スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『ジャンゴ 繋がれるざるもの』(Django Unchained) 作品賞 音響編集賞 他計5部門ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    作品賞  編集賞  音響編集賞
    助演男優賞   クリストフ・ヴァルツ
    脚本賞     クエンティン・タランティーノ
    撮影賞     ロバート・リチャードソン
    

    2012年12月18日『たまむすび』より

     主題歌を聞いていただきたいんですがよろしくお願いします。
    (♪ジャンゴ~さすらい~【北島三郎】♪)
     はい、サブちゃんバージョンですけども(笑)・・・これは、「ジャンゴ」っていうヒーローがいるんです。1966年に『続・荒野の用心棒』(Django)っていう映画がありまして、それの主人公の名前で、この映画の原題が『ジャンゴ』だったんです。で、その映画の主題歌の『ジャンゴ』を日本語バージョンで吹き替えたのが、この北島三郎バージョンなんですけども、今回の『ジャンゴ』っていう映画も、主題歌はこの歌なんです。北島三郎バージョンじゃない英語バージョンの『ジャンゴ』なんですけどもね(笑)

     1966年の『続・荒野の用心棒』(ジャンゴ)って映画は、「マカロニ・ウェスタン」て言われてる物なんです。これはイタリア人が制作した映画なんですけれども、西部劇なんです。アメリカの西部が舞台の、ガンマン達が戦う話なんだけども、イタリア人がイタリア、ま、スペインで制作した映画なんですね。だから「スパゲッティウエスタン」ていうふうにアメリカでは呼ばれていて、日本では確か淀川長治さんが「マカロニ・ウェスタン」って言ったんですね。全員、出てくる人達はイタリア系の人達なんですよ。で、それらが何でかアメリカでも大ヒットして全世界で大ヒットしたんで、それからいっぱい、「ジャンゴ」っていうのを主人公にしたワケのわかんない映画が次々と世界中で作られたんです。

     だからいろんな「ジャンゴ」があるんです。『皆殺しのジャンゴ』(Viva Django)、『情け無用のジャンゴ』(Se sei vivo spara)、『復讐のジャンゴ』(Django spara per primo)とか、いっぱいあってですね、『殺戮のジャンゴ・地獄の賞金首』って、これは日本のエロゲーなんですけれども・・・ 日本のエロゲーにまでなってるんですけど、ちなみに麻雀劇画にも「ジャンゴ」っていう主人公が出てきますけど(笑)、それはいいんですが、とにかく、「ジャンゴ」っていうのは流れ者の賞金稼ぎの代名詞なんですよ。

     日本でも最近2007年には、三池崇史監督が『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』ってのを作ってるんです。 日本製だから「マカロニ」じゃなくて「スキヤキ・ウエスタン」なんですけども、その『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』にはクエンティン・タランティーノってアメリカの映画監督が出演してるんですね。そのクエンティン・タランティーノが日本で2007年に「ジャンゴ」に出て、「じゃあ、オレもアメリカで『ジャンゴ』作るわ」っつって作ったのが今回の映画なんです。

     そうすると、まあ普通の西部劇かな、と思うんですけども、今回は舞台が西部じゃなくてアメリカの南部で、南部ってのは、南北戦争がある前は奴隷制度があったんですけれども、今回主人公のジャンゴは黒人なんです。ジェイミー・フォックスっていう、レイ・チャールズの伝記映画でアカデミー賞を獲った俳優さんなんですけども、彼が奴隷として、売られていく途中で、ドイツ人の賞金稼ぎに助けられて、それで2人で悪い奴を捕まえて、殺したりしてはお金を稼ぐ、賞金稼ぎの旅を続けるんですね。そのジャンゴには目的があって、昔愛した女性、結婚の約束をした、結婚をした女性がまだ奴隷として南部で繋がれていて、それを助け出したい、ということで、最後は南部に戻って奥さんを助けに行くっていう話になっていくんです。

    赤江珠緒:でも、西部劇に黒人の方って、あんまり今まで見かけたことが無いですもんねえ。

     実際は西部は、実は黒人の人がいっぱいいたんです。西部劇ってのは南北戦争より後の時代なんですが、南北戦争が終わったんで奴隷の人達は開放されて、西部に流れていって、実際は黒人の人達がガンマンとか、カウボーイをやってたんです 最近は歴史的にいろいろ調べるようになってから、黒人のガンマンとかカウボーイが出てくる映画が増えてきてるんですけども、ただ、アメリカの西部劇っていうのは、やっぱり白人ばっかりでやってたんで、嘘があったんですよ。

     で、これは、悪い奴隷主、というか奴隷をたくさん抱えて農場をやってる、悪い悪いワルイ白人がレオナルド・ディカプリオなんですね。最近ホントに、『J・エドガー』(J. Edgar)ではブッサイクなゲイのオジサンをやったりとか、滅茶苦茶な演技をやってるディカプリオが、今回も、モンのすごく悪くて嫌な、サディストで、変質者の、奴隷をいじめまくって殺して喜んでるワルイ白人を演じてます。

    山里亮太:僕の中で『タイタニック』(Titanic)のイメージがあるから、・・・

     もう、あれから10年以上経ってるんですからね(笑)。 僕、取材でメキシコのカンクンに行った時に海辺で休んで、海水浴をしてたら、デカプーさんもふらっと来ましたよ。取材で、そこでインタビューがあったんで皆来てたんですけども、お腹、モッチリ出ててですねえ、(笑)・・もう、ホントにおっさん体型になってましたけど、ボディーガードと一緒に水と戯れてました(笑)。で、奥さんを助け出すために主人公のジャンゴが、そのディカプリオを倒すっていう、泣かせる話なんです。

     僕は今回、ニューヨークでインタビューがあったんで、クエンティン・タランティーノに会いに行って、試写とか行ったんですけれども、試写がニューヨークの中で行われたんですが、黒人のお客さんが何人か入ってて、もう、大喜びでした!

     

     黒人の人達が南部の農場で、白人の奴隷となって綿花を育ててるんです。でも、ちょっと疲れてたりすると、白人の監視人達にムチで打たれるわけですよ。ムチって言っても、日本でSMの人達が使ってるような、あんなムチじゃなくて(笑)、黒人の人達を白人が打ってたムチっていうのは、叩かれると肉が裂けて骨が見えるようなムチなんです。それで、奴隷だから、女の人でも子供でも叩くわけです。それをジャンゴが見つけて、そのムチを取り上げて白人の監視人をぶっ叩くとこで、お客さんの黒人の人達は、もう大喜びでした!ヤッター!!って感じでした。

     ただ、凄いのは、白人達が黒人の奴隷の人達をいじめるのを延々と見せていくんで、やっぱりわずか150年前にこれだけ酷いことをしていたのか、っていうのは、相当強烈なものがあります。アメリカ映画ってのはこれだけたくさん作られてますけども、白人が黒人の人を奴隷として、どれだけ酷くしていたかっていう映画は、実際はほとんど作られてないんです。未だになんですが、世界で最初に虐待の実態を見せた映画ってのは、なんとイタリア映画なんです。1970年代にイタリアの、『世界残酷物語』(MONDO CANE)っていうシリーズを作っていたドキュメンタリー作家の、グァルティエロ・ヤコペッティっていう監督が『残酷大陸』(ヤコペッティの残酷大陸 Addio zio Tom)っていう映画で、「もし南北戦争時代にカメラがタイムスリップしたらどういうドキュメンタリーを撮るか」っていう映画を撮ったんです。

     で、酷いいじめとか、黒人の人達の奴隷の、輸入をする時に船に詰め込まれて運ばれるんで、詰め込まれて運ばれてる間だけで、200万人の黒人が船の中で死んでるんです。そのあと、奴隷の輸入を禁止したら今度は、アメリカ国内内部で奴隷取引になるんです。どうやってやるかって言うと、白人の、奴隷の持ち主が、黒人の女の子を次々と犯して子供を産ませては、自分と奴隷との間に生まれた子供を金になるから、って売っぱらうんです。要するに人間牧場にするんですね。

     それぐらい酷いことをやってたっていうのは、アメリカ映画ってのは全然描いてなくて、そのあと『マンディンゴ』(Mandingo)って映画が、1回だけ、その実態を描いたんです。で、そのあとは誰も描かないのを、タランティーノっていう監督は勇気があるから、「やってやる!」ということで、今回それに挑戦してるんです。

     まあ、酷いですよ。だって、奴隷の人が逃げようとすると、犬をけしかけて犬に食い殺させたりするんですけども、それをやった後で、ジャンゴが全員皆殺しにしますから!「よくもやってくれたな、この野郎!」って、バンバンバンバン、バンバンバンバン、殺しまくるんですけど(笑)。スカッとはしますけれども、前半でかなり、リアルなものを見せてくるんで、ま、そういう映画です。

     今、『リンカーン』(Lincoln)ていう映画が、アカデミー賞を獲りそうですけども、『リンカーン』の中では、何故リンカーンがそこまで戦って、黒人の解放をしなければならなかったのか、ってことは、戦ってる側の北軍側の目から見てるから描かれないんですね。でも、この『ジャンゴ』の方では、どれだけ酷いことが行われてたか、っていう実態を見せていくんです。だから2本合わせて観ると、リンカーンが戦おうと思った理由も良く分かっていいなと、そういう感じなんです。

     アメリカが隠してきたことで、ホントにアメリカ人にとっては、これは思い出したくない世界なんです だって、これだけアメリカ映画が作られてて、わずか1本か2本しかそれを描いてないんですよ、現在まで(笑)。今回も、どうしても思い出したくない部分ていうのがあって、タランティーノも、「描きたくなかったから、描かなかった」って言ってる部分もあるんですね。黒人の女の人に対して、白人の男達が何をしていたかっていうのは、ちょっと・・・「やっぱオレもジェントルマンだから・・・」ってインタビューしたら言ってましたよ。「紳士だから、胸くそ悪くなるから、そこだけはちょっと描けなかったよ」って言ってましたね。具体的には、子供を産ませて、それを売ってたんですけども、そこはちょっと、「ちょっとパスした!」とか言ってましたけど。

     でも、タランティーノって人は面白いんで、今回はマカロニ・ウェスタンへのオマージュなんです。それで、前に『キル・ビル』(Kill Bill)って映画を作った時は、日本のいろんな時代劇・・『服部半蔵・影の軍団』とか『柳生一族の陰謀』とか(笑)、しかもそれのTVシリーズ版へのオマージュだったんですね、『キル・ビル』は。で、この前の『イングロリアス・バスターズ』(Inglourious Basterds)って映画は、第二次大戦の戦争映画なんですけれども、ドイツ兵と、アメリカ側から来たユダヤ系のアメリカ軍が戦う話なんですね。でもこれは「イタリアで作られた戦争映画」のオマージュって感じで、常に昔あったB級映画とかZ級映画へのオマージュを作り続けてる人なんです。

     今回は、「イタリア製の西部劇」っていう、まああんまり偉く思われてないもの、と、1970年代に「ブラックスプロイテーション(Blaxploitation)」ていう映画がアメリカでたくさん作られたんですが、それは、70年代にソウル・ミュージックとか流行った時に、黒人がオシャレっていう時代になった時に、黒人の人達がワルイ白人をバンバン殺す、ギャング映画がたくさん作られたんですが、それを組み合わせてるんです。マカロニ・ウェスタンと70年代黒人映画を合体させた映画なんですよ、今回は。そういう、不思議な事をやり続けてる人で(笑)、この人はホントに映画マニアで面白いなあ、と僕は思いますねえ。千葉真一さんが大好きだしね。

     前回『イングロリアス・バスターズ』って映画は日本ではそれほどでは無かったんですけど、世界的に大ヒットしたんです。どうしてかって言うと、ユダヤ系のアメリカ人兵士達が、ドイツに行ってドイツ人のナチを皆殺しにする話なんです。ユダヤ人が、逆襲する話なんですよ。もちろん歴史的事実では無いんですけど、タランティーノは友達にユダヤ系の人がいっぱいいるんで、「彼らの夢を叶えてやった」と。ユダヤ系の人達がバーっとドイツに行ってナチをバンバン殺すだけじゃなくて、最後はヒットラーを殺しちゃうんです(笑)。これも、僕がアメリカの映画館で見た時に、もう拍手喝采でした、ユダヤ系の人達が。「ヤッター!!」って感じだったんですけども。

     今回は黒人の人達を「ヤッター!!」って言わせてるんです。タランティーノは、何故か、不思議な、いろんな酷い目にあった人達の仇討ちを映画でやり続けてるという、不思議なヒーローですね。映画ヒーローみたいな人をやってますね。ま、非常に・・・血みどろの(笑)映画ではあるんですけども、非常に深い正義感に貫かれてる映画ですね、ハイ。ディカプリオはこの悪役演技でアカデミー賞を獲るんじゃないか、って言われてます。ノミネートは確実だろう、と。

     『リンカーン』と合わせて、アメリカの暗い、隠してる歴史を御覧になって頂きたい、という感じでした。ここで描かれてる酷いことはホントに事実なんで、事実はもっと酷いんですが、ラストはちゃんと、スカッ!とします。最初のほうで怒りを蓄積すればするほど、もう、怒りをどんどん盛り上げてこそバーン!て最後は行く、という感じなんで、スカーー!っとしますよ。ハイ。

    スポンサーサイト
    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    コメント

    コメントの投稿

    非公開コメント



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。