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    町山智浩 映画 FC2 Blog Ranking

    『ミュンヘン』(Munich) 2005年町山が選んだベスト1 ラストショットはあまりにもストレートで重い【2005年12月20日ストリーム】

  1. スタジオ  小西克哉(国際ジャーナリスト) 松本ともこ(フリーアナウンサー)
  2. 電話出演 町山智浩(映画評論家、コラムニスト)
  3. ~Setup~
    ミュンヘンオリンピック事件発生当時の町山少年と小西少年

    小西 TBSラジオ、ストリーム、お送りしております。さてここからは火曜日の『コラムの花道』でございますね。火曜日のコラムニストは、サイゾーやTVブロスなどでお馴染み、映画評論家、町山智浩さん。今日もカリフォルニア州はオークランドからの出演です。町山さん、よろしくお願いします。
    町山 よろしくお願いしま~す。
    小西 え~、さて今日は、町山さんが今年1番!と、言い切ってらっしゃる映画でございますね。
    町山 はい。もう、今年観た映画の中で、もう文句なしにベスト1の映画と思いました。
    小西 ほう!
    町山 スティーブン・スピルバーグ監督の新作でですね、『ミュンヘン』(Munich)ていうタイトルの映画なんですけど、
    小西 『ミュンヘン』。
    町山 はい。えっと・・『ミュンヘン』と言えばですね、私達の世代はミュンヘンオリンピックなんですよね。
    小西 そうですねえ・・・ミュンヘンオリンピック、ありましたねえ。
    町山 当時アニメで、『ミュンヘンへの道』っていうアニメまでやってたの覚えてます?
    小西 いや~、知らないですねえ・・・
    町山 日本のあの、バレーボールの男子チームのですね、練習風景をアニメにしてたぐらいですね、
    小西 アニメに?ねえ、
    町山 そうなんですよ。ミュンヘンと言えばですね、ま、僕、小学校だったんですけども、注目してたらですねえ、
    小西 うんうん。
    町山 オリンピックが始まってみたら大変な事件が起きたんですよ。
    小西 はい・・・・これ、1972年の夏ですねえ。
    町山 そうなんです。で、僕は小学校4年生だったんですけども、
    小西 ええ、ええ。
    町山 オリンピックの・・・その、ミュンヘンのオリンピックの選手村にですね、パレスチナゲリラが8人乱入しまして、
    小西 はい。
    町山 それで、イスラエルの選手団11人を人質にとってですね、
    小西 ええ・・・
    町山 それでまあ、あの・・・捕まっているパレスチナゲリラの解放を求めたんですが、
    小西 うん。
    町山 それをイスラエル政府は拒否したんで、で、その後、その、飛行機で、旅客機でもって、そこから逃亡する、と。
    小西 はい。
    町山 ・・いう計画を立てたんですけれども、ドイツ警察がですね、ドイツ警察とドイツ軍がですね・・・・攻撃を仕掛けまして、
    小西 うん。
    町山 それに対してそのパレスチナゲリラが人質を全員射殺、っていうことをやったんですよ。
    小西 う~ん、なるほど。
    町山 これは・・・・どういう風に覚えてらっしゃいますか?

    小西 私はね、ちょうど72年の夏、生まれて初めてアメリカに行って、
    町山 はいはい。
    小西 それで、シカゴの家の、ホストファミリーのところで、居間でテレビを見て、そこであの・・・え~、見たことを覚えてるんですが、
    松本 うん。
    町山 はい、はい。
    小西 あの・・・ま、なんたってねえ、高校3年生でねえ、英語もろくにほとんどわからずねえ、
    町山 はい。
    小西 でもなんか・・・とんでもないことが起きた、と。オリンピックで、そういったテロが起きたという事はわかりましたけどね。
    町山 はいはい。
    小西 そのアメリカのテレビが「ジニフ」という、あの・・・もう、今あるのかなあ?
    町山 無い・・と思いますけど・・・
    小西 あの・・・アメリカの・・ボロ~いテレビ会社のテレビなんですよ(笑)・・・
    町山 あ、まだあります、まだあります!スゴイ安~いテレビであります、はい。(笑)
    小西 まだあるんでしょ?うん、もう、安~く売ってるようなね。
    町山 まだあります。
    小西 でねえ、色がね、カラー調整が無茶苦茶なのよ。
    町山 あ、そうでした?
    小西 うん、当時、日本のカラーテレビの方がよっぽどキレイで、
    松本 へ~・・
    小西 いや、また、このテレビの・・・色がもう、みんなねえ、酔っぱらいみたいな顔になってんの!(笑)・・
    町山 あ~・・・でもね、このニュースはね、物凄い望遠レンズで撮ってたんで、
    小西 あ!やっぱり、ボケてんだ、ある程度。
    町山 そうなんです。これね、ずっと選手村をですね、遠くからテレビカメラが望遠で撮ってたんですよ。
    小西 はいはい、はい。
    町山 だから、物凄く粒子が荒い映像があったんですけれども、
    小西 あ、元々ね?
    町山 はい。
    小西 いや、それでプラスまたねえ、アメリカ製のテレビがボロくてねえ、
    町山 (笑)
    小西 で、英語がまたよく分かんないでしょ、
    町山 あ、そうなんですか(笑)、全然分かんない?
    小西 もうねえ・・・だけど、スゴイことが起きてて、、オリンピックが大変なことになってるってことは、まあ、高校生の私にもよくわかったんですよ。
    松本 なるほど・・リアルタイムで・・
    町山 これはね、僕はね、子供だったんですけど、とにかくテレビず~っとこれを、各局全部放送してたんですよ。
    小西 あ、日本でもやっぱり、ライブで?
    町山 そうなんですよ。
    小西 はいはい。
    町山 で・・・まあ、オリンピックだから、中継システムは整ってるわけですからねえ、
    小西 整ってるわけですねえ、うん。
    町山 で、選手村を外側から映してるんですけども、
    小西 うんうん、うん。
    町山 こう・・ベランダのとこにスキーマスクを被った、ゲリラの1人が出てったりですね・・・あの、銃を持って、
    小西 それ、ず~っとそういうのを、映ってましたよねえ。
    町山 映ってましたね。
    小西 はいはい、そういうの覚えてますよ。
    町山 で、僕ぐらいの世代は皆、覚えてるんですよ。
    小西 そうでしょうねえ。
    町山 1番衝撃だったのは、最初に人質全員救出、ってのが報道されたんですよね、これ。
    小西 はあ・・・
    町山 で、犯人逮捕、と。
    小西 うんうん。
    町山 ところがそれはドイツが、まあ、意図的に出したと言われてるんですけども、
    小西 ふんふん、
    町山 誤報で、逆で、人質全員死亡だったんですけども、
    小西 なるほど・・
    町山 それで、犯人はですね、3人捕まったんですよ、生きたまま。
    小西 うん。
    町山 はい。で、この事件の後に起こったことがですね、この『ミュンヘン』という映画の中身なんですけれども、
    小西 なるほど。

    ~Conflict~
    映画『ミュンヘン』がリアルに描く、報復合戦の虚しさ

    町山 実はその後にですね、11人選手団を殺されたイスラエル政府が、
    小西 うん。
    町山 その復讐としてですね、11人のパレスチナ政府の、ま、パレスチナの暫定政府というか、亡命政府のですね、
    小西 ええ、ええ。
    町山 要人11人を暗殺する、っていう指令を出した、っていうことはご存知ですか?
    小西 ま、当時はPLOですよね?
    町山 はいはい。
    小西 アラファトのねえ、PLOの、
    町山 はい。
    小西 いや、その時は全然知らなかったですけどね(笑)・・
    町山 これは誰も知らなかったんですよ。
    小西 何が起きてるか全然わかんなかったからね(笑)
    町山 あ、そうですか。この暗殺事件は誰も知らなかったんです。
    小西 あ~、なるほど。
    町山 これは極秘にイスラエル政府が暗殺指令を出して、
    小西 はい。
    町山 5人の精鋭の、モサドっていうイスラエルの諜報機関のうち5人を選んでですね、
    小西 ほうほう。
    町山 その人達をヨーロッパに送って、ヨーロッパにいるパレスチナ運動家11人を殺せ、っていう指令を出した、っていう事実があったんですよ。
    小西 出したんだ。
    松本 モサドっていうのは何なんですか?モサドって・・・
    町山 モサドってのは例えばアメリカのCIAとか、
    松本 あ、はあはあ、はあ・・
    町山 昔ソ連にあったKGBみたいな、イスラエルの諜報機関です。
    小西 イスラエルの諜報機関でねえ、まあ、あの・・・落合信彦さんに言わせると、
    町山 世界最強!
    小西 世界最強の(笑)・・・
    松本 うんうん、なるほどなるほど。
    小西 これ、笑っちゃいけないんだけど・・(笑)
    松本 (笑)
    町山 (笑)・・・はい。いや、世界最強って言われてるのはこの事件があったかららしいんですよ。
    小西 あ~そっか、それで評判を確立したんだ。
    町山 はい。で、このスピルバーグの映画は、その11人の暗殺指令を出したっていうことがですね、ずっと国際的な謎とされてたんですけれども、
    小西 はあはあ、
    町山 そのうちの、その、暗殺団の隊長がですね、アメリカに亡命した後に、
    小西 うん。
    町山 告白したんですよ。こういうことがあったんだ、と。
    小西 ふんふん、ふん。
    町山 で、それが本になって日本でも新潮文庫から『標的(ターゲット)は11人』ていう本が出てるんですけども、
    小西 うん、うん。
    町山 それはまあ、世界的にセンセーションを起こしまして、
    小西 ええ。
    町山 「こんなことをイスラエル政府はしたのか!」と。
    小西 うん。
    町山 これ、よく考えると国際法違反なんですよ。
    小西 いや、そうですよねえ。
    町山 だって、暗殺した、そのパレスチナの人達っていうのは、フランスやスペインや、その・・・イタリアに、普通に暮らしてた人達なんですよ。
    小西 うんうん。
    町山 その人達を暗殺したんだから、これ殺人罪なんですよ。
    小西 外国人・・・まあ、殺害ですよねえ、
    町山 そうなんですよ。
    小西 暗殺ですよねえ。
    町山 ところが、それを成功させたってことは、またスゴイことですけどもね。
    小西 うんうん。
    町山 だって、逮捕されるかもしれないんだもん。
    小西 うん、そういうことですよね。
    町山 で、また、イスラエル政府のやったことも凄くて、その5人にですね、お金だけを渡して、ま、スゴイお金を沢山渡すんですけども、
    小西 うんうん。
    町山 「11人殺せ」と。
    小西 うん。
    町山 でも殺し方とかは全部、「任せる」と。(笑)
    小西 「まかせる」と。
    町山 そうなんですよ。
    小西 ほうほう、ほう。
    町山 で、「お前らはもう、これからモサドともイスラエル政府とも、何の関係も無い!」と。
    小西 なるほど。
    町山 何故ならば、この暗殺行為は犯罪行為だから、
    小西 なるほど。
    町山 「俺達が関与したってことは秘密だ」と。
    小西 ああ・・
    町山 という、まあ、なんていうかねえ、死活部隊みたいな、部隊なんですね。
    小西 「当方は一切関知しない」という・・・
    町山 そうそう、『スパイ大作戦』みたいな(笑)・・・
    小西 『スパイ大作戦』(笑)
    町山 そうなんですよ。
    小西 「なお、このテープは自動的に消滅する」とか言ったんですかね・・(笑)
    町山 そうそう、そうそう。
    小西 (笑)
    町山 そういうシーンがあるんですけど。
    小西 あ、そういうシーンがあるんだ?
    町山 あるんですよ。だから要するに、お金だけ渡されて、「これで行ってこい」と。
    小西 はいはい。
    町山 もう、「行ってこーい!!」の世界ですよ。
    小西 「行ってこーい!!」の世界だ。
    町山 それで、「この11人の写真と、身元だけ渡すけども、どうやって近づくか、とか殺すかは、君達にまかせる」と。
    松本 え~!
    町山 「武器も全部自分で調達しろ!」っていわれるんですよ。
    松本 えー!
    小西 で、そのメンバーは実際にモサドのメンバーであることは事実なわけですよねえ?
    町山 モサドなんですよ。
    小西 正規のメンバーで、
    町山 はい。で、1人は射撃の名手で、1人は爆弾作りの名手とか、
    小西 うん。
    町山 それぞれですね、エキスパートが5人集められて、ヨーロッパに送られるんですね。
    小西 うんうん。
    町山 で、次々と殺していくんですが、そのパレスチナの要人を。
    小西 ふんふん、ふん。
    町山 ところが、パレスチナの要人って言っても、ヨーロッパに住んでる人達はゲリラじゃないんですよ。
    小西 あ~・・・なるほどね。
    町山 イスラエル政府がやろうとしたのは、彼らの中の思想的指導者を殺すことだったんですよね。
    小西 あ~・・・
    町山 だから皆インテリで、博士だったり、文学者だったり、
    小西 うん。
    町山 要するに運動家ですよね。その、外国政府に対してパレスチナの人達の苦境を訴えるためにいる、外交官みたいな人達なんですよ。
    小西 あ~、なるほど。
    町山 それを1人ひとり殺していくんで、殺すために派遣された暗殺部隊は、だんだん、だんだん罪の意識に苛まれていくんですよ、この映画の中では。
    小西 あ~、そうかそうか。ホントはだから、ちゃんとその、ねえ、学者でどうこうだったら例えばあの~、この前亡くなった、エドワード・サイードなんかねえ、
    町山 はいはい。
    小西 え~っと、ま、当時アメリカにいたかどうかわからないけど、
    町山 はいはい。
    小西 ま、狙われても然るべきような人ですよねえ?・・・英文学者の・・・
    町山 全くそういう、サイードみたいな人を殺しに行くシーンがあるんですよ、パリで。
    小西 あ~。
    町山 そうすると、会ってみると凄く良い人でインテリなんですよね。
    小西 うん。
    町山 でもって、人間的にも大きな人だから、暗殺部隊は凄く、心を揺るがされるんですよ。
    小西 ほう・・・
    町山 しかも奥さんもいて子供もいるんですよ。
    小西 はい。
    町山 でもそれを、爆殺しなきゃならない、と。
    小西 はい。
    町山 で、だんだんだんだん、それを、殺しをやっていくうちに、その5人の暗殺部隊の心はどんどん、どんどん、病んでいくんですよ。
    小西 なるほど。
    町山 これは、コワイ映画でねえ・・・
    小西 つまり、殺し屋の心が・・ジレンマとなって、葛藤が生まれてくるわけですね。
    町山 そうなんですよ。ところがそれで、「やっぱりオレは嫌だ」と思うと突然、悪夢の中に、パレスチナのゲリラにイスラエルの選手団が殺された悪夢がバー!って蘇ってくるんですよ。
    小西 はあはあ、はあ。
    町山 で、「やっぱりやらなきゃ!」と。
    小西 うん。
    町山 物凄いその、なんていうかねえ、板挟みになって苦しんでいくところを描いてるんですけども、
    小西 うんうん、うん。。
    町山 とにかくこの映画がスピルバーグ監督なんで、この『ミュンヘン』て映画はですね、
    小西 ええ、ええ。
    町山 スピルバーグ監督は・・・・『プライベート・ライアン』(Saving Private Ryan)て映画がありましたよね?
    小西 ありましたねえ。
    町山 どういった映画か、覚えてますよね?(笑)
    小西 マ・・・マット・デイモン・・でしたっけねえ?
    町山 まあ、あの、トム・ハンクスですけど、
    小西 あ、トム・ハンクスとマット・デイモン、あ、そうそう、そうそう。
    町山 『プライベートライアン』ていうのは、今言われてるのは、映画史上最大の残虐描写に挑んだと言われてるんですよ。
    松本 ・・凄かった・・・
    小西 最初の・・・20分か30分ぐらい、腸が飛び出るやつですよねえ?
    町山 もう、頭が吹っ飛ぶわ、腸が飛び出るわ、腕はもげるわ・・・
    松本 う~ん・・・
    小西 ノルマンディーの、あの、海の、ねえ、海岸線のところで、
    町山 要するに、なんていうか、人間に弾丸て物が当たると、どういう風に人体を破壊するかっていうのを、解剖学的に見せていくような映画でしたよねえ。
    小西 はいはい、はい。
    町山 この『ミュンヘン』て映画はそれを、ず~っとやるんですよ!(笑)
    松本 あ、そうなんですか・・・・
    小西 え~!
    町山 ものスゴイんですよ。
    小西 ず~っと、っていうのは、もう最初から最後までってことですか?
    町山 最初から最後までです。
    小西 は~・・・・
    町山 例えば爆殺する、って言っても普通だったら「バン!」て爆発すると、煙が出て火が出て終わりじゃないですけ。
    小西 ええ。
    町山 そうじゃなくて、ズタズタになった人間が「グググッ」と蠢いているところを見せるんですよ。
    松本 いや・・・それをやるんだ・・・・
    小西 うわあ・・・
    町山 物凄いんですよ、残虐描写が。
    小西 あ、そう・・・・
    町山 で、やっぱりねえ、観てた人、何人か立ちましたね。(笑)
    小西 あ、そう・・・・・
    町山 ちょっとこれは、凄すぎる、っていうんで・・・
    小西 『プライベートライアン』レベルじゃ無いわけですね?じゃあ。
    町山 ・・・まあ、スゴイんですけどね、
    小西 うん。
    町山 女の人が「バン!」と撃たれて、そこから血がドクドクと滝のように流れる、とかですねえ、
    小西 あ~・・・
    町山 そういうのを、バンバン見せていく映画なんですけども、
    小西 これはじゃあ、もう、当然R指定(笑)・・・なんですか?
    町山 ・・・と思いますけどねえ。
    小西 普通ねえ。
    町山 ただ、この映画でどうしてこういう映像を、まあ、そういう残虐描写をやろうとしたか、っていうと、
    小西 はい。
    町山 ま、パレスチナゲリラに11人殺されたってのは大変なことだ、と。
    松本 はい。
    町山 でもそれに対して報復する、ってことでもって、やっぱりやるのは「殺人」じゃないか、と。
    小西 うん。
    町山 報復であっても、「殺人だろ、これは」と。
    小西 実質的には殺人だ、と。
    町山 ・・ということなんですね。
    小西 うん。
    町山 それともう1つは、報復をしていくと、ま、敵にまた更に、報復されるわけですよ。
    小西 はい。
    町山 で、この暗殺団もどんどん、どんどん1人ひとり殺されていくんですよ。
    小西 あ、・・あー、また、報復の報復がくるんだ。
    町山 そうなんですよ。
    小西 はあはあ、はあ。
    町山 でもう、地獄のようなですねえ、
    小西 うん。
    町山 なんていうかねえ、報復が報復を呼んだ、輪廻状態になっていくんですねえ。
    小西 なるほどねえ・・・

    ~Resolution~
    映画をめぐる論争とスピルバーグが込めたメッセージ、その背景

    町山 で、結局、これで何を言いたいか、っていうと、
    小西 うん。
    町山 スピルバーグって人は、ずっとイスラエル側の人だと思われてる人なんですよね。
    小西 ま、そうですねえ。イメージとしてもねえ。
    町山 ね。この人自身が『シンドラーのリスト』(Schindler's List)って映画で、ユダヤ人のホロコーストを扱いましたよね。
    小西 はい。
    町山 あれでアカデミー賞を獲りましたけれども、
    小西 ええ、ええ。
    町山 で、まあ、この人自身はイスラエルに、スゴイ大量にですね、お金の援助もしてるんですよ。
    小西 あ~、そうかそうか。
    町山 スピルバーグ自身はお母さんが非常に熱心なですね、ユダヤ教徒なんですね。
    小西 ふんふん、ふん。
    町山 ま、お父さんは普通の、ただのアメリカ、ユダヤ人ですけど、
    小西 うん、うん。
    町山 お母さんは非常に熱心な人なんですよ。
    小西 うん。
    町山 で、要するにまあ、イスラエル側の人だと思われてて、確かイスラエルから賞も受けているはずです、『シンドラーのリスト』でs.
    小西 うん、なるほど。
    町山 そういう人が、この・・・・パレスチナゲリラに対する報復の映画を撮る、ってことが前に報道された時に、
    小西 うん。
    町山 世間は皆、その、報復したモサドの暗殺部隊達を英雄として描く映画だと思ってたんですよ。
    小西 うん、これはイスラエルなんかでもよくそういうのを作りますからねえ。
    町山 そうなんですよね。
    小西 うん、そういう映画はねえ。
    町山 彼らがかっこいいスパイとして、悪いパレスチナゲリラをやっつけていくんだ、と。
    小西 ええ、ええ。
    町山 そういう映画として作られると思ったら、
    小西 うん。
    町山 殺されるパレスチナ側の要人は、みんな良い人として描かれてて、
    小西 なぁるほど・・・
    町山 殺す側のモサドの人達は、そのこと自体が辛くて辛くてしょうがない、と。
    小西 うん。
    町山 という、物凄く辛い映画になっててですね、
    小西 うん。
    町山 これで今、アメリカと世界中で、大論争が起きてるんですね、この『ミュンヘン』という映画を巡って。
    小西 ほう。大論争というのは、どういう論争なんですか?
    町山 もう、イスラエル政府がですね、「これは反イスラエル映画だ」って言っちゃってるんですよ。
    小西 あ、ほう・・・
    町山 これはですねえ、アメリカに総領事がいるんですけど、イスラエルの。
    小西 はい。
    町山 総領事がこの映画を観てですね、
    松本 はい。
    町山 映画としては素晴らしい映画かもしれないけれども、この映画のメッセージである、報復は報復を呼ぶ、という、
    小西 うん。
    町山 その、報復はいけないんだ、と
    小西 うん。
    町山 という、スピルバーグの平和的メッセージというのは「間違ってる!」と。
    小西 なるほどね。
    町山 と言ってて、あと、アメリカにはユダヤ系の、イスラエル親派のですね、ユダヤ系の作家がいっぱいいるんですけども、
    小西 ええ。
    町山 そのコラムニストの1人がですね、
    小西 ええ。
    町山 「スピルバーグは、もう、イスラエルの敵だ!」っていうふうに言ったんですよ。
    小西 ああ・・・
    町山 「もうスピルバーグは、これで、イスラエルにはもう、行けないだろう」と。
    小西 うん。
    町山 ということを言ってるんで、
    小西 ネオコンとしては、まあ、ねえ、親イスラエルだから、ネオコン系のいわゆる批評家とかは、これ、許せないでしょうねえ。
    町山 いやいや、これがねえ、ネオコン系だけじゃなくてですねえ、
    小西 うん。
    町山 ニューヨーク・タイムズであるとか、ニューリパブリックといったですね、リベラル側のメディアも、
    小西 うん。
    町山 この映画は、報復というものを、イスラエル側の報復っていうのも残虐行為だと、いう風に言ってイスラエルを叩いている、と言ってメチャクチャにこの映画を叩いてるんですよ。
    小西 あ~、あの、リベラル系も叩いた、と。
    町山 そう。多分ユダヤ系の人達が多いんですけどね。
    小西 はいはい。
    町山 もう、スピルバーグはもう・・・反イスラエルのですね、烙印をおされてスゴイ状況になってるんですけれども、
    小西 あ~、そうなんだ。
    町山 ただ、スピルバーグ自身は、「これは、イスラエルとアラブのことを言ってるだけじゃない」と。
    小西 うん。
    町山 「イスラエルとパレスチナのことだけを言ってるわけじゃないよ」っていうふうに言ってるんですよ。
    小西 ふんふん。
    町山 で・・・どういうことかと言いますとですねえ、
    小西 ええ、ええ。
    町山 この映画・・・ま、どんな映画にもエンドマークっていうかラストシーンてのがありますけども、
    小西 ええ、ええ。
    町山 ラストショットっていう、1番最後に画面に映るものってのは何か、って言いますと、
    小西 ええ。
    町山 ニューヨークの、世界貿易センタービルなんですよ。
    小西 あ~・・・(笑)・・なるほど。
    町山 それが「バーン!」と映っておわるんですね、映画が。
    小西 ほう、ほうほう。
    町山 で、これはいったい何を言いたいか、非常に明確ですよね?
    小西 明確ですねえ~(笑)
    町山 つまり、テロに対する報復っていうものは、更にテロを呼んで、地獄のような報復による報復の、もう大戦争状態を巻き起こすだけで、
    小西 報復合戦だ・・・・うん。
    町山 永久に終わらないんだ!と。
    小西 うん。
    町山 ということで、今現在ブッシュ政権がやっている、対テロ戦争そのものをですね、
    小西 うん。
    町山 非常に真正面から批判してる映画なんですよ。
    小西 いや、もう、それは・・・露骨過ぎるぐらいあからさまな、メッセージですよねえ?
    町山 そうなんですよ。だから僕、最後に世界貿易センターが映るところで、物凄い衝撃を受けたんですけども、
    小西 うんうん。
    町山 もう全編血まみれの殺し合いを見せられるんですけども、
    小西 うんうん。
    町山 その後に、結局これは何か、っていうと「バーン!」と見せるわけですよ、世界貿易センターを。
    小西 うんうん。
    町山 「今や、アメリカがやってることだ!」ってことなんですね。
    小西 いや・・・・だから今、この『ミュンヘン』なんですね。
    町山 そうなんですよ。
    小西 うん。
    町山 最初、「なんでミュンヘンなんか今頃映画にするんだよ、オイ」(笑)、みたいな
    小西 ねえ、30年以上も前の、ねえ。
    町山 ねえ。・・・もう・・昔のことじゃん!みたいに思っちゃうじゃないですか。
    小西 はい。
    町山 ところが、観ると、今現在のですね、世界状況に対するメッセージがですね、物凄く勇気がある形でですね、叩きつけられてるんですよねえ。
    小西 これあの・・・町山さんもねえ、コラムでアレされてますけど、あの、アメリカの雑誌の『TIME』が、詳しく、ねえ、
    町山 はいはい。
    小西 スピルバーグもインタビューしてますよねえ。
    町山 はいはい。
    小西 ずーっと長いこといろいろ、中東問題というのは、スピルバーグ自身、親から、もうとにかく扱うと、簡単には解決しないんだという、刷り込まれてきて、
    町山 はい。
    小西 それでプロディーサーの方ですか?あの・・・スゴイなんか、説得したんですねえ。
    町山 はいはい。
    小西 でもやってみろ、と。この本『標的は11人』という本があって、
    町山 はいはい。
    小西 ジョナスの本があるから、という・・・
    町山 はいはい。
    小西 それでようやく・・・今これ、やんなきゃいけない、という風に思い立った、というような、そんな感じなんですね?
    町山 そうですね、もうスピルバーグ自身がそのインタビューの中でも言ってるんですけど、
    小西 うん。
    町山 「もうオレ、お金儲けのために映画なんか作んねーよ」って言ってるんですよ。
    小西 うん、うん。
    町山 そんな必要は無いですから、スピルバーグは。
    小西 ま、そうでしょう。
    町山 で、アカデミー賞も何回も獲ってるし。
    小西 うんうん、うん。
    町山 では何をやるかって言ったら、世の中を良くするために映画を作りたい、っていう気持ちになってきてるんですね。
    小西 うんうん、うん。
    町山 あとやっぱり(笑)でも、そういう映画としては、メッセージとしては非常に素晴らしいんですが、
    小西 うん。
    町山 残虐描写があまりにもスゴイんでねえ(笑)
    小西 ええ。
    町山 ちょっと卒倒しそうなような内容なんですけどね。
    小西 なるほど・・・
    町山 それはねえ、スピルバーグはやらなきゃならなかったんだろうな、と。
    小西 でもアメリカの、テレビなんかでね、あの・・・なんというか空撮だけで、その下に、例えばイラクの人が、市民が犠牲になってても血を出さない、とかね、
    町山 はいはい、はい。
    小西 そういうことをやってる中で、やっぱりその・・・人間が惨殺されるところの恐ろしさってのはやっぱり、この映画というメディアならこそ、出来るような感じですよねえ?
    町山 それがねえ、まさに、そういうことなんですよ。
    小西 うん。
    町山 というのはですね、えっとこの・・・「黒い9月」・・・ブラック・セプテンバーが起こした、このミュンヘン事件ていうのは、テレビで放送されたけども実際に何が起こったかってわからないんですよね。
    小西 はあはあ、はあ。
    町山 画面には映らないんですけど、11人がどういう風に殺されていったのか・・
    小西 うん。
    町山 スピルバーグはこの映画の中で、11人が11通りのやり方で殺されるのを全部見せるんですよ。
    松本 え~・・・そうなんだ・・・・
    小西 ほう・・・
    町山 これはスゴイことで、
    小西 うん。
    町山 人が死ぬっていうのは、テレビとかでパッと通過されたり、遠くから見えるようなことでは無くて、ホントにこういうことなんだ、と。1人1人はこうやって死んでいくんだよ、っていうのを、
    小西 うん。
    町山 きっちりと見せていく、っていう怖~いことをやってるんですよ。
    小西 なるほどねえ。
    町山 これは物凄い強烈な映画で、
    小西 はい。
    町山 まあ、非常に、アメリカでは映画評論家だけじゃなくて、国際政治から国内政治から全部巻き込んで、大論争を起こしてるんですねえ。
    小西 なるほど。・・・え、日本でも、来年のですねえ、早々には公開されると、・・・いう風に聞いておりますが、
    町山 はい。
    小西 ええ、あの・・楽しみに。観たいと思います。
    町山 はいはい。
    小西 はい。ということで、今日は、今年、町山さんがイチオシの・・・ナンバー1と、
    町山 もう、これは最高に強烈な映画でしたよ、はい。
    小西 壮絶な映画、『ミュンヘン』、スピルバーグ監督の『ミュンヘン』を紹介していただきました。どうもありがとうございました。
    町山 いえいえ。
    小西 コラムの花道、町山智浩さんでした。

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