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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『アルゴ』(Argo) 作品賞 編集賞 他計7部門ノミネート

    2013年1月10日に第85回アカデミー賞ノミネート発表がありました。こちらには、町山智浩さんが以前にノミネート作品関連について紹介してきた中から、主に御本人のトーク部分のみを抜粋、一部再構成して掲載します。

    ノミネート部門

    作品賞  音響編集賞  音響賞
    助演男優賞   アラン・アーキン
    脚色賞     クリス・テリオ
    作曲賞     アレクサンドル・デスプラ

    2012年10月16日『たまむすび』より

     映画が終わった瞬間に観客がみんな、もう、拍手喝采で、実話を元にした傑作でした。『アルゴ』っていうのは、この『アルゴ』という映画の中で出てくるインチキ映画のタイトルで、存在しない映画なんです。

     これはアメリカの諜報機関であるCIAが、1980年に、イランで人質になったアメリカ大使館の職員たち6人をイランから救出するためにでっち上げた、インチキハリウッド映画なんです。実際にあった事件なんですけれども、1997年まで極秘になってて、世界は、6人の大使館職員がカナダ大使館を通じてイランを脱出したってことだけ知らされてて、その脱出作戦にインチキ映画が絡んでたってことは1997年まで誰も知らなかったんです。

     最初から説明しますと、1979年にイランでイスラム革命が起こるんです。そうしたら、イスラムの学生たち、若者たちがアメリカ大使館に突入したんです。どうしてかと言うと、それまでイランていうのはパーレビ国王が、ものすごい独裁政権、軍事独裁政権で、人々を捕まえては拷問したり処刑したりしていたんです。しかも、イランは石油が採れるんですけど、その石油の利権を、自分たち政権のものとアメリカとイギリスで山分けして、国民達に全く分けなかったんです。

     で、そのパーレビ国王の政権て言うのは実はアメリカがでっち上げたものだったんです。元々イランで石油を掘り始めたのはイギリスとアメリカの石油会社なんですけれども、そのあと、民主的な選挙で選ばれた、モサッデグ首相っていう総理大臣が、これはひどすぎるからって言って、その油田をイランの国営にしようと、アメリカやイギリスに横取りされないようにしようっていうふうにしたんです。

     そうしたら、イギリスとアメリカは怒っちゃって、「なんだ!こんなヤツ許せん!」てことで、CIAがイランの軍部に手を回して、このモサッデグ首相をクーデターで政権から叩き落として、その傀儡(かいらい)政権であるパーレビ国王をてっぺにんつけたんです。それで、パーレビ国王はアメリカのCIAによって、国王にしてもらったからアメリカべったりだったんですが、そういうことの事情が全部バレたんです。だからもう、イランの人達はみんな怒り狂っちゃって、「人の国の政権を勝手に、裏から陰謀で動かして、アメリカは、許せん!」てことで、暴徒になってアメリカ大使館に突入したんです。襲撃したんですね。

     アメリカ大使館の職員たちはみんな大使館内で人質になったんですけど、6人の職員だけが脱出して、なんとかカナダ大使館に逃げ込んで、カナダ大使の自宅の地下に隠れたんです。この6人はみんな、30ぐらいの若い人達で、アメリカの陰謀とかに関わってないんです。たまたま仕事で行ってたら、巻き込まれちゃって、しかも、その6人が脱出したことをイランの人達は知ってるんですね。バレちゃったんです。で、アメリカ人を誰も信用してないから、この6人を探しだせって話になっちゃうんです。こいつらを処刑しろ!みたいなことになってくるんです。イランの人達は今まで独裁政権で酷いことをされてたんで、その反動で恐怖政治になってて、アメリカ人を見つけたら殺せ!みたいな感じになってるんですね。今まで酷い目にあってたんで怒り狂って、殺気立ってて、道端で本当に人を殺してぶら下げたりしてる状態なんです。

     ここで、トニー・メンデスっていうCIAの局員が出てくるんです。それがベン・アフレックっていう俳優さんが演じているんですけども、彼がこの6人を救出する方法があるぞ、って言うんです。もちろんCIAによって、イランていうのはアメリカを憎んでいるんで、大使館の人達からするとCIAのとばっちりを食らってるわけですから、どう考えてもCIAは助ける義務がありますよね?。

     で、このトニー・メンデスっていう人は、たまたま、ハリウッドの映画会社の、『猿の惑星』(Planet of the Apes)って映画で、人間が猿のメイクをして演じてましたけど、あの、メーキャップをした、特殊メークアーティストのジョン・チェンバースっていう人とすごく仲が良かったんです、このCIAの局員のトニーさんは。どうしてかって言うとCIAってのはスパイ組織だから、変装するんで、その猿の惑星の特殊メークをCIAの変装テクニックにに導入してたんです。それで知り合いだったんで相談するんですけど、ちょうどその頃、アメリカでは『スター・ウォーズ』(Star Wars)が当たってたんですが、『スター・ウォーズ』ってのは砂漠の惑星のシーンをチュニジアの砂漠で撮影してるんです。だから、イラン国内で別の惑星の物語のSF映画を撮影する、という名目でハリウッドの映画会社の人のふりをして、、イランの中に入って、人質を救出してくるっていう作戦を考えるんです。これは実話なんですよ。

     たまたまこの、主人公のトニーっていうCIAのスパイの人の息子が『スターウォーズ』が大好きだったのと、特殊メークアーティストが友達だったっていうことがあって、なんか、この、イランで撮影するのにちょうどいい映画のシナリオはないかって言って、ボツになったシナリオを探すんです。そうしたら、みつけたのが「アルゴ」だったんです。「アルゴ」っていうのは、超未来の惑星の話で、すごい科学が進んで超能力とかが進んで人間がすごい、スーパーパワーを持っている時代の話なんです。とこらが、一部の特権階級の人達だけが、科学力とか超能力を独占して、下々の者に見せなかったんで、下々の人達はその人達を神だと思ってるんです。発達した科学というのは、もう、魔術と見分けがつかないんで、彼らは自分達を、シバとかのインドの神々の名を名乗って、神のように振る舞ってっるっていう、惑星の話なんです。その「アルゴ」っていうのは。

     だから、インド風の宮殿とか砂漠とかが必要だということで、イラン政府に撮影許可を取るんです。しかもスタッフはカナダ人だってことにして。で、どこで撮影できるかってことでロケハンてのをしたいからって入国許可をとって、中に入って、それで、その大使館の人達6人を、その映画の、カナダの撮影スタッフってことで救出しよう、っていう作戦なんです。

     バレたら大変ですよ!ていうのは、カナダのパスポートを偽造して行きますんで、偽造パスポートを持ってたら、これ、スパイなんで、その場で処刑される可能性があるんです。そのころのイランていうのは、革命防衛軍みたいな学生の過激派組織が、ゲシュタポみたいになってるんです。で、スパイを狩りたてて処刑してるんで、その状況の中で、トニーさんはたった一人で、イランに入国するんです。

     もちろんその前に、ハリウッドの方では、この映画が本当にあるってことででっち上げなきゃなんないから製作発表もして、俳優のオーディションもやって、しかもその撮影のために、プロダクションワークって言うんですけれども、こんな画面になるよっていうのを、スパイダーマンの絵を書いていたジャック・カービーにやらせたり、すごいスケールのデカイ話になって、実際にそれは、CIAがお金を出したハリウッド映画なんですよ。CIA以外は嘘映画だってことを誰も知らず、みんな本当にその映画が作られるんだと思ってるんですよ。ハリウッドのプロデューサー2人しか知らないんです。プロデューサーは、こういうインチキな映画をやるのは得意なんで(笑)、全然もう、平気って感じなんですけどね(笑)。ハリウッドのプロデューサーっていうのはそういう人達・・・日本の企業からお金もらって映画作るよって言って、インチキな映画作って、そこら辺にほっぽらかしてるような人達なんで、全然平気なんですけども(笑)。

     ただ、今度は、イランに入ってからこの大使館員達をカナダの映画スタッフにしなきゃなんないんです。でも、彼らは映画のこともカナダのことも何にも知らないんで、2日以内に脱出しなきゃいけないんですけど、まずカナダ人としての教育をするんですよ、すぐ、丸一日で。カナダの歴史とか地理とか全部教えるんですね。映画についての知識も教えなきゃなんないわけで、君はプロデューサーだから、君はカメラマンだから、って無理矢理でっちあげるんですよ。そうすると、もうパニクって、できないよ、一日やなんかで覚えられないよってなってくるんですが、でも、「もしお前達がちゃんと覚えてなかったらその場で殺されるぞ」って話になるんです。

     しかもこの作戦は、トニーさんがやってて、CIAは一応動いてたんですがアメリカの国務省のほうがこれは危険すぎるってことで、トニーさんがイランに入ってから作戦を中止しちゃうんですよ!彼らは孤立無援の状態になっちゃうんですが、作戦が中止になってるってことを知らないで空港に向かうんです。・・・っていう、どうすんの?これ?!っていう映画なんです。これは、6人が救出されたことは歴史的事実だから、観客は全員知ってるのに、すっごいハラハラで、ホントに手に汗握るんですよ。

     この(監督・主演の)ベン・アフレックっていう人は、元々俳優だった人で、二枚目俳優として、『アルマゲドン』(Armageddon)とか『パール・ハーバー』(Pearl Harbor)とかで、結構人気のあったイケメン俳優だったんです。でもこの人、以前に、ジェニファー・ロペスっていう、ムチムチ女優さんと、こう・・、撮影中にエッチして、映画を一個ぐちゃぐちゃにしちゃったことがあるんです。まあ、現場でもう・・・、やりまくりで、もう、映画になっちゃあ無いんですよ。それで観客みんな怒って、「ふざけるなお前ら。なんで俺たちがそんなもん金払って見なきゃいけないんだ!」ってことで、このベン・アフレックを大ッキライになっちゃったんです。

     それで落ち目になって、もう、悲惨な感じで、アルコール依存症、アル中になってたんです。で、どうやって立ち直ったかって言うと、ゼロから立ち直るってことで、自分でシナリオを書いて監督をして、すごく低予算の映画を作り始めて映画監督として立ち直ったんですね。この『アルゴ』って映画で彼が演じるCIA局員のトニーっていう人も、実際はそうでは無かったらしいんですけど、映画の中では、奥さんに逃げられてアルコール中毒になってるっていう設定なんです。このベン・アフレックは自分の話にしちゃってるんですよ自分が、みんなから見捨てられて相手にされなくなって、でも、アルコール中毒になったんだけども一生懸命がんばって、映画監督として、立ち直ったっていう話を、主人公にダブらせてるんです。だから、結構感動的なんです。

     最初、かみさんに逃げられて悲しくて・・もう、グビグビ飲んでばっかりいるわけですよ。それが、CIA自身が起こした、イランの人達を怒らせるようなことをして、それに巻き込まれてしまった大使館員を助けるという、その後始末をするということで、彼自身の贖罪と、彼自身の立ち直りになってるんですね。この、トニーっていうCIA局員の。

    赤江珠緒:政治的な危機を、文化的なもので、映画で、なんとか乗り越えようという発想が不思議ですね。

     そう。映画で、っていうとこらがいいですよね。やっぱり、映画讃歌にもなってるんです。

     これ、1979年から80年にかけての物語なんですけどこの監督自身は1972年生まれなんです。だから、全然そのことを知らないばかりか、この映画の見た目っていうのが1970年代の映画みたいに見えるんです。わざと16ミリフィルムで撮影して35ミリにブローアップってのをしてるんです。だから画面がザラザラして、1970年代の映画の雰囲気なんですね。あのころのアメリカ映画ってのはみんな、ザラザラした感じと、ドキュメンタリータッチだったんですが、このベン・アフレックはあとから勉強して、学んで、その感じを、うま~く再現してるんですね。

    赤江珠緒:じゃ、ベンは立ち直ったんですねえ

     立ち直ったんですね。これでアカデミー監督賞は多分ノミネートは確実だって言われてるんです。

     昔70年代に、『大統領の陰謀』(All the President's Men)っていう映画があったんです。これは、ニクソン大統領が1972年の選挙の時に民主党の、選挙事務所を盗聴してたことを知った、新聞社員の、ウォーターゲート事件の実話だったんですけど、これでニクソン大統領はやめざるをえないとこまで追い込まれたんですが、それを映画化した『大統領の陰謀』っていうのに、この映画のタッチが非常に近いんです。

     ドキュメンタリータッチで政治的でしかも、車が爆発したり、宇宙人が出てきたり、おっぱいが出てきたりしないんですけれども、それでも、面白いんですよ!爆発もオッパイも無いのにむちゃくちゃに面白くて、最後はもう、ギンギンにアゲアゲになって、で、思わず全員拍手っていう・・これはすごいと。この『アルゴ』は、そういう意味で政治的にも深い内容を含んで、しかもアメリカ自身の反省も描いていて、オバマさんは、このイラン政権をひっくり返したことに関して正式に謝罪してるんです。そういった政治的な反省も入っていて、しかも、ある男の立ち直りの物語であるという、非常に感動的でしかもサスペンスで・・・というので、『アルゴ』はオススメです。

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