったらしいんですよ、辛そうで。その体験をもとにして描いた映画なんで、今までよりも凄く本人の心が描かれてるんです。

     しかもそのジャン=ルイ・トランティニャンていう俳優さんが、旦那さんで、もうとにかく奥さんのためになんでもするんです、ずっと。この人、今まで映画出てなかったんです。何年か前に、娘さんが殴り殺されたんです。それからショックで映画に出てなかったんですけども、ハネケが引っ張り出してきたんですね。このトランティニャンていう人は、娘が死んでから、自殺しようとしてたんです。で、それを止めるためでもあって、「自殺してもいいから。この映画、出たら、ね。」って言って(笑)・・・引っ張り出して、「取り敢えずこの映画に出ろ!」つって、出したらしいんです。そういう、非常に、「友情」とか「愛情」とか、作ってる側、演じてる側が全部リアルに、込められた映画ですね。

     最後はホントに泣けてしょうがないんですけど、僕は観た時に、物凄い感慨深かったのは、ハリウッドで観たんですが、映画館で、満員だったんですけども、僕以外の客、全員、老夫婦だったんですよ(笑)。もんの凄い、愛が試される話なんですよ。この結婚相手を「あなたは本当に愛してるのか?」っていう。「こんなになっても愛せるのか?」「なんでも尽くせるのか?」ってことを突きつけていく映画なんで、それをもう、みんな老夫婦だから、異常に切実な映画館空間で、大変な状況で観ましたけれども(笑)。

    山里亮太:僕らみたいな世代でも、観に行っても楽しめる感じですか?

     これはやっぱり、先に観といたほうがいいですよね。あなたは奥さんをこういう風に、世話できるのか?ってことも含めて。で、その時にどうするのか?とか。どんどん試されていくんですね、主人公のジャン=ルイ・トランティニャンが。でも最後は、すごくホッとさせる終わり方で・・・、救われますけどもね。

     改心したみたいですね、このハネケ監督は。「今まで酷い映画ばっかり作ってスイマセン」てことだと思いますけど(笑)。この映画観て感動した人が「ハネケって人は良い人ね」って、ビデオ屋行って、ビデオ借りて、過去の作品を観ると「ナニこれ!!」ってビックリすると思いますけども・・・「酷い映画だわ!!」っていうね(笑)。この人自身も70になっていろいろ、老後のことを考えて、ってことらしいですけども、これが『愛、アムール』っていう映画で、日本公開はもうすぐです。若い人も観た方がいいと思いますね。

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