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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『世界にひとつのプレイブック』(Silver Linings Playbook) 作品賞 監督賞 他計8部門ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    作品賞  編集賞
    監督賞     デヴィッド・O・ラッセル
    主演男優賞   ブラッドリー・クーパー
    主演女優賞   ジェニファー・ローレンス
    助演男優賞   ロバート・デ・ニーロ
    助演女優賞   ジャッキー・ウィーヴァー
    脚色賞     デヴィッド・O・ラッセル

    2012年12月4日『たまむすび』より

     今日の映画も多分アカデミー賞の主演女優賞候補に入るんじゃないかと思うんですけれども、日本語タイトルがまだ決まってなくて『シルバー・ライニングス・プレイブック』(SILVER LININGS PLAYBOOK)っていうタイトルなんです。「プレイブック」っていうのは、アメリカンフットボールの、攻撃とか防御を上から見た感じで、「ここからショットガンだ」とか言って、「ここでクォーターバックを・・」とかやる、作戦を立てる・・・ノートに書いてあるあれを「プレイブック」って言うんです。それとか、本に書いてある、こういうふうにやるんだっていうハウツー本、戦術本。それを「プレイブック」って言うんですね。「シルバー・ライニングス」っていうは、これまためんどくさいんですが、「ライニングス」ってのは「ライナー」と日本語でも言いますけど、服の裏地です。「シルバー」だから「銀の裏地」って意味なんです。

     これは、英語にことわざがあるんですよ。「どんなに暗い日でも雲の上には銀の裏地があるよ」って言葉があるんです。「どんな雲でもどんなに曇っていても、その雲の裏側は太陽によって光り輝いているはずだ」と。下から見ていると雲は真っ黒に見えるけど、雲の上側は太陽で光り輝いているはずだ、「それは銀の裏地なんだよ」って言ってるんです。「どんなに辛くても、希望は絶体あるんだ」っていう言葉が「シルバーライニングス」って意味なんです。この「シルバー・ライニングス・プレイブック」っていうのは、そういう、「希望を持つための戦術」っていう意味なんです。これ、すごい素敵な、僕が紹介するのに全然似合わない感じがしますけども(笑)、クリスマス向けのロマンチックコメディです。

     主役の男の人は、「アメリカで最もセクシーな男性」と言われてる人で、ブラッドリー・クーパーっていう人で、日本では多分知られてないです。でもこの人、2011年に、「ピープル(People)」っていう雑誌が毎年選んでる「世界で最もセクシーな男性」のトップに選ばれてるんです。この人、腹筋が(笑)・・・カラダもスゴイんです。アメリカはセクシーな男に選ばれる条件は、腹筋なんですよ。ライアン・ゴズリングとか、ベッカムとか、みんな腹筋が割れてるかどうかが結構ね・・・重要なんです、アメリカでは(笑)

     で、女の娘の方、恋する相手の女の娘の方は、ジェニファー・ローレンスっていう娘でこの人もあんまり日本では有名じゃないんです。ただ、この人はいきなりデビュー作に近い映画でアカデミー主演女優賞候補になった、ものすごい演技派なんです。日本でも公開されたんですが、『バトル・ロワイアル』のアメリカ版で『ハンガー・ゲーム』(The Hunger Games)って映画があって、それの主演女優で、アメリカでは大人気なんです。『ハンガー・ゲーム』ってのはアメリカでは大々、大ヒットしたんですよ。日本ではあんまり当たらなかったんで、このジェニファー・ローレンスって娘は知られてないんですけども・・・・あの、オッパイ大きいですよ(笑)。

     それで、この2人が、日本ではこれからって感じですけど、アメリカではトップ、トップトップ俳優同士の共演作なんで、ものすごい評価が高い映画なんですが、これ、社交ダンス、ペアのボールルームダンスの『Shall we ダンス?』って映画が前にありましたが、それをしていく話なんです。主題歌がレッド・ツェッペリンの「強き二人の愛」という歌で( What Is And What Should Never Be / Led Zeppelin )、「もし僕が君に、ついて来いって言ったら、君はついて来るね」っていう、「君は僕のものだ!」っていう歌詞なんです。最初すごく静かに、「イフアイ、セッ、トゥユートゥモ~ロ~♪」ってゆっくり始まって・・・途中で、「ダンダダ、ダンダダ、ダダダンダン!」てなるんですが、この映画、そういう映画なんですよ。

     主人公のブラッドリー・クーパーは、いわゆる、なんていうか「ブチ切れる」人なんです。普段はゆっくり静かに喋ってんのに、突然、「ア”~!!」ってなっちゃうんです。アメリカでは、こういう人達は「アンガーマネジメント(anger management)が必要な人」って言うんですね。日本ではあまり知られてない言葉なんですけども、要するに、「ブチ切れちゃう」人なんです。カンニングの竹山さんとかは、あれは、キレる「芸」ですけども、そうじゃなくて本当にキレちゃう人ってのは、職場とか、1番アメリカで怖いのは自動車で運転してる時にそれが起こることなんです。みんなピストル持ってますから。後ろから「プッ、プッ、」って鳴らされたっつって、「ブー!」って止めて「バーン!」ですから、いきなり。そういう世界なんで、とにかく、職場とか結婚関係とかで、怒り始めると止まらなくなる人っていうのは、非常に危険だってことで、強制的に、病院に行かされるんですよ。

     主人公はそういう人で、まず最初に、主人公は学校の先生で体育の先生かなんかだったんですけども、たまたま学校が早くはけたんで、家に帰って奥さんと会おうかな、って行ったら、奥さんがシャワー入ってるんです。で、シャワー行って、いきなり抱きしめたらいいかな?って思って裸になってシャワー行って、抱きしめようとしたら、違う男がいるんですよ。奥さん、国語の先生なんですけど、歴史の教師のハゲオヤジとシャワーでイチャついてるんです(笑)。それで、「テメエ!浮気してんのか!」つって、相手の男をボコボコにしちゃって警察を呼ばれて、病院に入れられちゃうんです、主人公は。で、奥さんにも二度と近づいちゃいけない、っていう、接近禁止令を出されて、離婚はしてないんですけども、二度と会えない状態になって、保護管理する人が必要なんで、自分の実家に帰ってくる、ってとこから話が始まるんです。

     実家に行くとお父さんはなんとロバート・デ・ニーロなんです。ロバート・デ・ニーロも昔からブチ切れると何するかわかんない人なんですよ(笑)。映画の中ではそういう役ばっかやってる人ですからね(笑)。で、このお父さんてのもダメな人で、まず事業に失敗して、事業を立て直すためのお金を、なんと、スポーツ博打で儲けようとしてるお父さんなんです、ロバート・デ・ニーロは。

     これ、舞台がフィラデルフィアなんですけど、フィラデルフィアにはスポーツチームが有名なのは2つあるんです。アメフトの方は「イーグルス」っていうチームで野球チームが「フィリーズ」っていうんです。このデニーロさん、お父さんは、それにお金を賭けて、たくさん儲けて、お店を立て直そうと思ってるんですが、「フィリーズ」と「イーグルス」ってのは、ダメチームなんですよ!いつも、優勝直前までいって、大失敗するってことが多いチームなんです。1番悲惨な例だと、NFLの、フットボールでは、1番大事な試合で、タッチダウンする寸前に、タッチダウンした!と思って、「やった~!」って、手を上げた時にボールを落っことして、点が入んなかった、それで勝てなかったとか、「フィリーズ」の方は、もう地区優勝の決定戦だ!っていうところで、ボールをトンネルして負け、とか、詰めの甘いチームで有名なんで(笑)、普通このファンやってると、だんだん神経症になるって言われてるんですよ。ただ時々優勝して・・・この間優勝したりしてなまじ優勝するだけに、ますますファンが辛くなってくるんですけど(笑)、ちょっと阪神・・系なんですね。このお父さんはそれにお金を大量に賭けて、どんどん、どんどんお金を失っていってるんです。

     それでどうしようもない家庭になってて、なんとか救いがあるな、と思うのは、近所にいた可愛い女の娘に会うんですけれども、それがジェニファー・ローレンスって女の娘で、主人公は意気投合するんですね。どうして意気投合するかっていうと、「僕はねえ、最近ね、『セロクエル』っていう精神安定剤を飲まされてるんだよ、病院でね。・・・知ってるかい?」って言ったら、「知ってるわ!」って言って、「ワタシ、『アビリファイ』っていう、大塚製薬の双極性障害の薬を飲んでるの!」って言われるんですよ。「『ザナックス』、飲んでる?鎮静剤なんだけど。」って言うと、「飲んでるわ!アタシ、『エフェクサー』も飲んでるのよ!不安神経症にいいのよ!」って。その女の娘のほうも、病院に入ってるんです(笑)。その女の娘は、高校時代の友達だった旦那さんと結婚したんですけど、旦那さんは死んじゃうんですね。旦那さんは、エッチしようと思って、エッチ屋さんに奥さんのエッチ下着を買いに行ったら、慌てて買いに行って、慌てて帰る途中で、慌て過ぎて、エッチ下着持ったまま交通事故で死んじゃったんです。もう、恥ずかしいわ、悲しいわで、その幼妻のジェニファー・ローレンスは、おかしくなって、職場の人全員とヤッちゃうんです。辛いから自傷癖みたいな感じで。それを聞いた主人公が、「え?職場の人全員とヤッタって何人なの?」「11人よ」って言って、「その中に女性もいるの?」「いたわよ!」って言うんです(笑)。このおかしな2人が、なんとか社交ダンスに出て勝とうとする、っていう話なんですよ。

     これ、どうしようもない人ばっかりがゾロゾロ出てくる映画なんですね。この主人公はまだ、奥さんとやり直せると思ってて、奥さんが国語の先生だっていうんで、どういう国語を教えてるか、っていってヘミングウェイの『武器よさらば』(A Farewell to Arms)を読んでる、っていうことを調べて、奥さんとまた再開できた時に話題が無いと困るってことで、夜中に『武器よさらば』を読むんです。読み終わったら突然、夜中の3時に暴れだすんです。「ギャ~!!」って暴れだして、もう近所の人、全部起きてくるんですけど、「せっかく一生懸命読んだのに、ヒロイン死んじゃうじゃねえかよ~!!」って怒ってるんです。「ヘミングウェイ、カネ返せ!!!」とか言ってるんですよ。怒りのスイッチが入りだすと止まらなくなっちゃうって人なんです。で、今度はその奥さんのことを思い出して、「結婚式の時のビデオ、なかったっけな?」って家中探して、ビデオ見つからないんです。で、「結婚式のビデオどこだ!結婚式のビデオ~!!!」つって、また警察が来るんです。主人公はそういう人なんですよ(笑)。

    山里亮太:見てる人って、そこら辺ドーン!て笑ったりするんですか?

     やっぱりこれは笑いますよねえ。ヒキながら笑う感じ、引きつり笑いですけど。カッコイイのに、顔だけじゃなくて、そういうバカ演技もできるってところを見せて、すごくこれで評価されてるんです。

     さっきのレッド・ツェッペリンの歌っていうのは「強き二人の愛」っていう歌なんですけれども、「僕が何処にでも行こう、って言ったら、君はついて来てくれるね!君はオレのもんだから!!」って言ってるんですけど、これ、主人公は、自分から逃げた奥さんに対してこの歌を聴くわけです。これストーカーだよね?(笑)ラブソングってやっぱり怖いですよ。相手が嫌ってる場合は怖いんですよ(笑)。嫌がってる場合は怖ろしい歌なんです。上手くいってればいいんですけどね。

     そういう映画なんですけども、面白いな、と思ったのは、監督はデヴィッド・O・ラッセルっていう監督なんです。この人は、『ザ・ファイター』(THE FIGHTER)っていう映画で、アカデミー賞をいっぱい獲って有名な監督なんですけれども、ハリウッドでは、その前は干されてたんです。ずっと仕事が無かったんです。どうしてかっていうと、凄く天才的な監督って言われてたんですけども、この人、現場でキレちゃうんです。現場で「そうじゃねーよー!!」とか「わかんねーのかよ~!!!」ってやっちゃうんですよ。

     まず最初に、『スリー・キングス』(Three Kings)っていう戦争映画を撮って、すごく映画も当たって評価も高かったんですけども、それに主演したジョージ・クルーニーっていう俳優が、「現場ではホントに地獄だった。監督がすぐブチ切れるから。」と、「彼は天才かも知れないが、ゼッタイに、仕事は二度としねー!」って言ったんですよ。インテリなんですけどね。やっぱりブチ切れるってのは、精神的な状態なんで。ジョージ・クルーニーって人は凄く力を持ってる人なんで、彼がもう二度としないよ、って言ったら結構大きかったんです。

     その後もう1本、『ハッカビーズ』(I Heart Huckabees)って映画が出た時に、今度はベテラン女優のリリー・トムリンていう女優さんがいるんです。すごいベテランなんですけど、その人を現場で怒鳴りつけて、「お前、わかんねーのかよ!バカヤロー!!」とか言ってるところを、あまりにも酷かったんで現場のスタッフが携帯で、ビデオを撮っちゃって、それをユーチューブに流しちゃったんです。このデビッド・O・ラッセル監督が「ギャギャギャギャギャ~!!!」ってやってるとこがユーチューブで流されたために、もう誰も一緒に仕事しなくなっちゃったんです。だから、自分の話なんですよね、コレ(笑)。

     面白いのは、このデヴィッド・O・ラッセルって監督が復活したのは『ザ・ファイター』っていうボクシング映画だったんです。それは、マーク・ウォルバーグっていう俳優さん、ずっとデヴィッド・O・ラッセルと映画を撮ってる人なんですけども、その人が自分でプロデュースしたんですが、どうも干されてて、どうしようもないデヴィッド・O・ラッセルに「最後のチャンスをあげるよ」って言って、その『ザ・ファイター』って映画を撮らせてあげたんです。その時に、ウォールバーグの兄貴役で出た人っていうのが、クリスチャン・ベールですが、クリスチャン・ベールは、その前に出たターミネーターの続編で、やっぱり現場でスタッフを怒鳴りつけているところをユーチューブにあげられちゃった男なんですよ。「バカヤロー!!」ってやってるところを。それで、みんなに「アイツなんなんだ?クリスチャン・ベール、天狗じゃねえの?」「おかしいんじゃねえの?」って言われて、仕事が無くなるかもしれない、っていうところで、そのユーチューブにブチ切れをあげられて、ヤバかった2人が合体して『ザ・ファイター』で復活したんですよね。スゴイ話なんですよ。それで『ザ・ファイター』でクリスチャン・ベールはアカデミー賞を獲ったんです。

     ・・・て言う、ブチ切れのドン底から立ち上がるっていう(笑)・・よくわからないですけども(笑)・・・この映画は、そのアンガーマネジメントをどうやってコントロールするかっていうと、自分よりもおかしな人と付き合ってると(笑)、自分が客観視できるっていう話なんです。だからこれ、彼女もおかしいでしょ?で、お互いにどっちも、相手がおかしいと思ってる同士で付き合ってるから・・・・・・だんだん治ってくるって話(笑)なんです。

    赤江珠緒:毒は毒をもって制す、みたいな話ですけどねえ・・・

     そうそう、そうなんですよ(笑)。で、最後は、クリスマスでホントにロマンチックなハッピーエンドで終わるんです。これがナント!ホントにクリスマスラブストーリーで終わりますから、最後コレが、もう「ウットリよ」って感じです。前半、グチャグチャですけど、最後はデート映画になってますよ。オススメですね。

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