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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』(Beasts of the Southern Wild) 作品賞 監督賞 他計4部門ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    作品賞
    監督賞     ベン・ザイトリン
    主演女優賞   クヮヴェンジャネ・ウォレス
    脚色賞     ルーシー・アリバー、ベン・ザイトリン

    2012年9月25日『たまむすび』より

     今日はですね、『カンヌ映画祭』っていう映画祭がありますけど、それで新人賞を受賞した映画なんですが、日本語タイトルがまだついてないんですごく判り難い英語タイトルで言いますが、『ビースツ・オブ・ザ・サザン・ワイルド』(Beasts of the Southern Wild)っていうタイトルなんです。『ビースツ・オブ・ザ・サザン・ワイルド』って、日本語に訳すと「南部の、野生の、獣たち」っていう意味になりますけれども、これは、おとぎ話なんですよ。

     6歳の女の子が主人公のおとぎ話で、語り部もその6歳の女の子がたどたどしく、「アタシのナマエはハッシュパピーっていうの・・・」って話していくんです。ナレーターとして。このハッシュパピーちゃんは、見るからに、南部のルイジアナに住んでるんです。はっきり説明は無いんですよ、子供だから。自分が何処に住んでるかわかんないから(笑)。ルイジアナにはミシシッピっていう川の河口がありまして、下のほうが「ミシシッピデルタ」って言われる、湿地帯みたいになってるんです。ちっちゃい川がいっぱい入り組んで、林の中を流れてて、沼地のような感じになってるとこがあるんですけれども、そこに、お父さんと一緒に住んでるんです。2人で。

     お母さんはいないんですよ。お母さんは何処に行ったのか、っていうと、お父さんは「遠くに行った」みたいなことしか、曖昧なことしか言わないんです。それで・・・いつかお母さんに会える、ってことを夢見てる女の子がハッシュパピーちゃんで、この子が、まあ物凄い芸達者なんですねえ。黒人の女の子なんですけど、映画に初めて出た子で、主演女優賞とか、いろいろ賞で挙がってくるんじゃないか、って言われてる子です。名前がすごく難しくて(笑)、これ多分フランス系なんですけども、「グベイン・ゼイン・ワリス」(クヮヴェンジャネ・ウォレス)っていう女の子なんです(笑)。ルイジアナってのはフランス系の名前の人が結構多いんで、その名前じゃないかと思うんですけども。この子は、いわゆるアフロヘアーなんですけど、それを伸ばしっぱなしでライオンみたいになってて、汚い下着の上下にいつも長靴を履いてる、っていう、マンガの中に出てきそうな感じで出てくるんです。『長くつ下のピッピ』(Pippi Langstrump)とか、ああいう系です。(おとぎ話の主人公的な感じで)野生の女の子なんですね。

     これ、すごく不思議なんですけど、映画の撮り方自体をドキュメンタリータッチで撮ってるんです。すごくリアルに。でも、語ってるその女の子の語り口とかは、現実が起こってるのに、子供って、現実とおとぎ話の区別がつかない、その感じなんです。だからこれ、ルイジアナが舞台なんでハリケーンが起こって大洪水が起こるんです。2005年に、堤防が決壊してルイジアナが全部水没しましたけれども、それが起こるんです、この映画の中で。

    田中みな実:現実と空想とが入り混じった、感じっていうことですか?

     そうなんです。だから、子供にとっては多分、水没した時に「もう、この世の終わりだ」と思ったと思うんですよ。実際にちっちゃい子達は。そういう感じで撮ってて、ホントに世界が水に水没してしまったんだ、みたいな感覚になってるんです。この主人公の女の子は。

     しかも、北極で(笑)・・・突然、北極の話が出てくるんです、この映画の中で(笑)。地球温暖化のせいで北極の氷も溶けてるから水の量が増えてる、みたいな話が出てくるんです。それがこのハリケーンと入り混じってるんです。さらにその北極の氷の中に閉じ込められている、原始時代の怪物、超巨大生物の(笑)・・・ウォーロックスという超巨大生物が蘇って地上を荒らしてくる、っていう話になってるんです、途中から。ウォーロックスっていうのは・・・体長が30メートルぐらいある・・・あ、30メートルもねえや、10メートルぐらいしか・・(笑)ま、怪物なんですけど、それが何匹も氷の中から出てきて、「ドドドドドド!」っと、地面を走りながら、建物を全部なぎ倒して進んで行くんです。それがどうも、襲って来るらしい。で、「この世の終わりだ!」っていう、おとぎ話みたいな話かと思うと・・・。

     女の子とお父さんが、突然、ヘリコプターによって助けられて、アメリカ政府の避難所に連れて行かれるんです。そこで避難民として生活させられたり、その部分は非常にリアルな、洪水の時に実際に起こった、避難を描いてたり、どこまでがドキュメンタリーで、どこまでがおとぎ話か、よく分からないように撮ってる、ふしぎ~な、不思議な映画なんですね。

     その水没した世界で生きていこうとして、村の人達が水の上で、自給自足で生活を始めるんです。水の上に、浮かぶ家を作ってそこで全員で共同しながら。その辺の人達ってザリガニを食べるんです。ナマズとザリガニが、一応主食なんです。ザリガニとナマズを獲って、みんなで食べて生活をしながら、子供にそのお父さんが、ハッシュパピーちゃんに、ナマズの捕まえ方とか、ザリガニの捕まえ方とかカニの食べ方とかを教えて、「お前は、1人で生きていかなきゃなんないんだ」って言うんです。「どうして?」って聞くと、お父さん、死にそうなんですよ。お父さん、段々身体が弱ってきて、「オレはもう死ぬから、お前はオレが居なくても1人で生きていくように頑張るんだぞ!」って言うとハッシュパピーちゃんが、「ウン、ガンバル!アタシ、強いから!」つって頑張るんですけど(笑)。

     そういうほのぼのとした話と、凄くリアルな、ルイジアナが受けた災害とか地球温暖化とかが絡んでくる不思議な映画なんですけども。あ、これ、スゴイ低予算なんですよ。壮大な風景で、壮大に撮ってるんですけど、実際は制作費が1億5千万ぐらいなんです。怪物が街を破壊したりするシーンとか、怪物の巨大さとかすごく良く出てるんですけど・・・僕、撮影現場の、(笑)裏ビデオみたいな物を見つけちゃったんです、編集前の。そしたらこれ、30センチぐらいの子豚ちゃんに、角とか牙をつけて撮影してました。これがスゴイ迫力なんです、映画で見ると。ミニチュアを使って、30センチぐらいの(笑)子豚ちゃんにミニチュアの家とか破壊させてるんですけど、撮り方が上手いから、ホントにでかく見えるんですよ。大昔、僕が子供の頃は、本物のトカゲとかをミニチュアを破壊させて、大怪獣の映画に見せた映画があったんですけど、それに近い感じでしたね、懐かしい・・・。

     制作費1億5千万ですから、アメリカ映画としては物凄い低予算なんです。監督も、今まで映画撮ったことの無いわずか30才のベン・ザイトリンていう人が、初めての映画なんです。このお父さんとか、みんな素人なんですよ。

    山里亮太:え?!さっきから言ってる、スゴイ子供の役の子もですか?

     子供は素人です、もちろん(笑)。仕事無いですから(笑)。・・・でも、このお父さんとかも素人で、お父さんはこの映画関係者が通ってたパン屋さんの親父さんらしいです。(笑)ただのパン屋さんでした。凄いですね。やっぱり撮り方が上手いんで、すごくリアルに撮れてるんですけれども、これがもう、アメリカでは既に1千万ドルも稼ぎ出してて大ヒットしてるんです。

     これ観て、「あっ!」と思ったのは、宮崎駿のアニメーションの世界に非常に近いんですよ。まず、水没した世界っていう、世界が全部水に沈んちゃった、っていうのは、ポニョなんですよ!『崖の上のポニョ』なんですよ。宮崎駿さんてのは、世界が水没してしまう、っていうイメージを、むか~しから何度も繰り返してるんです、作品の中で。『ルパン三世 カリオストロの城』でもそうですし、その前に撮った『パンダ・コパンダ 雨ふりサーカス』っていうのも、町全体が水に沈んじゃうんです。あと『千と千尋の神隠し』でも、水に沈んだ世界で電車に乗って移動する、っていうシーンが出てくるんです。それに凄く近いイメージなんですよ。これは、絶体に僕は、影響を受けてると思ってるんです。ほかにもそっくりなシーンがいっぱい出てきて、例えば、巨大な怪物ウォーロックスっていうのが「ドドドド!」っと迫ってくるっていう。文明の終わりに。それはやっぱり、『風の谷のナウシカ』の「王蟲(オーム)」に似てるし。あと『もののけ姫』にも、イノシシの怪物(乙事主 おっことぬし)が出てくるんです。あれにも似てるんですよ。

     凄く面白いのは、宮崎駿の世界ってのは非常に日本的なアニメーションの世界じゃないですか。これがルイジアナで、ほとんど黒人の人が住んでるような地域での物語に、置き換えられてるっていうのは物凄い不思議なことですね。全然違う(笑)、物ですからねえ。

    田中みな実:日本に影響を受けた、とかっていう話はあるんですか?

     これはまだ言ってないんですよ。多分、日本で公開されることになればインタビューとかができて、聞けると思うんですけれども。やっぱり明らかに宮崎駿の影響を受けている映画っていうのは、やはり日本で観て欲しい、という。

     あと面白いのは、この全て水没した世界で、「水平線の彼方に何かがある」って言うんです。で、ハッシュパピーちゃんが水平線の彼方を目指すんです。すると、水平線の彼方に、浮かんでる島みたいなものがあって、それは人工の、船みたいな物なんですけども、そこにネオンが出てて、「エリーシアン」ていう名前のバーがあるんですね、酒場が。「エリーシオン」(Elysion)ていうのはギリシア神話に出てくる「浄土」、いわゆる、いい人達の魂が行く島のことなんです。ま、海の彼方にある島なんですけれども、中に入ってみると酒場になってて、なんて言うかいわゆるその・・・・(笑)娼婦の人がいる店になってるんですよ。そこにいるオネエチャン達と、お酒飲んだあと、エッチする、みたいな店になってるとこに、主人公の女の子が行くんです。

     これは、『千と千尋の神隠し』に影響を受けてると思うんです。『千と千尋の神隠し』っていう宮崎駿さんの映画は、お風呂屋で湯女として働く女の子の話なんですけども、「湯女風呂」っていうのは江戸時代にあった「ソープランド」のことなんです。昔、「ソープランド」って名前は、ある国名から「ソープランド」って名前に変える時に、一時候補として挙がってたのは「湯女風呂」だった、っていうぐらいなんです。だから、宮崎駿さんはそういうイメージを『千と千尋・・・』の中で描いてるんですけれども、それとかもこの映画の中に出てくる感じで、宮崎駿的世界の子供が、とんでもない所で、アメリカの南部の(笑)湿地帯で生まれてくる、という不思議な映画でした。

     絵柄は(宮崎監督の作品に)全然違うんです。非常にリアルな南部を描いてる、ってのはまた面白いですねえ。アニメじゃなくて。それをまた、ちっちゃい子供の目から見てて・・・っていうとこが、上手い映画でした。タイトルが判り難いんで、これなんか、可愛いタイトルにすると日本でもお客さん入るかな?と思いますね。

    山里亮太:宮崎監督がつけてるような、ああいうタイトルにしたらねえ、

     そうそう、ああいうタイトルね!だから、ハッシュパピーちゃんの話なんで、『ハッシュパピーと、ケモノたち』とかなんかそういう(笑)、可愛いタイトルで、絵本みたいなタイトルでやるといいと思います。

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